草稿集

藤堂Máquina

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夏の夜

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天井だ。

木目のシミだ。

線香の香りと虫の鳴き声が広がる。

布団の中の温もりだ。

蝋燭に息をかける。

静寂。

それからまた喧しい虫。

やわらかい毛布に撫でられる。

月光か。

視界が広がる。

床下を這う音。

羽虫の落ちる音。

命が失われる。

きっと私も死んでしまったのだろう。
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