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第一章
第四十五話 勇者様の急用とは一体何なんだろう?
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「お、由理。『祝福されし魔術師』様でも寝坊なんてするんだな」
「……寝坊くらいしますよ。ちょっと寝つきが悪くて」
「ははは。お前がそんなに神経質だとは思わなかった」
広間へと赴くと、昨夜のように仁さんが紅茶を飲んでいた。
……今日は急用を思い出さないらしい。
「仁さん。勇者ってそんなに仕事が多いものなんですか?昨日の夜とか急用が出来たって言ってましたけど」
「……ん、まあな、ある意味では人助けってところかな」
「あんな時間に?大変ですね」
「ある意味ではお前の為でもあるんだぞ」
「……へぇー」
「……お前もしかして、分かっててその反応なの?」
「何のことだか」
「……お前だってあんな時間に姫様と一緒に居たじゃないか」
「それを言われると弱りますね」
「……まあ、お互い詮索はやめておこうぜ」
「ですね」
痛み分けって感じ。
「……で、今日は何をする予定なんだ?」
「そうですね……観光って感じでもないしな」
「お前が市中を歩いてたら大騒ぎになるわ」
「観光するんだったら変装しますから……一部の人にはすぐにばれますけど」
「……お前の魔法が?」
「はい」
「……お前の妹達に、だったり?」
「はい」
「極星国は……つーかお前の周りはどうなってんだ」
「どうもしてないつもりなんですけどね……じゃなくて、そうだな……ここの王宮って、図書室あります?」
「あるよ。広いやつ。利用者は少ないみたいだが」
「んじゃ、今日は一日中図書室に居ようかな……」
外出しないとここの人に気を使わせるんじゃないかと考えたけど、図書室に籠ってれば大体同じだろう。
「お前がいいならいいが……場所の案内は要るか?」
「要りますね。方向音痴なので」
「……あんなにバンバン魔法を撃ちまくってんだから、空間認識能力が低いわけじゃないんだろ?」
「まあ、そうなんじゃないですかね。不思議です」
「不思議だな……。じゃあ、俺が案内しよう。紅茶飲み終わったらな」
それなんだけど。
「紅茶の残りとか、あります?」
「ん?ちょっと冷めてるけどあるぞ」
「もらえませんか。何かしらお腹に入れておきたいんで」
「朝飯が紅茶だけかよ……ってそういや、一日中図書室にいるって言っても、昼飯くらい食うだろ?時間は……」
「ああいや、いいです」
「……は?」
「本を読んでるとあんまり空腹を感じないので、夜ごはんまで食べないでいいです……読む前から空腹だと流石にまずいですけど、一瞬誤魔化せればいいんで……」
「……お前ってやっぱ、研究者肌っていうか――」
その後で何か言いかけたようだったが、「こいつと一緒くたにしたら、世の研究者に失礼だな」と言って、仁さんは無言で紅茶をくれた。
失礼なことを言われた気がしないでもない……と思いながら、紅茶を啜った。
「……寝坊くらいしますよ。ちょっと寝つきが悪くて」
「ははは。お前がそんなに神経質だとは思わなかった」
広間へと赴くと、昨夜のように仁さんが紅茶を飲んでいた。
……今日は急用を思い出さないらしい。
「仁さん。勇者ってそんなに仕事が多いものなんですか?昨日の夜とか急用が出来たって言ってましたけど」
「……ん、まあな、ある意味では人助けってところかな」
「あんな時間に?大変ですね」
「ある意味ではお前の為でもあるんだぞ」
「……へぇー」
「……お前もしかして、分かっててその反応なの?」
「何のことだか」
「……お前だってあんな時間に姫様と一緒に居たじゃないか」
「それを言われると弱りますね」
「……まあ、お互い詮索はやめておこうぜ」
「ですね」
痛み分けって感じ。
「……で、今日は何をする予定なんだ?」
「そうですね……観光って感じでもないしな」
「お前が市中を歩いてたら大騒ぎになるわ」
「観光するんだったら変装しますから……一部の人にはすぐにばれますけど」
「……お前の魔法が?」
「はい」
「……お前の妹達に、だったり?」
「はい」
「極星国は……つーかお前の周りはどうなってんだ」
「どうもしてないつもりなんですけどね……じゃなくて、そうだな……ここの王宮って、図書室あります?」
「あるよ。広いやつ。利用者は少ないみたいだが」
「んじゃ、今日は一日中図書室に居ようかな……」
外出しないとここの人に気を使わせるんじゃないかと考えたけど、図書室に籠ってれば大体同じだろう。
「お前がいいならいいが……場所の案内は要るか?」
「要りますね。方向音痴なので」
「……あんなにバンバン魔法を撃ちまくってんだから、空間認識能力が低いわけじゃないんだろ?」
「まあ、そうなんじゃないですかね。不思議です」
「不思議だな……。じゃあ、俺が案内しよう。紅茶飲み終わったらな」
それなんだけど。
「紅茶の残りとか、あります?」
「ん?ちょっと冷めてるけどあるぞ」
「もらえませんか。何かしらお腹に入れておきたいんで」
「朝飯が紅茶だけかよ……ってそういや、一日中図書室にいるって言っても、昼飯くらい食うだろ?時間は……」
「ああいや、いいです」
「……は?」
「本を読んでるとあんまり空腹を感じないので、夜ごはんまで食べないでいいです……読む前から空腹だと流石にまずいですけど、一瞬誤魔化せればいいんで……」
「……お前ってやっぱ、研究者肌っていうか――」
その後で何か言いかけたようだったが、「こいつと一緒くたにしたら、世の研究者に失礼だな」と言って、仁さんは無言で紅茶をくれた。
失礼なことを言われた気がしないでもない……と思いながら、紅茶を啜った。
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