あの夏、この夏、君のいた夏。

もっちゃん

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出会い(あの夏)2

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「あっ、すみません」とパイプ椅子を直した後、驚いた表情で「さっき助けてくれた人ですよね?」

よく見たら駅前で、コンタクトレンズを落としていたあの女性だった。

「あっはい、驚きました、こちらで働いていたんですね」

「そうなんです、ここで学芸員として、働いているんです、先ほどはご迷惑をかけてすみませんでした」

「いいえ、困ったときはお互い様なんで」

「そうだ、よろしければ館内ご案内しましょうか?」

「それはうれしいですけど、大丈夫ですか受付の仕事は?」

「はい、この時間誰も来ないですからね」と笑って見せた。

たしかに辺りを見回してみると私以外誰もいない。大丈夫なんだろうかこの郷土館、まだ11時半過ぎだけどこんな状況が続いたら危ないと思うが。

「では、お願いします」

「はい、わかりました」

資料のことについて説明する書類だろうか、それを持ってこちらに歩いて来た。

「あっ、そう言えばまだ名前を言ってなかったですね、私の名前は田戸理夏と言います」

「えっ、田戸ということは、もしかして」私は思わず大きな声を出してしまった。

「そうなんです、城主の子孫なんです!よくわかりましたね、歴史好きなんですか?」

「恥ずかしながらマニア並みに」

「ふふっ、私も歴史が好きなんですよ」と笑顔になる田戸さん。

「さて、ではまずこちらの資料から説明しますね、これは江戸時代中期のもので‥」

その後も田戸さんに、郷土館内の資料を詳しく説明してくれた。
とくに、江戸時代の小垣城の街並みのジオラマは、細部まで再現されていて見入ってしまった。
一通り館内を見終わったので、帰ろうと私が「今日は、どうもありがとうございました」と言うと

「いえいえ、私も久しぶりに解説ができて嬉しかったです、最近天守閣しか見に来る人がいなくて」

「素晴らしい郷土館だと私は思いますけどね」

励ましの言葉を田戸さんに言うと

「ありがとうございます」と元気な声が聞こえた。

「それと今度郷土館で企画展をやることになったので来てくださいね」と企画展のパンフレットをもらった。

歴史好きが増えてくれることを願って、郷土館を後にした。


お昼過ぎだし、ご飯をたべようかなと思ったが夕方から、本屋の仕事があるのを思い出して、駅前のコンビニでおにぎりを買って帰ることに。

小垣駅に、戻り快速電車に乗り込んだ。小垣駅から七宮駅までは、大体20分くらいかかる。席に座ると、おにぎりを食べながらさっき渡された企画展が気になりパンフレットを見ようと開けたら、何やら手紙が下に落ちた。

拾い上げて中を見ると田戸さんの連絡先だけが書かれてあった。

私は職場でしか最近女性と関わらないので、女性の気持ちがよくわからないが、これは連絡してくださいということだろうか、と思案しているうちに七宮駅についた。時計を見るとまだ14時になったばかりだ。

私はなんの仕事をしているかと言うと、七宮駅の中に入っている七宮書店の社員だ。大学生の時からバイトをしていて、卒業後は正社員として働いている。担当コーナーは日本史分野全般だ。

まだ、仕事は17時からなので一旦自宅に帰ることにした。自宅はバスに乗って20分くらいかかって、バス停から自転車で10分したところにある。職場からちょっと遠いのは両親と一緒に住んでいるからだ。

自宅に戻ると母親が出て来た。母親の名前は
谷元敏恵。「おかえり、今日夜ご飯どうする?」と聴いて来た。

「帰りに同僚と食べに行くからいいよ」

「そう、わかったわ」

自室に戻ると、着替えて職場に行く準備をする。
同僚の斎藤卓弥さいとうたくや、通称タクに今日の仕事について連絡してみる。タクとは大学生のときからの仲で、タクも正社員で働いている。

「おっ、タクか、今日は今までになんか問題はなかったか」

「今日はないな、最近リニューアルオープンしてから忙しいのは変わりないがな」

「はは、そうか、そろそろそっちに行くから」と電話を切った。

リビングに行くと父親がいた。父親は谷元宏治。

「今日は、夜勤か、いってらっしゃい」

「行って来ます」
ガチャと玄関の扉を開けた。


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