太陽に焼かれる日常

雨月葵子

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教室の窓

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「ねえねえ、次の日曜日に映画観に行こう!」
 細く真っ直ぐな黒髪が肩からこぼれるのを見ていた私は、エリの話に遅れて反応する。
「……どれ観るの?」
「『君の庭』ってやつ! ヒロイン役が杏ちゃんで、雨に濡れるシーンが色っぽいんだよ! ストーリーも評価高いの」
「杏ちゃんは最近ドラマとか映画によく出てるよね。私も観たい」
「よし! じゃあ、一時に映画館に集合ね」
「りょーかい」
 白い歯を見せて笑うエリは可愛い。短いスカートから伸びる色白の太腿に隣席の男子がチラチラ視線を向けている。
 エリは手を振りながら、他の友達の輪に入って行った。
 持つ者の気持ちってどんなものなのだろうと考える。彼らは何に悩むのだろう。きっと私には理解できない。
 自分の右腕から生えている毛を左手で隠す。いつも剃り残してしまう。
 今日も母に怒られながら家を出た父の背中を思い出す。埃を被っているみたいにくすんで見えた。
 私は父の背中が嫌いだ。父の不器用さが嫌いだ。私に遺伝してしまった毛深さが嫌いだ。

 授業開始のチャイムが鳴った。
 クラスメイト達が自分の席に戻っていく。散らばっていた人が規則的に並べられた席を埋める。
 合図さえあれば人間は集団で動く。
 数学の先生が教室に入ってきた。
「今日は二次関数の続きをします。まずは宿題の答え合わせから」
 宿題の答えよりも、窓に映る自分の未来を消し去る方法を教えてほしい。
 恋愛映画なんて好きじゃない。男女がいちゃつくシーンを見るなんて拷問だ。
 しかも、一週間前に彼が他の女の子と観た映画なんて。

 窓ガラス一枚を隔てた外は晴天で、鳶が我が物顔で飛んでいる。
 それに気を取られて、窓ガラスに映る自分の泣きそうな顔に気づくのが遅れた。
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