草稿集

藤堂Máquina

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ビブリオテカ

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 哲学者はそれを『静止した過去の集合体』と呼んだ。

 文学者はそれを『形ある未来の想像』と例えた。

 哲学とは真理の探究であり、文学とは常に嘘だ。

 脚色だらけの内容というだけでなく、そもそも思考を他人と共有できる文字に表すことのそれ自体が本来は不可能であり、するべきではないのだ。

 その一方で文字は人の心を動かすことができる。

 故に芸術なのだ。

 絵画や音楽と並ぶ芸術なのだ。

 時に文学という芸術が蔑ろにされるのは誰しも普段から文字を使うだけに誰にでも作れると思われてしまうからであろう。

 恐らく文学というものは、複数存在する完成形の内のどこにも到達した人がいないのであろう。

 だから誰も自分のレベルと差のないものだと考えてしまうのだ。
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