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1.森の中の変人さん(俺)

13.傷の深さ

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 レインモンスターを倒したことに何か突っ込まれることなく、移動をして目的地、に到着

「えっ…どういう事だ?」

 おじ様に、降ろしてもらって子供は周りを見渡す
 もちろんここは山村、結果は残念ながら間に合わなかった

「そっ、そんな!」

 子供がうなだれる。雨に、泥にまみれつつ泣き泣き叫ぶ

「アーノ」

「うん、生き残りがいるね。救助する?」

「もちろん」

 偶然か奇跡かどちらでもいい、せっかく生き延びた命だ拾っておこう

「ナーナンさん、生き残り拾ってくるね」

「えっ、ああ…頼む」


 バチャバチャと水にぬかるんだ大地を歩き、潰れた家の屋根を……どかせるのかこれ?

「よいしょっ!」

 あっはい、そうですねアーノなら余裕ですか

「アーノ、力持ち!」

 素直に褒めようパチパチと手をたたく

「いや~、それほどでも」

 照れるなよ

「さて、ここか?」

 家の床下収納の様に扉があったのでそれを開く(アーノが)すると二人の子供を発見した

「……」

 アーノは何も言わないので

「もう大丈夫だよ」

 わたし(俺)が言う、二人はただ掘られた穴にずっと居たのだろう、水が入ってきて屈んでいる腰ぐらいまで水に浸かっていた。

 家が崩れ水がどんどん入ってくる恐怖とも戦っていたのだろう早く温めないと

「アーノ、お願い」

「ほーい」

 よいしょっ!の掛け声と共に2人引っ張り出したが、2人はされるがままにではなく怯え震えて体が強張っていた

 なぜ?
 そう思っている間もアーノはお構いなしに魔法を使う、ゲームとはいえ魔法を使っていたアーノわたし(俺)を温めたりとか、服の水気を飛ばすとかゲームになかった魔法も使えるようだ羨ましい、町を出て男に戻ったら魔法を教えてもらおう

 アーノにナーナンさん美人2人からの個人授業だ今から楽しみだ、グフフフフ

「終わったよ~」

 おっと、妄想にふけっている場合ではなかった。アーノはついでに泥の汚れも落としたのか、2人はキレイになっていた。

 ふーん、女の子かだけどボロのワンピースにガタガタの髪、扱いは良くなかったことが分かる

「おっお前たち生きていやがったのか!」

 いつの間に来たのか、ガキが怒鳴りながらやってきたが…この言葉で確信を得てしまったね

「お前たちがアイツを呼び寄せたのか!」

 2人はわたし(俺)とアーノの影に隠れ震えている

「お前らのせいで!お前らのせいー」
『パンッ!』
「ーでぇ!」

 わたし(俺)は即座にクソ野郎の頬を全力で叩いた!

「バカゴミクズカスアホ!」

 語呂が少ないがガキにはそれで十分

『パンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッパンッ!』

 何度も何度も何度も叩く

「…あ、なっ何やっているんだ!?」

 ナーナンさん我に返ってわたし(俺)と男の子を離す

「いや、他人のせいにしてるからつい」

「えっ?」

 おっとナーナンさんに素で答えてしまった

「あのね、この男の子は他人のせいにしてるからつい…テヘ♪」

「いや、演技してないことに疑問を持っているわけじゃなくだな」

 ん~~?つまり、どういう事だ?

「ぼ、暴力は駄目だぞ?」

 その言葉に『カチン』ときたので

「ならば、言葉の暴力は許されると言うのか!」

 ガチで返す

 もし、ナーナンさんそれを許すと言うならばここでサヨナラだ、いい関係を結べそうだったが、俺は許せないしそんなことを許すやつとも一緒にいたくない

 だいたい言葉で傷つけてくるやつに言葉で返しても意味も効果もない。

「平和的に何を言われても言葉で言われたら言葉で返し暴力はいけないよ?」

 なんてそんなこと言うのは、平和ボケで頭がおかしくなっているやつの言葉だ、そもそも相手を侮辱、傷つけることを平気で言うやつは自分がそもそも言葉では傷つかない奴だ何を言われても。はいそうですか、と流せるやつだだから言葉で返したとことで意味はない

「いっいや、そうではないが…」

「身体的な暴力は痛いし、度が過ぎれば命をも奪うが。言葉の暴力は一生つきまとうし、治らない心の傷を作り、一生、命の危機に晒し奪うものだ!」

 体の傷なんか治る…だけど心は治らない、出来るのは治ったフリ、見ないフリ、忘れたフリのごまかしだ、でも不意に思い出し傷つく

 一生の傷だ

 必ず不意に思い出し落ち込み、ものによっては死にたくなる

 傷つけた相手は平気なのに…

「……そう、だな」

 わたし(俺)の言葉に俯くナーナンさん沈黙し雨音が支配する中におじ様とアーノがやってきた

「まぁ、とにかく移動しよう雨ざらしのままでは気が休まらんだろう」

「うんうん」

 チラッと見えたがアーノ、なにおじ様にお金渡してんの?

「少年は行きと同様、私が連れて行こう」

 うん、それがいいね

「アーノロウティ、ユウちゃんは私が連れて行くから」

 チラッとアーノがわたし(俺)を見てきたので頷く

「了解だよ、さあ二人共アーノはアーノロウティっていうんだー、お名前…………」

 うん、アーノに任せて大丈夫そうだ、じゃあ移動しようか



 帰りは行きと違い全速力では無かったが、そこそこ速く移動して帰った

 移動中ずっとナーナンさんなにか言いたげにしていたが結局何も話さないまま宿に帰ることに

 糞ガキは本当におじ様が引き取っていった。ありがたい、なんかこの2人と問題がありそうだしな、男同士と女同士(偽物1人)で分けたほうがいいし

 おじ様は本人と相談の上、ここの孤児院か知り合いに預けるか糞ガキと相談するそうだ、そう言っておじ様は自分の宿に行った。

 わたし(俺)達も自分たちの宿に戻るとアーノが

「2人はアーノの部屋で預かっとくね」

 ナーナンさんの様子から気を使ってくれたアーノ、ごめんね後でちゃんと今日のことお礼を言わないと

 部屋に二人っきりベッドに腰掛け向かい合うこと数分、真面目な空気だからわたし(俺)は男になって俺の着替えが終わるとようやくナーナンさんが口を開いた

「まずは、ごめんなさい」

「何が?」

「君の気持ちも考えずに止めてしまったことだ」

「…だよな、ナーナンさんもわかる事だよな?」

「ああ…」

 頷き帽子で隠している角に触れるナーナンさん
 そう、角を隠すナーナンさんは知っているはずだ…心の痛みを

 だから俺は叩いた。あの糞ガキを…

 差別や偏見で投げかける。相手を傷つけるための言葉

 それを放つあのガキはそれを言っても自己満足でまともに言っても意味はない彼にとって普通の言葉なのだろう、当たり前の言葉なのだろう、言っても相手がどれだけ傷つくか知らない言葉なのだろう

 だから、叩いて分からせた少しでも相手が傷ついた事を知らしめるため

 言葉で言っても意味が無い相手に伝える唯一の手段で伝えたのだ

 でも、ナーナンさんに一様お礼は言っておかないといけない

「でも…止めてくれてありがとうな」

「え?」

「あのまま、ヤッてしまいそうだったから」

 主にアーノが、俺が怒り叩いている時点でナイフを抜のを感じた。あくまでそんな気がしただけだがきっと聞いたら即答するだろうな、そんな確信がある

「そっ、そうなのか?」

「うん」

 再びお互いに沈黙する。ナーナンさんはまだなにか言いたいことがあるようで、すこしモジモジとしている

「今後はどうするの?」

 俺から話題の提供、まあ今後についてはだいたいわかるけどわからない部分や勘違いを失くすためにも確認は必要だから

「えっと、まず…あの2人は面倒を見たいのだけれど、いいか?」

「理由は?」

「あの二人は亜人種だから…誰かの手助けがいるんだ」

 んー?

「この国には偏見、差別の対象が亜人種なんだ」

 あーそういう話ですか、そうなるとたしかに助けは要るね

「差別は他人事じゃない、私も過去に…あったから」

 そしてナーナンさんは過去を話してくれた。

「この国、ゲスドグーズは差別…人種至上主義だこの国で生まれた亜人、人種以外をそういうのらしいのだが亜人は人以下の扱いを受ける」

 イジメではない、差別による迫害で、この世界である以上自力で移動するには幼い頃のなんの力もないナーナンさんは無理で耐える事しかできなかったそうだ

「親は?」

「…父親は、人種だが、母親が有角種だっただが2人は夫婦というわけではなくストリートチルドレンだった母を食べ物をやるから抱かせろという理由でできた私なんだ」

 それゆえに心身ともに傷をもちろん受け、それこそ死ぬような傷も負ったらしいが、有角種は生命力が強いらしく生き残れたそうだ

 だが、生き残れたとしても…想像しかできないが心の傷はとても深そうだし、よくまともでいられたものだと思う

 俺は泣きながら過去の話をするナーナンさんの横に移動して背をさすってやる事しかできない、気の利いたことの1つでも言えればよかったのだが…

 俺にはそんな器用なことはできない、ただそばにいることしかできなかった。ナーナンさんに比べれば大したことのないであろう俺の過去も話したが、ナーナンさんは優しかった何より

「以上が俺の過去だ、ナーナンさんに比べれば大したことのないだろうがな」

「そんなことない、誰もが負った心の傷の痛みは本人にしか分からない、だから比べるものではない…あなたもよく、頑張ったね」

 そう言って抱きしめられ頭を撫でられたら心がなんだか軽くなった気がした。

 攻略された?
 俺ってもしかしてチョロい?
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