草稿集

藤堂Máquina

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話題

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 「話さなければ理解してもらえない」なんて当たり前のことを考え続けていた。

 私があなたに知ってほしいことは山ほどあるのだ。

 その上あなたのことはなんでも知りたかった。

 それなのにあなたが私のことを知りたいようには全くもって思えなかった。

 だから私の話したいことの中であなたの注意を最もよくひけるものを用意する必要があった。

 しかし面白い話題を初めから出してはこちらの意図が見え見えなような気がしてよそよそしくされても困る。

 多分話したい内容と話すべき内容が違っているのだろう。 

 本来ならば当たり障りのないことを話しかけてから、うまく共通の話題を探すべきなのだろう。

 だが当たり障りのないことなんて他の誰もが使っているに違いない。

 あなたの知る当たり障りのない話題をする大勢の中の一人になんてなってしまったらそれこそそこから這い上がるのは至難の技だろう。 

別に初めて会った訳でもなく、嫌な関係にあるわけではない。

 だから少しくらい強気になってもいいのではないか。

 そんな考えを巡らせているうちにあなたは席を立ちどこかへ行ってしまったのだった。
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