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第2章 期末テスト編
第24話 土産とファミレス
「そういえばお前、そのキーホルダー」
重い足取りでファミレスに向かうその道中。
俺はずっと気になっていた”それ”を指さした。
「付けてたんだな」
「え、あっ……」
スクールバックの持ち手に括られているそれは、間違いなく俺があげたマ〇ク。先ほどからちょいちょい視界に入っていたが、話題に出すタイミングがなかった。
「前から付けてたっけ」
「き、今日初めて付けましたけど」
「ほーん」
ゆらゆら揺れているそれを見やれば、なぜか葉月は頬を赤く染めて俯いた。そして足元で視線を泳がせた後に、明らかに恥じらいながら言う。
「貰ったのに付けないのも悪いかなと思いまして」
「つまりは気に入って付けてるワケではないと」
「そ、そうは言ってません。ちゃんと気に入ってます」
妙にしおらしい葉月を前に、ふと思う。
「そういやお前って、貰った土産とか素直に使うタイプだったっけ?」
「そ、そりゃ使いますよ。お土産なんですから」
「でも中学ん時、鬼塚に貰った土産他の女子にあげてたよな」
「あれは……他の子が欲しがってたからで」
他の子が欲しがってたら、人から貰った土産手放すのかよ。あいつ見たまんまプライド高いから、それが発覚した時相当悔しがってたぞ。
「そういうセンパイはどうなんです」
「どうって、何が」
「もしわたしがお土産あげたら、ちゃんと使ってくれますか?」
そう言うと葉月は、今まであちこち遊ばせていた視線を俺に向けた。上目遣いでこちらを見るその表情からは、未だ若干の火照りが見て取れる。
「まさか使わないとか言わないですよね」
何かを求めているような、妙に色めき立った姿。普段の葉月にはない、たまに見せる女子っぽいこのしぐさが、俺の本能的な部分に容赦なく刺激を与えてくる。
これは狙ってやっているのか、それとも無意識か。
どちらにせよ、やはりこいつはあざとい。普通ならドキッとさせられる場面なのだろうが、相手がクソ生意気な葉月故に、俺はギリギリのところで踏みとどまれた。
(鬼塚が気にかけるのも納得か……)
俺ごときにそんなあざとアピールしなくとも、人から貰ったもんは基本使うさ。でもまあこいつの場合、常識外れの物をよこす可能性も大いにあり得るからな。
「モノによる」
「うわっ最低。絶対来年買ってきてあげませんから」
「普通の土産なら使うっての」
本音で言うとその美少女の仮面は崩れた。
代わって葉月は、怪訝な視線を向けてくる。
「普通って、一体何を渡されると思ったんですか」
続いて不満そうな声音でそんなことを。
こいつが土産で買ってきそうなものね。
「そうだな。例えば謎の民族のお守りとか」
「は」
「あるいは現地の珍味とか派手なだけの衣装とか」
あとは胡散臭い開運グッズとかもありうるな。
「あの、わたしたちの行先普通に関西なんですけど」
まあ、これらはジョークにしても。どうせこいつのことだから、貰っても困るような、よくわからんモノを買って来るに決まってる。
「どうせなら役に立ちそうなものを頼む」
「何ですかその失礼な上に抽象的な注文」
俺のつまらんジョークも相まってか。眉間にしわを寄せた葉月は、「はぁ……」と長いため息を吐いた。
「でもそうですね。一応は考えといてあげます」
「一応、ね」
「もし土下座して頼むようなら、要望に応えてあげなくもないですけど」
「たかが土産一つのために平伏すほど、俺のプライドは腐っちゃいねぇ」
* * *
だべっているうちにファミレスに到着。
窓越しに中を覗いた感じ、平日の日中ということもあって、客はほとんど居ないようだった。これなら周りの目も気にせず、思う存分勉強に集中できそう……
「……えっ?」
「はっ……!?」
店に入るなり、俺の視界には意外な人物が飛び込んできた。目が合うなり驚き固まるそいつは、艶のある長い黒髪によく似合う、清楚で上品な服を身に纏っている。
「え、何。お前ここでバイトしてたの?」
「そういうあんたは……」
やがてパチクリと瞬きをしたそいつ――黒髪ロング色白清楚風ツンデレギャルもどき(俺称)の古賀さんは、俺と葉月を交互に見やり言った。
「もしかしてデート?」
一体絶対どこをどう見たらデートに見えるのか。
流石は青春真っ盛りのJK様だ。その思考の飛躍っぷりが半端じゃない。おそらく男女が一緒に居るだけで、そう思っちゃう病気なんでしょうね。
「ちげぇよ。俺はこいつの勉強見るために強制連行されただけだ」
「だよね。あんたに限ってそれはないと思った」
って……納得すんの早すぎだろ。
それはそれでなんか傷つくじゃんか。
「あのあの、センパイちょっと」
「ん」
横から服の袖を引っ張られた。
何事かと思い耳を貸せば。
「この人ってもしかして、あのピンクの?」
「……っっ!!」
葉月は耳元で爆弾級の単語をポロリ。
その瞬間、俺の額に冷や汗が浮かぶ。
「バッカお前……! 聞こえたらどうすんだ……!」
俺は焦りから必然的に古賀を見た。
が、どうやら聞こえてはいないよう。
「あの写真のことは言わない約束だろ……!」
「えぇ~? そんな約束しましたっけ~?」
イタズラ心全開のニヤケ顔で、ふざけたことを言う葉月。俺の生死がこんなクソ生意気なガキの一言で決まるとか、やっぱりこの世は理不尽にも程がある。
と、ここで不意に古賀と目が合った。
何か物申したげにこちらを見ているが。
「な、なんだよ」
「そういやその子、この間も居た子だよね」
どうやら話題はパンツの件ではないよう。
チラリと葉月を見た古賀は、小さく頷いて続ける。
「うん、やっぱりそうだ」
「まてまて。急に何の話だ」
「何って、修学旅行よ修学旅行」
「修学旅行?」
俺が首を傾げれば、古賀は葉月を指差し言った。
「その子、修学旅行に居たじゃん」
「ふぁっ!?」
いきなり何の話をし始めたのかと思えば……なんでこいつ、葉月が修学旅行について来てたこと知ってんの……!?
「え、何。もしかしてお前、神社でのあれ見てた?」
「ていうか。あの日はずっとあたしらについて来てたじゃん」
そこまで気づいてたんですね。
さては何も知らなかったの俺だけ?
「気づいてたなら教えろよ」
「あんたの知り合いって知らなかったし」
すると古賀は露骨に俺から視線を逸らした。
そして嫌悪感満載のいやーな顔を浮かべて。
「それに盛り上がってる時にあんたと会話したくない」
と、相変わらず辛辣なそんな台詞を。
たった一言の会話すら嫌がられるとか。
どんだけ俺のこと嫌いなんだよこいつ。
「にしても、ちょっと意外かも」
「何が」
「あんたにも仲良い相手がいたなんてね。しかも女子」
「別にこいつはそういうんじゃねぇよ。ただの中学の後輩で――」
と、葉月との関係を説明しようとしたところ。
「葉月結愛でーす! センパイとは超仲良しでーす!」
俺の言葉を遮るように葉月がフェードイン。初めまして用に繕った耳障りの良い声音で、それはもう、あざとさ全開のウザーい自己紹介を披露した。
「ところでお二人は一体どんなご関係なんですか~?」
次いで不気味なほど精巧な笑みを浮かべる。
この質問に一体何の意味があるというのか。
「どうもこうも、ただのクラスメイトだろ」
「ああ~、そうでした~。た、だ、の、クラスメイトでしたね~」
俺が答えれば、葉月はそれを繰り返す。
その煽るような言い方、マジで腹立つ。
「そんなただのクラスメイトさん相手に、誰かさんは欲情してましたけど~」
「っっ……!!」
やがて葉月はその流れで、超大型爆弾を投下。
これには全身の血の気が引いて、顔面蒼白の俺である。
「よくじょう? 何の話?」
しかも今度はバッチリと古賀の耳まで届いている。ウザさ百倍増しの妙なノリと言い、軽はずみな暴露と言い、これ以上こいつを野放しにしておくのはまずい。
「ちょっ! がおいじぇおあえおげほえい!」
これはあくまで正当防衛。
死にたくないという生物として当然の感情に従った俺は、減らず口をたたくその口を両手で塞ぎ、暴れる葉月を強引に胸元に引き寄せ、全身を使ってロックした。
「ねぇ、さっきのよくじょうって――」
「なんでもない。それよりどこ座ったらいい」
「え、あ、それじゃあ」
ふわっと、シャンプーのいい香りがする。
それに葉月の身体……思ってた以上に細くて、何というかこう、柔らかい。相手がこいつだとしても、やはり女子に触れていると思うと、心が落ち着かなかった。
が、今はそんなことどうでもいい。
今こいつの拘束を解けば、間違いなく暴走して俺は死ぬ。
命あってこその恥じらいだ。
下着見ただけで死刑とか、割に合わねぇ。
「……ほんとに仲良いね」
「よくない。それより席は」
「空いてるし、あの辺適当に座って」
古賀に指示された通り、俺は足早に窓際のテーブルへと向かった。その時葉月を無理やり引きずるような形になったのだが……
……何だろう、先ほどから妙に葉月が大人しい。
真上からだと表情も見えないので、その理由はわからなかったが。一つ言えたのは、触れていた葉月の口元が高揚して、妙に熱っぽかったこと。
「もしやお前、照れて……」
「……っっ!!」
うっかり恥ずかしい単語を口ずさんだ瞬間。
葉月の耳が一瞬にして真っ赤っ赤に染まった。
(さてはこれ……相当はずい構図なのでは……?)
なんて一瞬冷静になりかけたが。
今我に返るとまずい気がして、俺は即座にその思考を払った。
俺が今こうしているのはあくまで緊急事態だから。葉月の顔が熱いのも、俺の胸の鼓動が速いのもただの気のせい――ただの気のせい……ということにしておこう。
重い足取りでファミレスに向かうその道中。
俺はずっと気になっていた”それ”を指さした。
「付けてたんだな」
「え、あっ……」
スクールバックの持ち手に括られているそれは、間違いなく俺があげたマ〇ク。先ほどからちょいちょい視界に入っていたが、話題に出すタイミングがなかった。
「前から付けてたっけ」
「き、今日初めて付けましたけど」
「ほーん」
ゆらゆら揺れているそれを見やれば、なぜか葉月は頬を赤く染めて俯いた。そして足元で視線を泳がせた後に、明らかに恥じらいながら言う。
「貰ったのに付けないのも悪いかなと思いまして」
「つまりは気に入って付けてるワケではないと」
「そ、そうは言ってません。ちゃんと気に入ってます」
妙にしおらしい葉月を前に、ふと思う。
「そういやお前って、貰った土産とか素直に使うタイプだったっけ?」
「そ、そりゃ使いますよ。お土産なんですから」
「でも中学ん時、鬼塚に貰った土産他の女子にあげてたよな」
「あれは……他の子が欲しがってたからで」
他の子が欲しがってたら、人から貰った土産手放すのかよ。あいつ見たまんまプライド高いから、それが発覚した時相当悔しがってたぞ。
「そういうセンパイはどうなんです」
「どうって、何が」
「もしわたしがお土産あげたら、ちゃんと使ってくれますか?」
そう言うと葉月は、今まであちこち遊ばせていた視線を俺に向けた。上目遣いでこちらを見るその表情からは、未だ若干の火照りが見て取れる。
「まさか使わないとか言わないですよね」
何かを求めているような、妙に色めき立った姿。普段の葉月にはない、たまに見せる女子っぽいこのしぐさが、俺の本能的な部分に容赦なく刺激を与えてくる。
これは狙ってやっているのか、それとも無意識か。
どちらにせよ、やはりこいつはあざとい。普通ならドキッとさせられる場面なのだろうが、相手がクソ生意気な葉月故に、俺はギリギリのところで踏みとどまれた。
(鬼塚が気にかけるのも納得か……)
俺ごときにそんなあざとアピールしなくとも、人から貰ったもんは基本使うさ。でもまあこいつの場合、常識外れの物をよこす可能性も大いにあり得るからな。
「モノによる」
「うわっ最低。絶対来年買ってきてあげませんから」
「普通の土産なら使うっての」
本音で言うとその美少女の仮面は崩れた。
代わって葉月は、怪訝な視線を向けてくる。
「普通って、一体何を渡されると思ったんですか」
続いて不満そうな声音でそんなことを。
こいつが土産で買ってきそうなものね。
「そうだな。例えば謎の民族のお守りとか」
「は」
「あるいは現地の珍味とか派手なだけの衣装とか」
あとは胡散臭い開運グッズとかもありうるな。
「あの、わたしたちの行先普通に関西なんですけど」
まあ、これらはジョークにしても。どうせこいつのことだから、貰っても困るような、よくわからんモノを買って来るに決まってる。
「どうせなら役に立ちそうなものを頼む」
「何ですかその失礼な上に抽象的な注文」
俺のつまらんジョークも相まってか。眉間にしわを寄せた葉月は、「はぁ……」と長いため息を吐いた。
「でもそうですね。一応は考えといてあげます」
「一応、ね」
「もし土下座して頼むようなら、要望に応えてあげなくもないですけど」
「たかが土産一つのために平伏すほど、俺のプライドは腐っちゃいねぇ」
* * *
だべっているうちにファミレスに到着。
窓越しに中を覗いた感じ、平日の日中ということもあって、客はほとんど居ないようだった。これなら周りの目も気にせず、思う存分勉強に集中できそう……
「……えっ?」
「はっ……!?」
店に入るなり、俺の視界には意外な人物が飛び込んできた。目が合うなり驚き固まるそいつは、艶のある長い黒髪によく似合う、清楚で上品な服を身に纏っている。
「え、何。お前ここでバイトしてたの?」
「そういうあんたは……」
やがてパチクリと瞬きをしたそいつ――黒髪ロング色白清楚風ツンデレギャルもどき(俺称)の古賀さんは、俺と葉月を交互に見やり言った。
「もしかしてデート?」
一体絶対どこをどう見たらデートに見えるのか。
流石は青春真っ盛りのJK様だ。その思考の飛躍っぷりが半端じゃない。おそらく男女が一緒に居るだけで、そう思っちゃう病気なんでしょうね。
「ちげぇよ。俺はこいつの勉強見るために強制連行されただけだ」
「だよね。あんたに限ってそれはないと思った」
って……納得すんの早すぎだろ。
それはそれでなんか傷つくじゃんか。
「あのあの、センパイちょっと」
「ん」
横から服の袖を引っ張られた。
何事かと思い耳を貸せば。
「この人ってもしかして、あのピンクの?」
「……っっ!!」
葉月は耳元で爆弾級の単語をポロリ。
その瞬間、俺の額に冷や汗が浮かぶ。
「バッカお前……! 聞こえたらどうすんだ……!」
俺は焦りから必然的に古賀を見た。
が、どうやら聞こえてはいないよう。
「あの写真のことは言わない約束だろ……!」
「えぇ~? そんな約束しましたっけ~?」
イタズラ心全開のニヤケ顔で、ふざけたことを言う葉月。俺の生死がこんなクソ生意気なガキの一言で決まるとか、やっぱりこの世は理不尽にも程がある。
と、ここで不意に古賀と目が合った。
何か物申したげにこちらを見ているが。
「な、なんだよ」
「そういやその子、この間も居た子だよね」
どうやら話題はパンツの件ではないよう。
チラリと葉月を見た古賀は、小さく頷いて続ける。
「うん、やっぱりそうだ」
「まてまて。急に何の話だ」
「何って、修学旅行よ修学旅行」
「修学旅行?」
俺が首を傾げれば、古賀は葉月を指差し言った。
「その子、修学旅行に居たじゃん」
「ふぁっ!?」
いきなり何の話をし始めたのかと思えば……なんでこいつ、葉月が修学旅行について来てたこと知ってんの……!?
「え、何。もしかしてお前、神社でのあれ見てた?」
「ていうか。あの日はずっとあたしらについて来てたじゃん」
そこまで気づいてたんですね。
さては何も知らなかったの俺だけ?
「気づいてたなら教えろよ」
「あんたの知り合いって知らなかったし」
すると古賀は露骨に俺から視線を逸らした。
そして嫌悪感満載のいやーな顔を浮かべて。
「それに盛り上がってる時にあんたと会話したくない」
と、相変わらず辛辣なそんな台詞を。
たった一言の会話すら嫌がられるとか。
どんだけ俺のこと嫌いなんだよこいつ。
「にしても、ちょっと意外かも」
「何が」
「あんたにも仲良い相手がいたなんてね。しかも女子」
「別にこいつはそういうんじゃねぇよ。ただの中学の後輩で――」
と、葉月との関係を説明しようとしたところ。
「葉月結愛でーす! センパイとは超仲良しでーす!」
俺の言葉を遮るように葉月がフェードイン。初めまして用に繕った耳障りの良い声音で、それはもう、あざとさ全開のウザーい自己紹介を披露した。
「ところでお二人は一体どんなご関係なんですか~?」
次いで不気味なほど精巧な笑みを浮かべる。
この質問に一体何の意味があるというのか。
「どうもこうも、ただのクラスメイトだろ」
「ああ~、そうでした~。た、だ、の、クラスメイトでしたね~」
俺が答えれば、葉月はそれを繰り返す。
その煽るような言い方、マジで腹立つ。
「そんなただのクラスメイトさん相手に、誰かさんは欲情してましたけど~」
「っっ……!!」
やがて葉月はその流れで、超大型爆弾を投下。
これには全身の血の気が引いて、顔面蒼白の俺である。
「よくじょう? 何の話?」
しかも今度はバッチリと古賀の耳まで届いている。ウザさ百倍増しの妙なノリと言い、軽はずみな暴露と言い、これ以上こいつを野放しにしておくのはまずい。
「ちょっ! がおいじぇおあえおげほえい!」
これはあくまで正当防衛。
死にたくないという生物として当然の感情に従った俺は、減らず口をたたくその口を両手で塞ぎ、暴れる葉月を強引に胸元に引き寄せ、全身を使ってロックした。
「ねぇ、さっきのよくじょうって――」
「なんでもない。それよりどこ座ったらいい」
「え、あ、それじゃあ」
ふわっと、シャンプーのいい香りがする。
それに葉月の身体……思ってた以上に細くて、何というかこう、柔らかい。相手がこいつだとしても、やはり女子に触れていると思うと、心が落ち着かなかった。
が、今はそんなことどうでもいい。
今こいつの拘束を解けば、間違いなく暴走して俺は死ぬ。
命あってこその恥じらいだ。
下着見ただけで死刑とか、割に合わねぇ。
「……ほんとに仲良いね」
「よくない。それより席は」
「空いてるし、あの辺適当に座って」
古賀に指示された通り、俺は足早に窓際のテーブルへと向かった。その時葉月を無理やり引きずるような形になったのだが……
……何だろう、先ほどから妙に葉月が大人しい。
真上からだと表情も見えないので、その理由はわからなかったが。一つ言えたのは、触れていた葉月の口元が高揚して、妙に熱っぽかったこと。
「もしやお前、照れて……」
「……っっ!!」
うっかり恥ずかしい単語を口ずさんだ瞬間。
葉月の耳が一瞬にして真っ赤っ赤に染まった。
(さてはこれ……相当はずい構図なのでは……?)
なんて一瞬冷静になりかけたが。
今我に返るとまずい気がして、俺は即座にその思考を払った。
俺が今こうしているのはあくまで緊急事態だから。葉月の顔が熱いのも、俺の胸の鼓動が速いのもただの気のせい――ただの気のせい……ということにしておこう。
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