草稿集

藤堂Máquina

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被害

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 水の流れる音がした。

 上水道か下水道かはわからない。

 ただ普段とは違う異常なものがすぐそこまで近づいていることは考える前に感じ取ることができた。

 今家にいるのは私だけだ。

 家族は出掛けている。

 そういえばこの辺りの地域には避難警報が出ていた。

 このことは私に確信をもたらした。

 家中の戸締りを確認すると財布と携帯を持って外へ出た。

 目的地は近所の学校だ。

 そう思った瞬間近くで何かの崩れるような音がした。

骨が軋む。

血が混ざる。

肉が縮む。

簡単には許してもらえる世界ではないようだ。

そうか。

今がその時なのだ。
そうして、そうして、目を瞑り、ひび割れたアスファルトの冷たい感触を裸足で浴び、足元から静かになって行くのを待った。
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