草稿集

藤堂Máquina

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メッセージ

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多分二週間ぶりくらいだったと思う。

 恋人からメッセージが届いていることに気づいた。

 彼女は現在留学していて遠い地にいる。

 そういえばそろそろ帰って来る頃ではないかと思った矢先の出来事である。

 内容といえば概ね私の予想通りで、愛想のない簡潔な文で綴られていた。

 思わずすぐに返事を返そうと思ったが、思い通りの言葉が選べない。

 というより、この場においての最良の距離感というものがわからないのだ。

 本当は喜んでいる胸を伝えたいのだが、相手の言葉遣いがあっさりとしている分、テンションに差ができてしまうことが嫌に感じ、完成させるまでに幾つかの時間を要した。

 完成した私のメッセージも愛想のない、事務的なものであり、空港への到着時間などを確認する内容と少しの感想を述べただけの至極形式的なものであった。

 実のところこういったメッセージを送るということはあまり好きではない。

 というのも私の堅苦しい文字列によってやりとりがぎこちなくなっているのではないかと思ってしまうのだ。

 実際はどうなのかはわからない。

 ただ相手がどうであれ、自分の言葉によって自分がやりにくく感じていることだけは確かで、それでも変えられない私自身を酷く呪ったのであった。
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