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23話
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「だから、それはミウのことが心配だったからだよ」
「心配だったのはハオだけでしょ⋯?そのまま放っておいてくれれば良かったのに」
ミウは「価値がない自分なんか探さず、したいことをしていてくれれば良かったのに」そう思って言った。
「みんな心配してたのに、なんでそんな酷いこと言うの⋯?」
「みんな」とは誰だろうか。そんなハオ以外で心配してくれる人なんてミウにはいない。
だからハオが泣きながら言う言葉が理解できなかった。
「てめぇ、ハオの気持ちも考えねぇで、泣かせやがってっ!」
エリルが椅子から立ち上がり、ミウの前に来て頬を殴った。
「ミウちゃんっ」
セシルが殴られ倒れたミウに「大丈夫っ?」と寄り添う。
その時、ミウの頭の中は真っ白になった。
そして「ひとりになりたい」とだけ思った。
ミウはスっと立ち上がり、ドアへと向かった。
部屋を出る瞬間「逃げんな」というエリルの声が聞こえた。
ミウは自分の部屋に戻り、お留守番していたエリムを抱きしめた。
「キュゥゥ」
ミウの涙をエリムはぺろぺろと舐めた。
ハオの言う「みんな」は上辺上、心配しているフリをしている者たちだろう。
そんな者たちが本気で心配していると信じているハオに少し腹がたった。
心配してくれていたのなら、なぜ当時は「自分に良くしてくれなかったのか」と、ミウは悲しくなってきた。
そして、エリルに言い返せなかった自分にも腹が立った。
「ハオの気持ちも考えない」ことなんてなかった。ずっとハオのことを考えて生きてきた。
自分の言い方は、今考えると確かに少し酷かったかもしれないが「本当」のことだ。
ミウはこの初めての「むしゃくしゃ」とした感情に涙がどんどんと零れてくる。
そして気づいたらエリムと一緒に寝ていた。
「んぅ」
「起きたか?」
ミウは頭を撫でられているのが気持ちよくてまだ寝ていたいと目を開けられなかった。
「ふっ、可愛いな」
しばらく撫で続けられていると、だんだんと意識が戻ってきて「はっ」と起き上がった。
「おはよう」
「おはよ⋯う、ございます」
目の前にいたのはオルガだった。
起きて頬を触ると、ミウの腫れた頬は手当されていた。
「大丈夫か?」
オルガが頬を触る。
「だ、大丈夫です。僕が怒らせてしまったせいなので」
「これが自業自得と言うやつだ」とミウは思っていた。
「お前は悪くないよ」
オルガにそう言われ、ミウは頬が熱くなった。
「お前が悪い」と言われたことはあっても、誰かに「お前は悪くない」と言われたのは初めてだったからだ。
「ぼっぼくっ」
「ゆっくりでいいから」
泣きながら話すミウに、オルガはミウを抱きしめ頭を撫で、背中を撫でた。
「心配だったのはハオだけでしょ⋯?そのまま放っておいてくれれば良かったのに」
ミウは「価値がない自分なんか探さず、したいことをしていてくれれば良かったのに」そう思って言った。
「みんな心配してたのに、なんでそんな酷いこと言うの⋯?」
「みんな」とは誰だろうか。そんなハオ以外で心配してくれる人なんてミウにはいない。
だからハオが泣きながら言う言葉が理解できなかった。
「てめぇ、ハオの気持ちも考えねぇで、泣かせやがってっ!」
エリルが椅子から立ち上がり、ミウの前に来て頬を殴った。
「ミウちゃんっ」
セシルが殴られ倒れたミウに「大丈夫っ?」と寄り添う。
その時、ミウの頭の中は真っ白になった。
そして「ひとりになりたい」とだけ思った。
ミウはスっと立ち上がり、ドアへと向かった。
部屋を出る瞬間「逃げんな」というエリルの声が聞こえた。
ミウは自分の部屋に戻り、お留守番していたエリムを抱きしめた。
「キュゥゥ」
ミウの涙をエリムはぺろぺろと舐めた。
ハオの言う「みんな」は上辺上、心配しているフリをしている者たちだろう。
そんな者たちが本気で心配していると信じているハオに少し腹がたった。
心配してくれていたのなら、なぜ当時は「自分に良くしてくれなかったのか」と、ミウは悲しくなってきた。
そして、エリルに言い返せなかった自分にも腹が立った。
「ハオの気持ちも考えない」ことなんてなかった。ずっとハオのことを考えて生きてきた。
自分の言い方は、今考えると確かに少し酷かったかもしれないが「本当」のことだ。
ミウはこの初めての「むしゃくしゃ」とした感情に涙がどんどんと零れてくる。
そして気づいたらエリムと一緒に寝ていた。
「んぅ」
「起きたか?」
ミウは頭を撫でられているのが気持ちよくてまだ寝ていたいと目を開けられなかった。
「ふっ、可愛いな」
しばらく撫で続けられていると、だんだんと意識が戻ってきて「はっ」と起き上がった。
「おはよう」
「おはよ⋯う、ございます」
目の前にいたのはオルガだった。
起きて頬を触ると、ミウの腫れた頬は手当されていた。
「大丈夫か?」
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「だ、大丈夫です。僕が怒らせてしまったせいなので」
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「お前は悪くないよ」
オルガにそう言われ、ミウは頬が熱くなった。
「お前が悪い」と言われたことはあっても、誰かに「お前は悪くない」と言われたのは初めてだったからだ。
「ぼっぼくっ」
「ゆっくりでいいから」
泣きながら話すミウに、オルガはミウを抱きしめ頭を撫で、背中を撫でた。
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