草稿集

藤堂Máquina

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雨中

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雨はそう強くない。

君にかける言葉というのは、何度投げかけたところで君の元までは届かないのだ。

それだのに、この雨ときたら私の眼球を正確に突く。

そして重力に引かれ簡単に地面に溶けていく。

引きちぎられた水滴は、確かに私の一部であった筈なのだ。

大地は一瞬の潤いを得ると、すぐにのどの渇きを訴える。

雨は私に触れるとまた土と出会う。

私はいらない存在だ。

私を私足らしめる存在はなく、私は雨を雨として見てやることもできぬ。
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