草稿集

藤堂Máquina

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液体

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力強く取っ手を引く。

ガランと鳴った後に静寂が広がる。

暖かい光の先から冷気が漂う。

本当だ。

それに手を伸ばすと奴は踊る。

一気に引っ張り上げたところで扉を閉める。

バタン。

蓋を開けてそれを口へ運ぶ。

脳が溶けるようだ。

舌が諦めるようだ。

幸が奏するようだ。

しばらく呼吸を止めた後は簡単だ。

大きく息を吐いてはまた吸うだけだ。

濾した酸素が血中に広がる。

「いいよ」

手を繋いだ後の記憶は必要なかった。
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