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メロスは激怒した1
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メロスは激怒した
メロスは激怒した。
それはメロスの人生における指針から外れた、謂わば外道に対する怒りである。
怒りの矛先はある王である。
それはメロスが買い物のために訪れた国の王だ。
それについて語る前に、メロスについても述べておかなくてはなるまい。
メロスは田舎町に住む、ごく普通の若者である。
王に怒りを向けているものの、政治なんかには興味を示したことはない。
そんなことをしなくても、羊の世話をして暮らせば、それ以上のものを望まなかった。
もちろんメロスにだって正義はある。
困っている人がいれば手を差し伸べ、反対に悪事を働こうとするものがいれば、それについての自分の意見を述べた。
そんなメロスだが、16歳の妹がいた。
父も母もいないため、2人暮らしであった。
しかしそれもおそらくあと数日である。
というのも、近々この妹が村の青年と結婚式を挙げることになっていたからである。
メロスは嬉しい反面、寂しさもあった。
だが、兄として、妹の結婚式を盛大に祝ってやろうと、こう考え、遠路遥々、城のある大きな街まで訪れたのだ。
到着してすぐに、花嫁衣装やら、ご馳走やらを買い集め、妹の挙式の準備を整えた。
それからメロスは行きたいところがもう一つあった。
それはこの町に住む古い友人の元であった。
名をセリヌンティウスという。
彼は石工をしており、田舎町に住むメロスとは長いこと会っていなかった。
そのためメロスはこの時を非常に楽しみにしていた。
軽快に歩みを進め、セリヌンティウスのいる町の中心街に来た頃、メロスは町に違和感を覚えた。
なんだかいつもより静かなような気がするのだ。
もう日が落ちてきているため、静かになってくるのは自然といえば当然なのだが、静けさと言うよりは、人々がそそくさと、目立たないように、隠れるようにと、口を閉ざしているようにも見える。
メロスからすると活気のない、この状態が何か寂しいのである。
思い返してみると、2年前に訪れた時には、朝でも夜でも、人々が酒を飲み、歌を歌っている場面に出会した。
しかし今回に関しては全く目につかなかった。
メロスは不安にすらなった。
メロスは自身に芽生えた不安を振り払うために、道ゆく若者を捕まえて問いただそうとした。
しかし若者は首を横に振るばかりで逃げてしまった。
若者は足早に逃げるものだが、今度は老人を捕まえて、さらに語調を強くして、質問した。
すると老人は答える。
「王が人を殺すのです。」
「なぜ殺すのだ?」
「王が言うに、人々の心に悪や疑いの心があるからと。誰もそんなものを持ちやしないのに。」
「何人くらい殺されたのだ?」
「かなりの人数が。王のご家族や側近の方達までも殺しました。」
「王は狂ってしまっているのか?」
「いえ、そうではなく、王は人を信じることができないんです。王は今、近しい人や富を持っている人には人質を差し出させて、逆らえば殺してしまいます。今日は6人が処刑されたらしいです。」
それを聞いてメロスは激怒したのである。
メロスは激怒した。
それはメロスの人生における指針から外れた、謂わば外道に対する怒りである。
怒りの矛先はある王である。
それはメロスが買い物のために訪れた国の王だ。
それについて語る前に、メロスについても述べておかなくてはなるまい。
メロスは田舎町に住む、ごく普通の若者である。
王に怒りを向けているものの、政治なんかには興味を示したことはない。
そんなことをしなくても、羊の世話をして暮らせば、それ以上のものを望まなかった。
もちろんメロスにだって正義はある。
困っている人がいれば手を差し伸べ、反対に悪事を働こうとするものがいれば、それについての自分の意見を述べた。
そんなメロスだが、16歳の妹がいた。
父も母もいないため、2人暮らしであった。
しかしそれもおそらくあと数日である。
というのも、近々この妹が村の青年と結婚式を挙げることになっていたからである。
メロスは嬉しい反面、寂しさもあった。
だが、兄として、妹の結婚式を盛大に祝ってやろうと、こう考え、遠路遥々、城のある大きな街まで訪れたのだ。
到着してすぐに、花嫁衣装やら、ご馳走やらを買い集め、妹の挙式の準備を整えた。
それからメロスは行きたいところがもう一つあった。
それはこの町に住む古い友人の元であった。
名をセリヌンティウスという。
彼は石工をしており、田舎町に住むメロスとは長いこと会っていなかった。
そのためメロスはこの時を非常に楽しみにしていた。
軽快に歩みを進め、セリヌンティウスのいる町の中心街に来た頃、メロスは町に違和感を覚えた。
なんだかいつもより静かなような気がするのだ。
もう日が落ちてきているため、静かになってくるのは自然といえば当然なのだが、静けさと言うよりは、人々がそそくさと、目立たないように、隠れるようにと、口を閉ざしているようにも見える。
メロスからすると活気のない、この状態が何か寂しいのである。
思い返してみると、2年前に訪れた時には、朝でも夜でも、人々が酒を飲み、歌を歌っている場面に出会した。
しかし今回に関しては全く目につかなかった。
メロスは不安にすらなった。
メロスは自身に芽生えた不安を振り払うために、道ゆく若者を捕まえて問いただそうとした。
しかし若者は首を横に振るばかりで逃げてしまった。
若者は足早に逃げるものだが、今度は老人を捕まえて、さらに語調を強くして、質問した。
すると老人は答える。
「王が人を殺すのです。」
「なぜ殺すのだ?」
「王が言うに、人々の心に悪や疑いの心があるからと。誰もそんなものを持ちやしないのに。」
「何人くらい殺されたのだ?」
「かなりの人数が。王のご家族や側近の方達までも殺しました。」
「王は狂ってしまっているのか?」
「いえ、そうではなく、王は人を信じることができないんです。王は今、近しい人や富を持っている人には人質を差し出させて、逆らえば殺してしまいます。今日は6人が処刑されたらしいです。」
それを聞いてメロスは激怒したのである。
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