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第3部 他殺か心中か
明日を生きるために
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目の前で黒田が強アルカリ液に溶けていく……その惨たらしさに目を背けたくなったが、萌未の代わりに見届けなければ、という思いが何とか涼平に前を向かせていた。
1月5日の初出勤の日、涼平は勘九郎……こと九馬を誘き寄せるためにドルチェに出勤した。まずは九馬と仲の良い由奈に連絡を取らせ、年始の景気づけに店にエイジと遊びに来いとか何とか言って営業をかけさせる。その際、さり気なく涼平が出勤していることも伝える。クリスマスの事件を何とか心中に見せかけたい出来島陣営は真相を知っている可能性のある涼平に必ず接触してくるだろうと踏んでいた。そして涼平が新地から去ろうとした宵の口、まんまと九馬は涼平の前に現れ、涼平を拉致するべく車に詰め込んだのだった。
話は年始に遡る。萌未が療養している三田の施設に身を寄せていた涼平は、今後の対策を練ろうと集まった隆二、夏美、真奈美、芳山、六紗子、そして週刊民秋の編集者のゆかりという六人の前で、犯人は黒田だと萌未の文章から読み解いたことを披露した。涼平としては黒田を司直の前に引き出すつもりだったが、涼平以外の面々はそれに異を唱えた。芳山は言う、警察は黒田のことを捜査しないだろうと。黒田を洗い直すと志保の死を自殺と断定した警察の非を問われ兼ねないからで、その事態を警察は避けるだろう、と。芳山はその情報を大阪府警捜査一課の涼宮から得ていた。涼宮は妹の死の真相をずっと探っていたのだが、その過程で芳山と通ずるようになっていたのだった。
そんな背景があり、黒田を突き出しても萌未の為にならないという説得も加わり、涼平は彼らの立てた作戦に乗ることにした。黒田だけでなく、一虎を死に追いやった人間全員を秘密裏に処分するという計画だった。その計画の裏には、神代組若頭である皇昴の存在があった。皇は神代組六代目の座に一番近いと目される人物だったが、そこに反旗を翻した出来島を今後自分の威光を光らせる為にも見せしめに葬る必要があった。
涼平は計画内容を聞き、一般人である自分が裏社会に手を貸すことに抵抗を覚えた。だが芳山が言ったように美伽の死が心中だったと報道されているのを目にすると、萌未や美伽の為に自分も人肌脱ぐ決意をした。
かくして、作戦は実行に移された。ドルチェ初出勤の日、涼平には虎舞羅のメンバーが張り付いていた。一虎が銃撃に遭った日、彼を撃ったのは虎舞羅を装った人間たちだった。それは黒田が手配した大力お抱えの暗殺部隊の隊員たちだったのだが、虎舞羅の威信をかけて彼らを騙った人間を一人残らず捉えようと彼らは息巻いていた。涼平のもたらした黒田が黒幕という情報から九馬が関わっていることが分かり、彼を捉えて拷問にかけることによって残りの仲間も割り出していった。涼平が捕らえられた日、逆に涼平に張り付いていた虎舞羅のメンバーが涼平を拉致った車を襲ってそこに乗っていた人間を捉えたのだった。
一方涼平は、処刑の場を演出する役目を与えられた。涼平のクリエイト能力を買っていた隆二が皇に推薦したのだったが、一度は黒服の手本に考えていた黒田に憤りを感じていた涼平は、彼を処刑の場まで導くという役を引き受けた。場所は皇の率いる組が押さえていた南港の廃工場、涼平はドルチェに休暇を申し入れた日からそこに籠り、黒田が処刑場まで歩く道々を形作っていったのだった。涼平の指示の元、虎舞羅や皇配下の者たちが動いて迷路を仕上げていった。
黒田をおびき寄せる役目を担ったのは黒田担当の若名のホステス、つばさだったが、つばさが黒田から受けていた洗脳を解き、逆に涼平たちの側に付けてくれたのは玲緒だった。玲緒は仮釈放されて刑務所から出所していたのだが、夏美から一虎や拓也が亡くなった経緯を聞き、彼らの幼馴染として一肌脱いでくれた。萌未への恨みは、薬が抜けるのと同時に消えていったらしかった。
出来島を誘き出したのはドルチェのホステス、みくだった。みくは一虎の異母妹の三狗で、涼平には由奈を生死の境に追いやったことの詫びの一環だと言っていたが、隆二が言うには、一虎に貸していた一億が回収出来なくなった恨みだということだった。
そうして2月3日、一虎、拓也、彩香、綺羅ママこと高嶋弓枝、そしてまひるの弔いの会場が出来上がった。捉えた黒田の目が覚めると同時に報復の膜が上がり、出来島に、九馬を含む大力暗殺部隊に、そしてトリとして黒田に、制裁が加えられていった───。
涼平は萌未の代わりに黒田の前に立ちながらも、最後のボタンを押すのに躊躇していた。おそらく、その一押しで黒田に引導を渡すことになる。それは自分が殺人者になることを意味するもので、いざ凄惨な現場を前にし、さすがにそこに抵抗を覚えた。
だが夏美の泣き崩れる姿を見ながら、罪とは一体何だろうと考える。もし人を殺めたことが罪ならば、ここに集う人間は全て、罪を犯したことになる。だけど──
今ここに立つ者は皆、裁定者でもあった。親族や仲間の死を偲び、志半ばで散っていった彼らの無念を晴らそうとしている。本来、それは法の役目だ。だが法がそれを拒むなら、誰がその役目を引き受けるというのか?
この工場は黒田が目覚めた瞬間から異空間と化し、日本国から独立した。そして独自の法に則って悪事を働いた者に裁きを下した。もちろんそんなことがまかり通るのなら日本は崩壊するだろう。だけど、涼平は萌未が歩いてきた道を辿る中で知った。法律は決して万全ではなく、必ずしも人に幸福を与えるものでないことを。法が守ってくれないのならば、自分たちで法を作って執行するしかないのだ、と───
黒田が早く終わらせろという目で涼平に訴えかける。その目を見て、涼平は最後のボタンを押した。
黒田が液の中に沈んだ後もしばらく誰も言葉を発しなかった。それぞれの立場に、それぞれの想いが去来していたのだろう、誰もその場から動こうとせず、ホールにはただ空調の音が鳴っていた。
やがて、涼平の肩をポンと叩かれた。振り向くと隆二が立っていた。
「お疲れ」
隆二はまるで試合が終わってマウンドに集まった野球選手のように、淡白な声かけをした。その顔には何かをやり遂げた後の静謐さが漂っているように見えた。
「俺はなっちゃんを送っていくわ」
涼平が言葉を継げないでいると、隆二はそう言って夏美の元に寄った。夏美は崩折れて床に手を付きながら、いつまでも黒田の消えたカプセルを呆然と見つめていた。
隆二が夏美の肩を抱えながら出口へ向かうと、真奈美と凛がその後を追った。二人はチラッと涼平を見、丁寧にお辞儀をすると、お互い寄り添うようにして退場していった。
それを見届けたように、他の立ち尽くしていた面々も次々と動き出した。
「これで虎舞羅のメンツが立った。ありがとう!」
六紗子がそう言って涼平の肩を叩く。その横にいた鷹八が涼平に笑顔を向ける。
「涼平、うちで働かんか?ミナミのホーク・アイグループは知ってるやろ?今、人材を求めてるんや」
「え……確か、ミナミのホストクラブのチェーンですよね。でも俺、ホストはちょっと…」
「いや、事務員やけどな、君、頭良さそうやから裏方にもしっかりした人間が欲しいんや」
鷹八はそこでニッと笑い、六紗子が鷹八の肩をバシッと叩く。
「いや事務員かい!」
涼平は二人に曖昧な笑顔を返す。
「はあ、か、考えときます」
「うん、いつでも連絡くれ。待ってるからな」
鷹八は涼平にスーツから取り出したラメ入りの名刺を渡すと、長いメッシュの銀髪を棚引かせ、六紗子と共に颯爽と去っていった。
「青年、いいものを見せてもらった!」
次に涼平に声をかけたのは、白スーツに白仮面を付けた全身真っ白の男だった。隣りには翁の面を付けた老人が寄り添っている。白スーツの男は仮面を外すと、瞳の奥に高潔とも邪悪ともとれる強い光が宿した目を向けた。この敵討ちの場を提供した皇昴だった。皇は涼平に一言礼を言うと、白スーツの上着を翻して出口へと向かう。
「後の処理はこちらに任せたらええからな。あんたらは早くここから立ち去ることや」
翁の男性、芳山も面を外し、優しく涼平の肩を叩き、皇氏の後を追った。こちら、とはどちらなのか…それが皇直属の部下なのか、はたまた虎舞羅の面々なのか、あるいは又市率いる野崎組の組員たちなのか、涼平には判断し兼ねたが、死体が上がらないように処理する手筈が整っているのだろう、そこはその指示に従うことにした。
最後に残されたのは、涼宮刑事とバンカラスタイルのセーラー服の女性だった。
「お疲れさん。改めて礼を言わせてくれ。これで俺も13年の想いに区切りをつけることが出来る。本当にありがとう!」
涼宮が涼平に手を差し出し、涼平はそれをしっかりと握り締める。
「後のことは心配しなくていいからな」
「あの…ここに集まった人たちが罪に問われることは無いんですか?」
「ああ。捜査本部はそもそもこちらには意識が無い。大丈夫や」
「そうですか…ありがとうございます。涼宮刑事がいなかったらこの計画は完璧なものにならなかったと思います。こちらからも、ありがとうございました」
涼平はそう言って涼宮刑事に頭を下げた。涼宮はお互い様や、と言って涼平の肩に優しく手を乗せた。
「わあからも礼を言うで。ありがとう!」
セーラー服の女性、みどりも涼平に頭を下げる。涼平はそんなみどりに慌てて手を振る。
「もう、みんなして止めて下さい。今日のことはみんなで成し遂げたんです。そこにはもちろん、ゆかりさんや真奈美さんも入ってます。それと萌未と。みんなで成し遂げたんですよ」
それを聞き、みどりは持っていた竹刀でバシッと床を鳴らした。
「おお、そやな!そんで、わあらはこれから亡くなった人の分も、しっかり生きなあかん!今日のことはそのための出初め式や!」
涼平はその言葉に頷いた。涼宮も、ゆっくり、そしてしっかりと頷いた。と、急に涼宮が眉を上げる。
「あ!一人、完全に忘れてた!」
1月5日の初出勤の日、涼平は勘九郎……こと九馬を誘き寄せるためにドルチェに出勤した。まずは九馬と仲の良い由奈に連絡を取らせ、年始の景気づけに店にエイジと遊びに来いとか何とか言って営業をかけさせる。その際、さり気なく涼平が出勤していることも伝える。クリスマスの事件を何とか心中に見せかけたい出来島陣営は真相を知っている可能性のある涼平に必ず接触してくるだろうと踏んでいた。そして涼平が新地から去ろうとした宵の口、まんまと九馬は涼平の前に現れ、涼平を拉致するべく車に詰め込んだのだった。
話は年始に遡る。萌未が療養している三田の施設に身を寄せていた涼平は、今後の対策を練ろうと集まった隆二、夏美、真奈美、芳山、六紗子、そして週刊民秋の編集者のゆかりという六人の前で、犯人は黒田だと萌未の文章から読み解いたことを披露した。涼平としては黒田を司直の前に引き出すつもりだったが、涼平以外の面々はそれに異を唱えた。芳山は言う、警察は黒田のことを捜査しないだろうと。黒田を洗い直すと志保の死を自殺と断定した警察の非を問われ兼ねないからで、その事態を警察は避けるだろう、と。芳山はその情報を大阪府警捜査一課の涼宮から得ていた。涼宮は妹の死の真相をずっと探っていたのだが、その過程で芳山と通ずるようになっていたのだった。
そんな背景があり、黒田を突き出しても萌未の為にならないという説得も加わり、涼平は彼らの立てた作戦に乗ることにした。黒田だけでなく、一虎を死に追いやった人間全員を秘密裏に処分するという計画だった。その計画の裏には、神代組若頭である皇昴の存在があった。皇は神代組六代目の座に一番近いと目される人物だったが、そこに反旗を翻した出来島を今後自分の威光を光らせる為にも見せしめに葬る必要があった。
涼平は計画内容を聞き、一般人である自分が裏社会に手を貸すことに抵抗を覚えた。だが芳山が言ったように美伽の死が心中だったと報道されているのを目にすると、萌未や美伽の為に自分も人肌脱ぐ決意をした。
かくして、作戦は実行に移された。ドルチェ初出勤の日、涼平には虎舞羅のメンバーが張り付いていた。一虎が銃撃に遭った日、彼を撃ったのは虎舞羅を装った人間たちだった。それは黒田が手配した大力お抱えの暗殺部隊の隊員たちだったのだが、虎舞羅の威信をかけて彼らを騙った人間を一人残らず捉えようと彼らは息巻いていた。涼平のもたらした黒田が黒幕という情報から九馬が関わっていることが分かり、彼を捉えて拷問にかけることによって残りの仲間も割り出していった。涼平が捕らえられた日、逆に涼平に張り付いていた虎舞羅のメンバーが涼平を拉致った車を襲ってそこに乗っていた人間を捉えたのだった。
一方涼平は、処刑の場を演出する役目を与えられた。涼平のクリエイト能力を買っていた隆二が皇に推薦したのだったが、一度は黒服の手本に考えていた黒田に憤りを感じていた涼平は、彼を処刑の場まで導くという役を引き受けた。場所は皇の率いる組が押さえていた南港の廃工場、涼平はドルチェに休暇を申し入れた日からそこに籠り、黒田が処刑場まで歩く道々を形作っていったのだった。涼平の指示の元、虎舞羅や皇配下の者たちが動いて迷路を仕上げていった。
黒田をおびき寄せる役目を担ったのは黒田担当の若名のホステス、つばさだったが、つばさが黒田から受けていた洗脳を解き、逆に涼平たちの側に付けてくれたのは玲緒だった。玲緒は仮釈放されて刑務所から出所していたのだが、夏美から一虎や拓也が亡くなった経緯を聞き、彼らの幼馴染として一肌脱いでくれた。萌未への恨みは、薬が抜けるのと同時に消えていったらしかった。
出来島を誘き出したのはドルチェのホステス、みくだった。みくは一虎の異母妹の三狗で、涼平には由奈を生死の境に追いやったことの詫びの一環だと言っていたが、隆二が言うには、一虎に貸していた一億が回収出来なくなった恨みだということだった。
そうして2月3日、一虎、拓也、彩香、綺羅ママこと高嶋弓枝、そしてまひるの弔いの会場が出来上がった。捉えた黒田の目が覚めると同時に報復の膜が上がり、出来島に、九馬を含む大力暗殺部隊に、そしてトリとして黒田に、制裁が加えられていった───。
涼平は萌未の代わりに黒田の前に立ちながらも、最後のボタンを押すのに躊躇していた。おそらく、その一押しで黒田に引導を渡すことになる。それは自分が殺人者になることを意味するもので、いざ凄惨な現場を前にし、さすがにそこに抵抗を覚えた。
だが夏美の泣き崩れる姿を見ながら、罪とは一体何だろうと考える。もし人を殺めたことが罪ならば、ここに集う人間は全て、罪を犯したことになる。だけど──
今ここに立つ者は皆、裁定者でもあった。親族や仲間の死を偲び、志半ばで散っていった彼らの無念を晴らそうとしている。本来、それは法の役目だ。だが法がそれを拒むなら、誰がその役目を引き受けるというのか?
この工場は黒田が目覚めた瞬間から異空間と化し、日本国から独立した。そして独自の法に則って悪事を働いた者に裁きを下した。もちろんそんなことがまかり通るのなら日本は崩壊するだろう。だけど、涼平は萌未が歩いてきた道を辿る中で知った。法律は決して万全ではなく、必ずしも人に幸福を与えるものでないことを。法が守ってくれないのならば、自分たちで法を作って執行するしかないのだ、と───
黒田が早く終わらせろという目で涼平に訴えかける。その目を見て、涼平は最後のボタンを押した。
黒田が液の中に沈んだ後もしばらく誰も言葉を発しなかった。それぞれの立場に、それぞれの想いが去来していたのだろう、誰もその場から動こうとせず、ホールにはただ空調の音が鳴っていた。
やがて、涼平の肩をポンと叩かれた。振り向くと隆二が立っていた。
「お疲れ」
隆二はまるで試合が終わってマウンドに集まった野球選手のように、淡白な声かけをした。その顔には何かをやり遂げた後の静謐さが漂っているように見えた。
「俺はなっちゃんを送っていくわ」
涼平が言葉を継げないでいると、隆二はそう言って夏美の元に寄った。夏美は崩折れて床に手を付きながら、いつまでも黒田の消えたカプセルを呆然と見つめていた。
隆二が夏美の肩を抱えながら出口へ向かうと、真奈美と凛がその後を追った。二人はチラッと涼平を見、丁寧にお辞儀をすると、お互い寄り添うようにして退場していった。
それを見届けたように、他の立ち尽くしていた面々も次々と動き出した。
「これで虎舞羅のメンツが立った。ありがとう!」
六紗子がそう言って涼平の肩を叩く。その横にいた鷹八が涼平に笑顔を向ける。
「涼平、うちで働かんか?ミナミのホーク・アイグループは知ってるやろ?今、人材を求めてるんや」
「え……確か、ミナミのホストクラブのチェーンですよね。でも俺、ホストはちょっと…」
「いや、事務員やけどな、君、頭良さそうやから裏方にもしっかりした人間が欲しいんや」
鷹八はそこでニッと笑い、六紗子が鷹八の肩をバシッと叩く。
「いや事務員かい!」
涼平は二人に曖昧な笑顔を返す。
「はあ、か、考えときます」
「うん、いつでも連絡くれ。待ってるからな」
鷹八は涼平にスーツから取り出したラメ入りの名刺を渡すと、長いメッシュの銀髪を棚引かせ、六紗子と共に颯爽と去っていった。
「青年、いいものを見せてもらった!」
次に涼平に声をかけたのは、白スーツに白仮面を付けた全身真っ白の男だった。隣りには翁の面を付けた老人が寄り添っている。白スーツの男は仮面を外すと、瞳の奥に高潔とも邪悪ともとれる強い光が宿した目を向けた。この敵討ちの場を提供した皇昴だった。皇は涼平に一言礼を言うと、白スーツの上着を翻して出口へと向かう。
「後の処理はこちらに任せたらええからな。あんたらは早くここから立ち去ることや」
翁の男性、芳山も面を外し、優しく涼平の肩を叩き、皇氏の後を追った。こちら、とはどちらなのか…それが皇直属の部下なのか、はたまた虎舞羅の面々なのか、あるいは又市率いる野崎組の組員たちなのか、涼平には判断し兼ねたが、死体が上がらないように処理する手筈が整っているのだろう、そこはその指示に従うことにした。
最後に残されたのは、涼宮刑事とバンカラスタイルのセーラー服の女性だった。
「お疲れさん。改めて礼を言わせてくれ。これで俺も13年の想いに区切りをつけることが出来る。本当にありがとう!」
涼宮が涼平に手を差し出し、涼平はそれをしっかりと握り締める。
「後のことは心配しなくていいからな」
「あの…ここに集まった人たちが罪に問われることは無いんですか?」
「ああ。捜査本部はそもそもこちらには意識が無い。大丈夫や」
「そうですか…ありがとうございます。涼宮刑事がいなかったらこの計画は完璧なものにならなかったと思います。こちらからも、ありがとうございました」
涼平はそう言って涼宮刑事に頭を下げた。涼宮はお互い様や、と言って涼平の肩に優しく手を乗せた。
「わあからも礼を言うで。ありがとう!」
セーラー服の女性、みどりも涼平に頭を下げる。涼平はそんなみどりに慌てて手を振る。
「もう、みんなして止めて下さい。今日のことはみんなで成し遂げたんです。そこにはもちろん、ゆかりさんや真奈美さんも入ってます。それと萌未と。みんなで成し遂げたんですよ」
それを聞き、みどりは持っていた竹刀でバシッと床を鳴らした。
「おお、そやな!そんで、わあらはこれから亡くなった人の分も、しっかり生きなあかん!今日のことはそのための出初め式や!」
涼平はその言葉に頷いた。涼宮も、ゆっくり、そしてしっかりと頷いた。と、急に涼宮が眉を上げる。
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