異世界最強のセンセイ~王女の妹と令嬢達の先生になったんだが、教え子たちが可愛すぎて授業どころじゃない~

古澄典雪

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第一章

読まれる必要のない幕間

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「……王子、よく来てくれた」

「緊急事態ですか」

「いや、まだ事態が起こるには至っていない」

「危険な兆候が見えると」

「ああ――この国が抱える『力の記憶』保有者の話なんだがな」

「…………」

「『最怪の魔術師』から――微量だが、確かに魔力の放出が感知された、ということだ」

「……どこからの情報ですか」

「隣の『聖命国』だ」

「……勇者が感知したんですかね」

「完全な嘘でない限りは、そうなるだろうな」

「……本当だと思われますか。あの結界を一部でも破ったと?」

「……そんなはずはない、と言いたいが」

「…………」

「時期は合うんだよな……」

「……何の時期ですか」

「いや、独り言だよ。気にしないでくれ……」

「……わかりました」

「……由理、君の妹達の教育はどうなっている?」

「彼女たちが力を着実につけている、という意味では成功かな」

「どんな意味では失敗だ?」

「俺が教えることが殆どない」

「はは。でも、お前のおかげで力をつけていることは確かだろうがな」

「……え?」

「これも気にすんな。じゃあ、今日も授業頑張ってくれ」

「……分かったよ――」

 父さん、と呟いて、夏城由理は部屋から出て行った。

「……そろそろ終わりにしたいんだがな――」

 国王――夏城慶我は、色濃い憂いを瞳に浮かべ、それを押し隠すように目を閉じた。

『力の記憶』。古の――現在からみると、殆ど神話と変わらぬ時代を生きた或る魔術師が、力を等分し生まれた特異なモノ。

 それを継承する者を、保有者と呼ぶ。

 ―――力に与えられた名が、五つ。

『最果ノ魔術師』。

『最明ノ魔術師』。

『最古ノ魔術師』。

『最巧ノ魔術師』。

 そしてこの国に眠る―――――

『最怪ノ魔術師』。
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