草稿集

藤堂Máquina

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陽炎

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溢れんばかりの熱気だけを真実と呼んだ。

陽炎が全てを嘘にしたのだ。

脳裏に焼き付くものは、単純なフィルムのようになってしまった。

暗室で思い出すのだろう。

この世の理を。

午前2時の黒煙は細く、黒点が溶けたようだった。

炭が弾ける。

鉛色のコンクリートの意思で地に伏せることもできぬ。

ただ黙々と誰もいない道を歩き続けるのだ。

行く先に誰もいない道を。
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