草稿集

藤堂Máquina

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怪人ユビキタス

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 信号待ちをしていると、怪人ユビキタスが横に立っていた。

 彼はえもいわれぬ方向を見つめ、じっと動かない。

 私も余計な刺激を与えないように静止している。

 信号が青になると私は彼とは違う方向へ歩いて速やかに離れた。
 

 ホームで上りの電車を待っていると背後に怪人ユビキタスの気配を感じた。

 これだけ広いホームで私の後ろに立つのだから何かあるのかもしれない。

 携帯電話を触るふりをして密かに様子を伺う。

 何事もなく電車が到着する。

 乗り込むと私は彼女から距離をとるために隣の車両に移動する。

 流石に彼女はついては来なかった。


 エレベーターに乗っていると目的の階に着く前に怪人ユビキタスが乗り合わせてきた。

 彼らは大きな声で話しながら次の階でおりていった。

怪人ユビキタスはその名の通りどこにでも現れた。

 それは時に男の姿をしていて、時に女の姿をしていて、時に複数人で現れることもあった。

 怪人ユビキタスは基本的に何もしてこなかった。

 ただ一度あの恐ろしい体験をした後から現れるようになったのだから油断することはできなかった。
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