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第一章 落胆・フォーリングチーム
しおりを挟む「一軍のメンバーが待機してるのは南棟、一階の奥のシミュレーション室Cなのですよ」
授業中のために無人の校舎で、剥がれた塗装や湿気やらで平らとは言い難い廊下に、スタームの足音が大きく響く。
若干疲れた顔のデータ・Kの肘がその頭頂部に当たる。
いわゆる肩車という体勢になっているデータ・Kは自分の頬を寄せながら補足を加えていった。
「一軍に選ばれた勇者科の生徒は執務室でチームに関する大まかな説明と電脳天使の貸与の後、シミュレーション室で自習中の他のメンバーと合流する予定だったのです。
A~Eのチームはその流れは全部終えたから、今シミュレーション室に残っているのはチームFのメンバーだけですね」
「いやあ、楽しみだな!」
「呑気なもんなのです」
自分が好きにできるチームのメンバーと聞いて舞いあがっている少年に向かって、頭上から呆れた様子のため息が送られてくる。
「A~Eの五名がまとめて呼びだされたのに自分だけなんで個別に説明を受けたのかとか、さっきのダイス=フラッターの『普通よりも劣っている』発言に対してなんの疑問も抱いてないですか?
勇者ならもうちょっと警戒心持つですよ!」
メンバーの詳細を知っている電脳天使からのこの発言も十分に警戒すべきものであったのだが、
「むしろ警戒よりも、会うまではめいっぱい期待しといた方がいいじゃない!
もしかしたら僕の理想通りのパーティかもしれないってさ」
後ろ向きなんだか前向きなんだかいまいち分からない発言に、再びため息。
今度の風はオレンジの前髪を大きく揺らした。
二人が南棟に入って目的地に近づくにつれ、わずかだった人の声や戦闘をする音が大きくなってくる。
今にもスキップでも踏み出しそうなスタームの心を余計に持ち上げるのは、先ほどの生徒会長とのやりとりだった。
『チームFのメンバーにはその専門科の首領(ドン)と呼ばれてる人が一人いる、色々教えてもらうといい』
『ど……ドンですか』
首領がいるのに期待せずにいられようかと、スタームはワクワクを隠せずにシミュレーション室の扉を開いた。
「うわぁ……」
途端に広がる別世界。
昼下がりの柔らかな日差しが射し込んでいた廊下とはうってかわって、そこには天井も壁もない真っ暗な、無限の空間が広がっていた。
ちらちらと見える小さなライトが夜に瞬く星を連想させるが、ここは夜中ほど暗くはない。
入学直後の学校案内で一度見たきりだった光景に、スタームは思わずため息をついた。
電脳天使の冒険者に対するサポートは数知れずある。
別次元を使用したアイテムの収納、確認されたステータスの情報公開、モンスターと接触した場合の戦闘開始の警告と戦場フィールドの展開……
そして、既存の情報を使って危険のない戦闘シミュレーションを行うことだ。
B&Cスクールでは数体の電脳天使が仕事を行っており、特にシミュレーション室Cは二年以上にならないと使用許可の降りない難易度の高い戦闘が行われている。
いつかは自分も使用してみたいと思っていたスタームが興奮気味に見回せば、距離感のわかない紺色の空間に、明るい青の光で囲われた図形を見つけた。
やや小さめの範囲のそれは、電脳天使が設置した戦闘用フィールド――誰かが戦っている証拠だ。
まず初めに目をひいたのは、フィールドの真ん中当たりに立つ彼が所持している武器の多さだった。
棍棒、双剣、弓、槍、斧……どれもが重量のありそうな大型の武器たちは、一部が手の中に、他は彼の広い背中にくくりつけられていた。
ぷきぃ、と小さく鳴いた仮想モンスター達が敵である人間に近寄っていく。
彼の至近距離まで近づいた一匹が、そのかわいらしい外見とは裏腹に鋭い牙を剥き出しにして襲いかかるが、寸前に彼が突きだした斧の取っ手部分に遮られる。
また一匹飛びかかると、それは構えた槍の石突きに噛みつくはめとなった。
離れた所から攻撃らしき液体を吐く者もいるが、それらは全て軽いモーションでかわされてしまう。
ダメージを与えられないまま男の周りが液体で汚れていくだけの内に、ターンが切り替わった。
フィールド上空に浮いていた『モンスターの手番!』の文字が書かれていた情報板がひっくり返って『冒険者の手番!』に変わった途端、彼は思いがけない行動をとった。
モンスターが噛みついたままの斧を放り投げたのである。
ぷきぃ、と成す術もなくモンスターが斧ごと宙を舞い、それを狙うのは別のモンスターが噛みついた槍の石突き。
次の瞬間、石突きと斧のモンスター同士がぶつかって砕け散り、斧は重力に従って下へ、槍は反動で逆方向へ。
それぞれの武器が向かう先には、液体を吐いて応戦していたモンスターが二匹。
金属が突き刺さる音と柔らかいなにかが潰れる音が響き、モンスター四匹が『戦闘不能』となったのは、あっというまの出来事だった。
むしろ見ていただけのこちらが、彼の行動の全体を理解するのに時間がかかったように思える。
それほど彼の動きは無駄がなかったのだ。
「なんという一撃……」
駆けよりかけていたスタームが足を動かす事も忘れて呟いた瞬間、残り時間のカウントが27秒で止まり、『Victory!』という文字と勝利までのターン数や詳細が代わりに現れる。
同時に彼の頭上に浮いていたステータスが消えてしまったおかげで、遠目から見ていたスタームは戦っていた彼の名前を知り損ねた。
だが、今更そんな事はどうでもいい。
スタームは目の当たりにした戦闘の凄さに興奮を隠せなかった。
「あーあー、歯型付いてら。布巻いただけじゃ耐久性はいまいちだな」
「あのっ、チームFの方ですか!」
戦闘フィールドの枠が消え、床に刺さった斧を気だるげに拾い上げる男へとスタームは今度こそ全速力で駆けよっていった。
初めてスタームの存在に気づいた男は、その突進してきそうな勢いに驚きながらも肯く。
「おぉ、確かに俺は今日からチームFなって言われてるけども。
……ひょっとして、別室で説明受けてた勇者科の」
「はい、勇者科二年のスターム=レリリオットです!」
頭をかいた拍子にただ邪魔だからまとめただけらしき、あちこちハネた炭色のまとめ髪がひよひよと揺れる。
近くのカバンを引き寄せて武器をしまった際、激戦を語る傷だらけの皮鎧が軋んで音を立てた。
「おー、そうか。じゃあその頭上のちびっ子は」
「チームFのナビゲーター、偉大なるデータ・K様なのですよ。ちびっ子言うなです」
光を超えるつもりの速さで頭を下げながら、スタームは確信していた。
実戦慣れした戦闘技術、年季の入った武器と鎧、間違いなくこの人が副会長の言っていた首領だ!
ちなみにこの時頭上のデータ・Kは、器用にバランスをとって落っこちることは防いだものの、至近距離で中年男性の顔面を見つめてしまうことになり、大層機嫌を悪くしていた。
「実際ちびっ子じゃねぇか。じゃあ自己紹介といくか、俺は」
「戦士科のドンですよね!」
「ぁん?」
スタームの言葉に彼が眉を寄せたせいで、斜線状についた左目の傷が歪んだが、かつてないほど直角に体を曲げて礼をし、頭を下げていたスタームにその様子は見えていなかった。
「会長から聞きました、チームFには首領が一人いるって!
あなたがそうですよね、いやそうに違いない!」
「確かにドンとか呼ばれてるけどもよ、俺は戦士科じゃなくて……」
今にも発光しそうなほどの期待に満ちたスタームの瞳の輝きに、男は気まずそうに首の後ろをかいた。
が、その言葉を言い終わる前に、青い直線の光が三人の足元を横切っていく。
同時にスタームと男の頭上それぞれに『Battle start!』の文字が浮かび上がり、男はため息をついた。
「カリウタのやろう、巻き込みやがったな」
「あっ、まずいのですよこれは」
と同時に、口の端を歪ませたデータ・Kが疑似体のダウンロードを中止させた。
出現した時よりもずいぶん簡単に、白いデータの残滓を残して数秒で少女の姿はかき消える。
「え、え? なに?」
「見ろ少年、あいつらもチームFの所属だ」
いきなり展開されたフィールドに戸惑いつつも指さされた方向へ視線を向ければ、十数メートル離れたそこに二人の人間の姿が見えた。
対峙しているモンスター達はいずれもぷきぃ、と声をあげてやる気満々のようである。
『冒険者の手番!』から最初に動いたのはステータス板に『盗賊』と記された女性。
天辺にくくられた髪紐から艶のある黒髪をなびかせてあっという間に距離をつめる様は鋭く、彼女が身にまとうどこかの民族衣装は風に揺れて、あでやかな紅をちらつかせていた。
一番近い所にいた三匹のモンスターより数メートル離れた所で足を止めると、彼女は懐からスタームの身長は軽く超える長さの鎖を取り出して正面めがけて投げつける。
先に重りの付いたそれはモンスターにクリーンヒットし、続けて二投、三投と見事な手さばきでモンスター三匹は後ろへ吹き飛ばされた。
役目を終えた武器は再び後ろへ下がった彼女の懐に入り、たった数秒で存在の痕跡も見当たらなくなる。
「鎖分銅……!」
「異国の特にマイナーな武器だっつぅのに、よく知ってるな」
スタームの言葉に男が感心した声をあげる。
彼がマイナーだと言う通り、スターム自身も読みあさった文献でちらりと目にしただけだった。
東の異国では『盗賊』の代わりに在る職業の者が使うという。
先ほどの鎖分銅も含め、隠し持つ『ニング』とやらをつかいこなして闇に溶け込む隠密――
「忍者キ」
タァアアァア! と続く予定だった叫びはしかし、彼女がまだ10秒ほど残っている自分のターンを終わらせた事で消えた。
一ターンの持ち時間は一個体につき30秒。
チームに自分以外でまだターンを終えていない個体がいる場合、強制的にターンを終われば次の個体の持ち時間に残った時間が加算される。
彼女がターンを終わらせた事によって、次の残り時間を示す電子板には30秒(+12秒)と記されていた。
ターンを引き継いで立ち上がったのは、『魔法使い』のステータス板を持った、スタームよりも若干幼い顔立ちの少女だった。
緊張した面もちで頷くと、自分の身長より高い杖を立てて呪文の詠唱を始める。
杖の頭部についた空色の球が光り始めると、ライムグリーンの半ズボンを身にまとった細い足の元で、魔法陣が展開していった。
宝石のついた胸元のリボンやマント、トンガリ帽子からのびる短めの髪が天に向かってはためく。
10秒ほどかかった詠唱が終わった時、魔法の効果が現れる範囲が魔法陣の図形となって反映される。
赤く浮かび上がる十字型の光――後方にいた二匹と先ほど女性が吹き飛ばした三匹、フィールド上のモンスター全てが効果範囲に入っていた。
「さっきの吹き飛ばしは、効果範囲に入れるためか!」
行動の意図に気付いたスタームが叫ぶと同時に、少女の閉じられていた目が開き、紫紺の大きな瞳を見せた。
「リトルファイア!」
瞬間、色を変えた魔法陣が燃え上がる。
人一人をすっぽりと包み込みそうな炎は、『リトル』と名の付く割りに相当の火力でモンスター達を焼き尽くした。
ほぼ同じタイミングで体力のなくなったモンスター達が『戦闘不能』となり、『Victory!』と情報板が戦闘の終了を告げる。
「グッジョブ……」
リトルファイアは入学したての魔法使いが一番最初に覚える初級魔法。
なのにモンスターをあっという間にやっつけたあの威力、スタームはただただ圧倒された。
感動に頬を染めながら、握りこぶしを作って興奮気味に口を開く。
「すごい! あの人達もチームFなんですか、一緒に戦うんですよね!
うわぁどうしよう、勇者として役目が果たせる……かっ、げふぅっ」
「少年んんんん!」
スタームは血を吐いて倒れた。
『戦闘シュミレーションを見学していたと思ったら いつのまにか地面に横たわっていた』
冒険譚の一ページになりそうもない駄文で、スタームの頭にエピローグが浮かぶ。
どんどん意識の薄れていくスタームの体を慌てて男が抱き起こす。
「しっかりしろ少年!」
「ああ……キレイな川の向こうで僕の考えた妄想パーティメンバーが手を振っている……待ってえぇすぐ逝くよぉ」
「そこはせめて実在してた人物を挙げろよ、さみしい奴だな!」
本人達は至極真面目な会話をやりとりしている間にフィールドの線はかき消え、戦闘を終えた女性二人が駆けよってきた。
「ど、どど、どうしましょう! だ、大丈夫ですか!」
「あら、よりによって一番かかっちゃいけない子に……」
「カリウタ! お前、巻き込むつもりでフィールド範囲設定したろ!」
慌てふためく魔法使いの少女とは対照的に、盗賊の女性は困った様子を顔に出すこともなく優雅に手を頬へ当てた。
年功序列的に戦闘シミュレーションの設定を行ったと思われる女性に男が抗議の声をあげるが、当の本人――カリウタと呼ばれた盗賊は、悪びれもせずしれっと言い放った。
「ニトアと私一人だったらどうあっても私にかかっちゃうじゃない。
あなたが標的になればいいと思って」
「お前って本当に俺のことキライだよな」
一瞬殺意に似た感情が男の胸をよぎるが、今にもトリップしてしまいそうなスタームを見て、それどころではないと思い直す。
男は所持していたカバンを下ろし、スタームに語りかけた。
「おい、少年。
今からお前の状態異常治してやるけど、二百Gコースと五百Gコースならどっちがいい?
五百の方なら体力も完全復活するぞ。ってかお前、金持ってる?」
戦士にしてはやけにガメツいセリフ、スタームは吐き気と気持ち悪さの中で違和感を覚えた。
「な……なんでパーティメンバーを回復するのに、お金……」
「いや、だからさっきも言おうとしたけどよぉ。
俺の職業、戦士じゃなくて商人だから」
言われた言葉の意味が分からず、身体の動きが止まったのが0.2秒。
偏った知識ばかりの詰まった脳に言葉が届き、意味を理解したのが0.1秒。
衝動に身を任せ、脊髄反射が発動したのが0.01秒。
要するに彼は一秒にも満たない時間で己の肉体を動かすことに成功した。
「うそだぁああぁあ!」
「ひぃっ」
口から血泡を撒き散らしながら上体の力だけで身を起こし、目を剥いてすがりつくスタームの姿はさぞ恐ろしく見えたに違いない。
「商人? 商人って物資を運んでパーティと商売してくれる職業のことですよね!
それがなんで戦闘訓練してるんですか! あんな華麗な戦い方しといて僕の心を奪っておいて、挙げ句商人ですか!
商人商人言い過ぎて商人という言葉がゲシュタルト崩壊してきましたよ、責任とって今から戦士になってください!」
「どんな責任の取り方だよ!」
ツッコミを入れながらも、男は少年のあまりの形相にドン引き、もとい気圧されている。
ドンと呼ばれる男に詰め寄ることができたスタームだったが、彼の気力が続いたのはそこまでだった。
「あら」
「えっ、ちょっと!」
「おいおい……」
叫んだおかげで今度こそ体力が尽きたらしい。
最後にスタームが見た光景は、三者三様に倒れていく少年に対する反応を見せたパーティメンバーと、状態異常のために戦闘フィールドが消えても残っていた己のステータス板。
体力ゼロの数値と、名前の隣にLV4・毒の文字に、あぁ、そりゃあ最高レベルの毒状態だったら五分も立ってられないの当たり前だよ、僕まだ新米だもん、体力二桁しかないもん。
でもなんで毒? と落ち着いた思考で考えた後、スタームの意識は途切れた。
「あ、気が付いたのです」
全身を包む綿のような柔らかさとかわいらしい声に気づき、スタームは目を覚ました。
薄く開いた視界に広がったのは、白を背景にきらきらと金色に輝く幻想的な光景。
天国か? いよいよ来ちゃったのか僕? 色々と覚悟を決めていたスタームは、肝心の視界のど真ん中に映る人間の顔に気づくのが数秒遅れた。
長い睫で縁取られた、大きな金の瞳が不満そうに細められる。
「おいこら、意識があるならなんか言いやがれです」
「て……天使……?」
実際のところ、天国から連想してとっさに言葉が出てきただけなのだが、至近距離の金の瞳は満足げに弧を描いた。
眼の中心を貫く十字の線もそれにならう。
「そうですよ、電脳天使のデータ・K様なのです」
スタームが目を覚ました事を確認して、金の瞳は幼い声と共にスタームの体から離れた。
同時に周りのきらきら光る光景も引いていき、それが彼女の金髪が覆い被さっていただけだと気づく。
なんのことはない、天使は先ほどまで引っ込んでいたデータ・Kの疑似体。
そしてスタームは保健室のベッドに寝かされていたのだった。
手に伝わるさらりとしたシーツの感触に、スタームは自分が横たわっていたことをようやく認識する。
「起きたか、少年……スタームっつったっけ?
K、もう毒は残ってねぇんだよな」
意識がはっきりして掛けられた布団から身を起こすと、ベッドの脇で待機していた先ほどの三人が良好になった視界に入ってきた。
オレンジの壁にもたれる男と保健室の来訪理由を据え付けのノートに書き込んでいる女性、そしてやけに暗い陰を背負い、小さな体を更にちぢこませてうつむき座る少女。
男の問いに、先ほどまでスタームを至近距離で見ていた金髪の女の子がブイサインを出した。
「崇め讃えるがいいですよ、毒はもうきれーさっぱり消えてるです」
小さな額にこれまた小さなしわを作り、データ・Kは両の手のひらをかざした。
間延びのする電子音と共に、半透明の薄い板が出現した。
スターム=レリリオットの名が付いたそれは、ステータス板。
体力値や魔力値の他、刻まれている身体状況には確かに状態異常の文字はない。
「電脳天使のステータス板生出現見ちゃったぁあああぁ! 毒状態になって良かったマジで!」
「あーうん、大丈夫そうだなこれは。少なくとも体力の方は」
自分が正常である事よりも電脳天使の一挙一動に興奮するスタームを見て、むしろ頭の方を心配し始めた男に対し、データ・Kは肩をすくめて見せた。
この少年はこれが通常運転である。
なにはともあれ元気になって良かった、と奇声をあげながら幼女の周りを飛び回るスタームに対し、男は冷静に紙束を突き出した。
「スターム、元気になったんならアイテム代千二百G、きっちり耳そろえて払ってもらうからな。
ったく、戦闘不能で気絶してくれなきゃあもっと安くついたのによ」
そう言われて見てみれば、渡されたのは日付と金額、その他もろもろが書き込まれた領収書だった。
月末の学生の財布、中には数百Gとお守りくらいしか入っていない事に青ざめたスタームだったが、それよりもショックな事実を思い出して男の方へ詰め寄る。
「本当に商人の方なんですか……すっごい戦士なのに、ほぼ理想像だったのに」
「だからさっきからそう言ってんだろ、ほれ」
疑い続けるスタームの目の前に提示されたのは男の(学生用)と印の入った冒険者証明カード。
名前の下の体力は軽く五ケタ超え、その他のレベルも見惚れた通りかなりのものだったが、それでも本職名はまごうことなき『商人』だった。
「ほ、本当だ。じゃああなたはやっぱり商人の首領、商人どんなんですね……」
「変なところで略さねーでくれるかな」
「じゃあドン」
「おう」
「僕、まだ仕送りが来てないから千二百Gも払えません」
おそるおそる切り出してみれば、途端に返ってくる舌打ちの音。
金がからむと態度が厳しくなるのは、やはり彼が商人だからだろうか。
「しょうがねぇなー、払えるようになるまでツケといてやらぁ。
んの代わり、あんまり長ぇと利子つけるからな」
「ありがとうございます!
って、ちょっと待ってくださいよ。僕が毒状態になったのって、別に僕のせいじゃないですよね?
なんであの時いきなり状態異常になったんだ?」
「ごめんなさい、それ、ぼくのせいなんです……」
千二百Gをツケる羽目になったそもそもの原因に首を傾げれば、聞いているこちらが心配になりそうなほどのか細い声。
視線をずらせば、先ほどモンスターをリトルファイアで一網打尽にした魔法使いだった。
だが、戦闘時の凛とした空気はまるでなく、まとった陰はスタームの視線で更に濃くなった。
頭から外して胸に抱えたトンガリ帽子も、持ち主の気分を象徴するかのようにへにゃりと垂れている。
「君のせい? ていうか、えーと」
「ニトア=スカイハンターといいます」
「ニトアは魔法使いだけれど、魔法を使う時に致命的な欠点があるのですよ」
データ・Kがスタームの目の前に情報板を展開させる。
それは先ほどの戦闘が映し出された映像だった。ニトアと名乗った水色の髪の少女が、詠唱で魔法を発動させる。
モンスター達の真下に魔法陣が浮かび上がり、そこまでは良かった。
「あ、あれ?」
ごしごしと目をこすってみるが、映像の中のスタームの足元に写っているのは、その時かけらも気付けなかったもう一つの魔法陣。
モンスター達がリトルファイアに燃やされると同時にそれは静かに光り、スタームのステータスを毒状態に変えた。
「このように。ニトアは魔法を使う時、自分の意思とは関係なく状態異常の魔法を発動させちゃうのです」
「えぇっ?」
「更に言うなら普通の攻撃魔法は外れたり避けられたりすることがあるのに、イレギュラーの状態異常魔法はほぼ百発百中なのです」
「えぇえ!」
驚きの声を挙げるたびに、ニトアはいたたまれないとばかりに手元の帽子をぎゅっと握りしめた。
頬は羞恥のせいかほんのり赤くなっている。
「じゃあ僕じゃなくて彼女にアイテム代を請求してくださいよ!
あ、でも月末でお金がないのはニトアちゃんも一緒か。
せ、せめて折半してくださいよ!」
「演習や授業で似たような事故が多発して、ニトアの所持金はほとんどゼロなんだよ!
学校に借金までしそうな奴に請求なんかできるか!」
「あと、あの……ぼくは一応、オトコです……」
なにやらとんでもない事を聞いたような気がして、スタームはおそるおそる聞き返してみた。
「オトコ?」
「はい、これでも十八歳のオトコ」
目の前に立っている苦笑いだが百合の花を咲かせたように微笑む、大人になった姿が大変楽しみな美少女……いや、少年の言葉にスタームは撃沈した。
その原因は自分のツケが減らず、かつどう見ても可憐な少女にしか見えないニトアが年上の男という事実もあったが、なによりチームFのメンバーが理想からかなりかけ離れたものであることに気づき始めたのが一番大きかった。
「どうして、だってチームFって、実習一軍の……」
「あなた、チームF発足の本当の理由を何か勘違いしてるんじゃないかしら」
床に手をつきなにやらぶつぶつ言い始めたスタームの意識を浮上させたのは、初めて口を開いた女忍者の言葉だった。
「え?」
「どうしてチームFの存在が一軍とは別枠で作られたと思う?」
質問の意味が分からず、スタームは首を傾げる。その理由は先ほど会長から告げられていたからだ。
「いきなり一軍の枠を拡大して、混乱させないためにじゃないんですか?」
一軍のチームはいくつかの基準に照らし合わせて、実習時に手柄と比例する経費が支給される。
つまり実力によって、二軍以下のチームよりも格段にアイテムや武器・防具の使用が幅広くなるのだ。
大きく金が動く上、電脳天使も一体駆り出されるため、一軍のチームを一つ作るのにも学校側が慎重に動かなければならないのは、必然と言っても過言ではない。
「言葉の意味そのまんま好意的にとらえ過ぎなのです。
そろそろ言ってやるですよ、お前の仲間達の裏側って奴を」
だが、生徒会長直々の言葉はあっさりと否定される。
うっとうしいとばかりにスタームの前で仁王立ちするデータ・Kの手のひらから、今度は別の情報板が現れた。
それぞれ顔写真の付いている三枚のそれは、目の前にいるメンバー達の物だった。
「盗賊科二年、年齢二十四歳、性別女性、名前はカリウタ=ヤキョウ。
ここよりずっと東のヒノ国からの留学生なのです。入学当時の年齢は十八歳」
「今二十四で、入学が……あれ?」
「魔法使い科二年、年齢十八歳、性別男性、名前はニトア=スカイハンター。
魔法研究所所長から直々の推薦状付きで十歳の頃に入学したです」
「えっ?」
「商人科二年、年齢三十八歳、性別男性、名前は……あーもー三回も繰り返すの面倒なのです!
通称ドン、入学当時の年齢は二十二歳!」
「はぁあああぁあ!」
専攻科目によって異なるが、学校とは四年から六年も授業をこなしていれば卒業できるものである。
無論冒険者を養成するのだから生半可な試験ではないのだろうし、スタームは一年や二年留年しても冒険者という夢にしがみつく心構えでいた。
それが単純な引き算で五年、七年、十五年!
二年になるとそこまで厳しい試練が待っているのかと、これからの未来に血の気が引いていく。
「言っとくですけど、数年も留年するほど二年生は難しくないし、留年させるほど学校だって大らかな所じゃないですよ。
普通なら技量不足でとっくの昔に退学です」
が、その心配はデータ・Kが軽く手を振って四散させた。
「特にこいつなんて新記録更新してるくらいです。
どんだけ学校に居座る気ですか」
「俺がドンって言われてる理由分かったか?
ぶっちゃけもう妖怪とか長老とかの方がぴったりくると思うんだけどよ」
保健室に備え付けられている椅子にどっかと座り、炭色の髪を揺らして高笑いするドンに全く同調できない。
自分に当てはめてみて、スタームはやや顔を青ざめさせた。
特に学費の点で。
「じゃあなんでこいつらが五年も七年もこの学校に留まれたか?
答えは『退学させられないから』です」
ヒノ国。魔法研究所所長。
入学の事情はそれぞれ違うが、共通するのはどちらも相当な権力を持つ相手が後ろ盾にいるという事だ。
「退学はさせられないけど、周りの生徒にも何年も留年できるんだなんて思ってもらっちゃ困るのです。
だからこそのチームF――いわゆる隠れ蓑ってやつですよ」
専攻科目には何年も置けない。
だが、権力に保護されている要人はなんとしても卒業させなければならない。
「ここ数年で俺達、学校で学べる限りの知識は貯めこんでるんだよな。
だから授業は受ける必要ねぇし」
「授業は受けなくても、ぼくらにはそれぞれ進級できない重大な欠点があって、もう専攻科目の方にはほとんど居場所がなくって」
「そこで、チームFでの功績を上げれば、進級――なんなら、卒業さえ認めてもいいって言われてるのよね」
つまり、なんだ。
見えてきた話の筋を、スタームの本能が押さえつける。
今後のために理解しておいた方がいいのだろうが、それは夢見る少年にとって耐えがたい事実であった。
だがそんな心情など知る由もなく、スタームの目が覚めてから一歩たりとも動いていない女忍者がデリケートな少年の心をぶち壊しにかかる。
「つまり、チームFとは権力者の七光りの集まり、ってところかしら」
「チーム名もどっちかってぇと『failing(落第)』のFだろ」
ドンが愉快でたまらないというような笑い声をあげ、スタームはもう一度気絶したい衝動に駆られた。
それってつまり、『だめだこいつら、早くなんとかしないと』の部類に自分も入れられたって事ではないのか。
「僕は……そんな、落第になるような事しましたか……?」
床にめり込むんじゃないかというくらいの落胆っぷりに、落第組の三人が顔を見合わせる。
いくつかの視線を交わした後、女忍者が軽い息を吐いて立ちあがった。
「ねえ、顔を上げてちょうだい」
うちのめされたスタームが顔を上げれば、艶めくポニーテールをたらした女忍者――カリウタと紹介されていた――が微笑と共にしゃがみこんでいた。
ひょっとしてこの人も男だったり? 一瞬そんな疑惑が頭をよぎるが、結構な露出度を誇る民族衣装の襟元からは、網状の生地越しに見事なバストが顔を覗かせていた。
肌の色を濃くする谷間を目に入れてしまい、スタームは慌てて視線を上に固定する。
鼻の奥からこみ上げてくる物は断じて鼻血ではないはずだ。断じて。
「お名前。なんだったかしら?」
「ス、スターム=レリリオットでふ」
「そう。スタームくん、確かに私達が何年もこの学校に留まっているのは事実よ。
だけど……さっきの戦闘シミュレーション、あなたはどう思った?」
切れ長の眼が長い睫を伴って問いかけてくる。
頬を両手で挟まれて、顔と顔が正面を向くよう誘導される。異性の視線が近くなり、スタームの顔は思わず赤くなった。
「どうって……見る限りでは素晴らしい戦闘でした、あなたとスカイハンターさんのコンビネーションも抜群だったし」
「ふふ、ありがとう。なら、その私達を導くのはご不満かしら? 小さな勇者様」
知らぬ間に移動していたのはベッドの上。
着地したシーツは複雑な皺の波を描き、純白の背景が彼女の肌色をより扇情的なものへと変えていた。
「で、でも、あなた達は問題があって留年してるんじゃあ」
「シミュレーション室で確認したでしょう?
それとも、まだ信じられない? それなら納得いくまで確かめてみて」
カリウタが足を組む。
陶器のようななめらかな曲線、太ももと呼ばれる女性の神秘が少年の目の前に露わとなった。
忍法・お色気の術。目前でそれを使われていることに眼を見開き固まるいたいけな少年は気付いていないのだろうと、ドンは心の中で合掌した。
「あ、あの、ええと」
「ほら……どうしたの? 満足いくまであなたの好きにしていいのよ?
遠慮はいらないわ、あなたは私達にとって必要なんですもの」
「そ、そうなんです!」
これ以上はさすがに目の毒と判断したか、真っ赤になったニトアの小柄な体が無理やり二人の間に割ってはいる。
「ぼく達その、進級とか卒業とか、色々重要な事がチームFの功績にかかってるんです!
だから、勇者の君が協力してくれないと何もできなくて、っていうか足手まといですけど……」
羞恥のためかほんのり桜色にそまった頬の上で、細い睫毛に覆われた瞳が憂いを帯びる。
「このままじゃ推薦してくださった所長にも申し訳なくて、だからお願いします!
ぼく達と一緒にチームを組んでください!」
もう本当に切羽詰まっているのだろう、ぎゅっと眼をつぶり頭を下げる様はまるで小動物のよう。
ライオンに身を投げ出しているポメラニアンのような印象を受け、スタームは慌てて先輩に頭を上げるようなだめる。
「そ、そんな事してもらわなくたって大丈夫ですよ!
生徒会長直々に任命されてるんですし、欠点云々は僕だって人の事言える立場じゃないですし。一応、やる気ではあります」
途端に表情は明るくなり、可憐な美少年は再び頭を下げて笑う。
「ありがとう! こ、これからよろしくお願いしますね!」
大輪のひまわりのように主張こそしないが、そっと寄り添ってぬくもりを残していくスミレのごとく。
控えめな笑顔は、そっちの趣向はノーマルであるはずのスタームの心に甲高い鐘を鳴らした。
これは萌えか、萌えているのは僕なのか。
「そろそろチームFの今後の説明、してもいいですか」
咳払いの先にはなんとも白けた幼女の半目。
横では眼を閉じ肯く商人。
何に共感しているというのか。
体感温度マイナスの視線に思わず意識を引き戻して姿勢を正すと、データ・Kは保健室の真ん中に立ち、満足げに胸を張った。
「それでは皆の衆、耳の穴かっぽじってよーく聞きやがれです。
チームFは落第組の救済措置とはいえ、扱いとしては学校側が認めたれっきとした実習用の一軍チームなのです。
なので、年事予定は他の一軍と同じように進むのです」
「学校側の用意した疑似クエストをいくつかこなした後、民間人の依頼による本物のクエスト、ってところかしら」
「そういう事です。
一軍が二軍以下と違うのは、予算が完全にクエストの成功度合いによるものって所だけなのですよ。
もちろん月ごとの合同試合やテストも他とまるっきり一緒です」
「あれ? あの、じゃあ最初に出かける時の予算はどうなるんですか?」
「おいおい、それまで所持金ゼロのサバイバルなんて言うんじゃねぇだろうな」
商人にとってそりゃきつすぎらぁ、と顔をしかめるドンに対し、データ・Kは不敵に笑う。
「安心するですよ、おちこぼれ共。
これから一週間後に行われる一軍の初回合同試合で、チームの連携具合を見ると同時にその強さで月初めの予算が決定するのです。
試合はトーナメント形式、つまり完全かつ無慈悲な順位差によって一軍チームの番付が決定されるのですよ」
一体どちらの味方なのかと疑いたくなるほどあくどい笑みを浮かべるデータ・Kの言い回しは、完全に楽しんでいるものだった。
「ちなみに最下位は学校側に借金して予算のお恵みを受けるらしいです」
「ゼロよりひどいじゃねぇか!」
「嫌なら地獄の底から這い上がってくるです、すでにどん詰まりの留年者共」
最後の言葉でニトアの肩が大きく震える。
もう既にプレッシャーが掛かっているのか、一点を見つめて動かない顔は蝋のように白かった。
「け、Kちゃん、あんま追い詰めてあげないでよ」
「お前だってほぼ一緒ですよ、『なんとかしてくれ枠』」
「合同試合のルールは?」
庇うスタームと否定されたことで脱線し始めるデータ・Kを見かねて、カリウタが軌道修正を図る。
そうだったと、データ・Kは再び咳払いでごまかした。
「戦闘フィールドは横五十メートル・縦五十メートルの一ターン三十秒制です。
勇者が戦闘不能になったら負けの大将戦で、もちろん大将になる勇者と、戦闘フィールドを展開する電脳天使の参加は決定済みなのです。
他のパーティメンバーの職は無制限、人数は勇者込みの四対四……」
ん?
その場に居た全員の頭にクエスチョンマークが浮かんだ。
言いかけていたデータ・K本人の首も横に傾いた。
「今ここに、僕を入れてパーティメンバーは四人いるけど……」
「俺は商人だから戦力外だぞ。校則にだって商人は戦闘フィールド内で戦っちゃダメって事になってるしよ」
「あ、じゃあKちゃん込みで?」
「商人と同じく、戦力外の電脳天使は数に入ってないですよ。
そういや今まで追究するのすっかり忘れてたですけど」
データ・Kが再びメンバーの情報板を出現させる。
今度の数は四枚。流れるような速度でめくられ、止まった最後のデータには銀髪碧眼の少女の顔が写っていた。
「キナーはどこです?
確かチームFは全員で五人のはずですよ」
傾けられた首から金糸がさらさらとこぼれ落ちる。
それとは対照的に、三人の動きが目に見えてぎこちなくなった。
ドンとカリウタは何故眼を逸らすのか。
逸らしているのは厄介な事からか。
今日一日で培った防衛本能が、スタームの脳内で注意を促す。
ニトアがあの、と声を挙げた。
形の整った眉は、うっすらと寄せられている。
「それが、その……二日前に『近所の山で修行してくる』って言って、それから連絡しても出てくれないんです。
様子を見に行こうにも、あそこは一般人が近づけるような場所じゃないし」
「実家に引きこもりですか?」
二人の会話を聞きながら、その違和感にスタームはん? と首をひねった。
この学校は全寮制である。
無断外出は結構な罰則がついているはずだ。
あるいは、帰っても学校が文句の言えない実家なのか。
更に言えば、遠い所の情報伝達は基本的に電脳天使を介さなければとても遅い通信手段しかない。
学校などの大きな施設ならいざ知らず、個人宅に安否を聞くだけの連絡など、すぐにとれるはずがないのだ。
『あそこは一般人が近づけるような場所じゃないし』
ニトアの台詞が真実を語っているような気がして、いよいよスタームの防衛本能が警報を鳴らす。
警告、警告。
なんとかして回避しないと面倒くさい事になる可能性、大。
「連絡がとれないとなると、直接会いに行くしかねーですね」
データ・Kの出した提案を境に、保健室に沈黙が降りる。
まるで全員一致で行きたくないようなその雰囲気に、視線は自然と下へ向く。
「ニトアは確かキナーと仲良かったですね。
二日も何も言わないのは普通なのですか?」
「いえ、だからちょっと心配で。
できる事なら無事を確かめたいですね」
一人が向こう側へと傾く。
スタームは両膝をきゅっと寄せた。
「ちなみにだぞ? 人数が足りなかった場合、予算の件はどうなるんだ?」
「不戦敗となって、必然的に最下位になるです」
「よし、意地でもキナーを引っ張りだすぞ」
もう一人、金に釣られた。消えてなくなる訳でもないが、背を丸めて身体を縮こめる。
「でもご実家って、確か特別な許可がないと内部には入れない所よね? 大丈夫なの?」
「こちとら進級と卒業のかかってるチームFですよ。既にメンバーは自由に出入りしていい事になってるです」
「そう、ならなんとかなるかしら」
いまや無言を貫いているのはスタームただ一人。
「一軍チームはメンバー交流のために、明日は授業無しって事になってるです。
もちろん暇ですよね、スターム?」
逃げ道をふさぎにかかるデータ・Kに向かって両手を上げると、スタームはしょうがないなぁと悟ったような心で笑みを浮かべた。
ただ、一つだけ言わせて欲しい。
「そのキナーって僧侶、まともな人なんでしょうね!?」
返事はもちろん、視線すら返ってこなかった。
冒険者育成学校を南西へ十キロほど進んだ海岸近くに、チームFのメンバーが引きこもっているというその『山』はあった。
標高は二千メートルあまり、切り立った崖で囲まれたそこはピクニック気分で訪れるどころか、軍隊が制圧目的で押し掛けても強行突破は難しそうであった。
なぜなら陸から入ろうとすれば、そこに待ち構えているのは一つの関所だからだ。
「…………」
そして、スターム達は今まさにその関所にて、門番に査定されているところだった。
「…………」
チームの先頭で口角をひきつらせているスタームをジロジロと睨み付けているのは、門番もとい、縦にも横にも体格のいい回復士であった。
ちなみに女性である。
「スクール直々の許可書なら仕方ない……通行と護衛無しの自由行動を認める」
やがて肺活量を測りたくなるため息と共に、スタームは言い様のない重圧から解放される運びとなった。
ほっと一息をつく間もなく、すぐに回復士の顔が目前に迫る。
「ただし! 頂上の礼拝堂には決して近づかぬようお願い致します!」
例えスクール関係者だろうと近づけばただではおかないという般若のような面相に、一も二もなくスタームは高速で首を縦に振った。
もはや回復士というよりは一兵卒と対面している気分である。
なぜだろう、聖紋の入ったベールは神に祈りを捧げる清らかさの象徴であって、物理的に命を守るためのヘルメットではないはずなのに。
「すごい勢いで念を押されちゃいましたね」
「仕方ないわよ、頂上にはキュアブラッド教の最高権威とそのご家族が暮らしているんだもの」
「『神術の家系』になにかあったら、それこそ宗教自体が傾きかねねぇもんよ」
関所をあとにし、口々に感想を告げるメンバーに対し、スタームはいまだひきつった顔で振り向いた。
「あの。そのキナーさんとやらは『近所の山にいる』って言ってたんですよね?」
「はい、そうですよ?」
「……近所の山?」
「はい、キナー曰く、そうですね」
指をさした眼前には、溢れんばかりの緑と、申し訳程度に手を加えられた道。
ここまでは普通の山となんら変わらないが、問題は山全体を視界に写した時にある。
とうとうスタームは我慢できずに震え出した。
「どこが近所の山なんて手軽な存在なんですか……」
萌える緑に混じって、ちらほらと顔を覗かせるのは、白の建物。
精巧な彫刻の施されたそこは、回復の術を学ぶ修行者が暮らす神聖な場所である。
そしてなにより、時折山から漏れ出すようにして浮遊する、光輝く靄。
本来なら視認できるはずのない、回復術を使う際の原料となる神気であった。
「霊峰じゃないですかっ!」
かつて冒険者の存在が一般的でなかった頃、神がその頂上に降り立ち、疫病に悩む人々に神術を授けたという。
それ以来そこには清らかな空気と濃厚な神気が満ち、回復術を学ぶ修行者が後を絶たない。
神術使いのキュアブラッド教始まりの地である『神の山』――霊峰、フィブロ山。
回復士の聖地ともいえるそこに、冒険者学校の落ちこぼれ達は降り立ったのだった。
「あのキュアブラッド教開祖の地に、降り立つんならもっとちゃんとした理由が良かった」
石をどかし、歩きやすくした緩やかな丸太の階段が、奥に視線を向けるほど深くなっていく木々の間をぬって道を作っている。
実際には関所を抜けたばかりで、フィブロ山入りには何十メートル離れていたが、彼なりのこだわりをもって涙を流すスタームはさておき、外観見学のみの観光客を対象としたパンフレットを眺めながら歩くチームFは疑問や意見を思い思いに告げる。
「この神気っていうのは自分で作り出せないのかしら?」
「さあ、魔力のことならわかるんですが……ぼくは僧侶と回復士ってどう違うのか気になります」
「おいおい、それよかキナーの行方だろ。
高いとこ好きだし、頂上付近で昼寝してたってオチでもついててくんねえかな」
とぼとぼとチームの後方を歩くスタームだったが、メンバーのセリフを聞くごとにその顔が歪んでいく。
その胸元に下げられた銀の円盤から、我慢できなくなったらしいデータ・Kのしかめっ面が姿を現した。
「なにアホ言ってるですか、おまえら」
「そうですよ、場所はともかく昼寝なんかしてるわけないじゃないですか」
引き継がれた言葉に、てっきりデータ・Kが解説してくれるものだと思っていた三人はおや、と振り向いた。
「神気と魔力は、性質だけなら同じ物なんですよ。
神様が降り立った場所で『魔』なんか発生したらまずいから名前を変えてあるだけ」
「あ、じゃあ基本的には魔法と同じなんですね」
「回復士は基本的に人を治すことが仕事ですが、僧侶は冒険者のカテゴリーに属する、いわば『冒険者の資格を持った回復士』です。
遠征やパーティを組んでモンスター討伐を行うかが大きな違いですね」
「昼寝なんかしてるはずぁねぇってのは?」
「信者の人から逃げ回ってるか本当に山ごもりで修行してるのか、あるいは病気でも患ってるか……なんにせよ、なんの理由もなくて学校サボれる身分じゃないでしょう、その人」
キナー・キュアブラッド。
キュアブラッド教開祖の血をひき、現在の最高権威である大親教のれっきとした娘である。
「せっかく説明しようと思って出てきたのに見せ場を根こそぎ奪われて複雑な気分ですが、全部スタームのいう通りなのですよ」
抱きとめられてスタームの胸元でくるくると表情を変えるデータ・Kだったが、その真上の顔があまり芳しくないことに気付いたのは早かった。
「眉間にシワが寄ってるですよ、少年。
ひょっとして原理の解明できてない神術やオカルト関係は嫌いなクチですか」
「人間が解明できていることなんてほんの一握りだよ。
そうじゃないんだ、回復士、特に神術使いのキュアブラッド教はむしろ冒険者の職としては僧侶志望でもないのに真剣に改宗を考えるくらい大好きなんだよ?」
それはキナーのフルネームを聞いた瞬間のスタームの反応で分かっている。
人間ってあんなでっかい奇声を放てるんだと、データ・Kは生命の神秘について考えざるを得なくなったくらいだ。
「分かりますか? 僕はひょっとしたらアイドルがトイレから出てくる瞬間を目撃する羽目になるかもしれないんですよ、そして目撃し続けなければいけないかもしれないんですよ」
「その例えはあまりにもって感じなのです」
ちらり、と会話の最中、前方の三人は視界に捉えられていることに気づく。
特に相当な戦闘技術を持っているくせに戦わない商人と、味方に被害を及ぼすドジっ子魔術師には懐疑的とも言える眼差しが注がれていた。
「不憫な子」
どうやらチームFのメンバーにより冒険者の理想像を叩き壊されたため、また同じ失望感を味わうんじゃないかと疑っているらしい。
自分の好きなジャンルであるからこそ、余計にだ。
そして恐らくその予想は当たっている。
今日一日で彼はどれだけ己の価値観を失うのだろうと、カリウタはそっと涙をぬぐった。
「お前も同じ目で見られろ、コンチクショウ」
スタームの意思はもちろん三人ともとっくに悟っている。
申し訳なさで泣きそうになっているニトアの脇で、ドンがそっとカリウタを睨み付けた。
「はぁ……もういいです、みなさんのおかげで多少の覚悟はできました。
それよりKちゃん」
三人に近づき、地図の確認をするスタームの顔つきが真面目なものに変わる。
「これからフィブロ山入りする訳ですけど、敵とエンカウントする度に戦闘フィールドの展開をお願いします。
必要ないと感じられる雑魚でも、全部に」
データ・Kの丸い瞳が怪訝な表情を帯びる。
電脳天使が展開する戦闘フィールドは、限定された空間でモンスターと戦う事で記録を積み重ね、情報を集めたり学校での成績やクエストの報酬を吟味させるための物である。
故に、そこまで危険視する必要のないモンスターに使っても、大した利益は得られない。
だというのに、スタームは遭遇した敵全てに、と言った。
状況を飲み込めていないニトアが、湧いて出た話にキョトキョト視線をさまよわせる。
「え、え? ここって回復士さんたちの住んでるおうちですよね?
なんで敵とエンカウントするんですか?」
「おうちではなく、修行の場です。
魔法の元となる神気がそこら中にあふれかえっているエサ場みたいな所に、それを食事にしている奴らが集まってこないはずがないでしょう?」
気配が一つ、二つ。
ニトアがその言葉で気づかされたのか、それとも向こうの方が引き寄せられたのか。
関所を抜け、近づいていたのは三メートル先も見通せないほどの黒く薄暗い森。
縦横無尽に枝をはった巨木達の向こうを境目にして、何かが蠢いていた。
明らかに人間では、ない。
「回復術の向上の意味でも、戦いの意味でも、ここはまさにうってつけの『修行場』なんですよ」
スタームが言った通り、フィブロ山は回復士だけの修行場ではない。
頂上に向かう程に濃くなる神気は、その濃さに比例して強いモンスターを自然と呼び集めた。
だからこそ、それらを倒して腕試しをせんとする冒険者達の良き修行場ともなったのだ。
関門で回復士が入山を渋った理由もここにある。
雇った警備に守られている修道院の回復士達はともかく、頂上にはたかが養成学校の生徒数人が太刀打ちできるモンスターは生息していない。
彼女は外敵から霊峰を守ると同時に、フィブロ山のモンスターを外へ出さない役割も兼ねているのだ。
「せっかくレベルをはっきり測れる所に来たんです、僕が入ったチームF全体のバランスを確かめさせてもらいますよ」
先輩達に対して無遠慮ともとれる言葉に、しかし本人は遠慮するそぶりも見せず言った。
(さすが……チームFに入ってくる辺り、ただの問題児じゃないですよ)
(噂どおりっちゃあ、噂どおりだがな)
スタームが持っていた情報によって彼の博識さを予想したデータ・Kと、その職業柄あらかじめ噂でスタームの事を知っていたドンが、ひっそりと目配せを交わした。
(力量を測りたいってんなら、こちらも遠慮なく測らせてもらうぜ、噂の勇者さんよ)
茂みの向こうに潜む者達の様子を伺いながらニトアやカリウタに指示を出す若き勇者に視線を向け、ドンの口は弧を描いた。
「ドンは戦闘中、くれぐれも戦わないようにお願いします。
あと、怪我人や状態異常者が出た時の事なんですけど……」
「回復アイテムのストックなら多少持ってるぜ、心配すんな。代金はきっちり計算しとくからな」
「やっぱり僕持ちになるんですね」
がっくりと肩を落とすスタームに笑いかけるドンの両目は、三日月の形。
瞳の奥が笑っていないそれは、まさに品を値踏みする商人のものだった。
「……よし、言っておく事はこんなものかな」
データ・Kはモンスターが視認できた時点でフィールドを展開。
どの陣形がベストなのかを模索するため、ニトアとカリウタにはエンカウントの直前に決めておいた位置へ移動してもらう。
ドンは商人という職業上、戦闘員に守られる立場にいるためにどちらかの傍に。
自分はチームFの実戦スピードに慣れるためにフィールドの隅でしばらく待機。
商人に値踏みされているとは露知らず、スタームは自分の出した指示を反芻して頷いた。
身の丈ほどの杖を握りしめ、緊張の面もちで頷くニトア。
対照的に肩の力を抜き、リラックスした状態ながらも所定の位置について微笑むカリウタ。
早速フィールド展開の準備をしているデータ・Kと荷物の中身を調べるドン。
神気の含まれた風が落ち葉を巻き上げ、スタームの頬へと冷気を届けた時、彼は気づいた。
今見回した、この人達と自分はチームなのだと。
自分が勇者として指示を出し、まとめあげて導いていく存在なのだと。
長い間、自分がずっと夢見ていた光景が目の前に広がっているのは――
ぞくぞくした感情をスタームの胸へと届けた。
「スターム君、どうかしましたか?」
「い、いえ、なんでもありません! ちょっと確認していただけです!」
にやけそうになる口角を無理やり下げながら、スタームは改めてフィブロ山へと向き直った。
油断は禁物、いつもの演習と同じようにやればいい。
少しだけ真剣な顔を取り戻して、スタームは先陣切って踏み出した。
「それじゃあ皆さん、行きますよ!」
フィブロ山の標高と神気の濃さ、それに引き寄せられるモンスターの強さは比例する。
実際に神が降り立ったとされるフィブロ山の頂上にはむせかえるほどの神気が溢れ、儚い雪のように緑を覆い隠し、そこを光らせていた。
そしてその頂上には程遠い、標高二百五十メートル付近。
蛍の光程にも神気を視認できないそこで、スタームは目の前が真っ黒になっていた。
「理解はしていたつもりでした……みなさんが普通の冒険者チームでないことくらい。
ただ、これはちょっと、……いえ、僕の認識が甘かっただけでしょうね……」
自嘲してみるも、目の前は全く開けない。
ただ混沌とした闇が広がるのみ。
「ご、ごめんなさい、ごめんなさい! ぼくが頼りないばっかりに、こんな、こんな……」
必死の謝罪が正面から聞こえる。
わずかに震えるその声の主は見えることがないものの、大粒の涙を堪えているだろうことが容易に想像できた。
ついでにその泣き顔がかわいいだろうことも。
男のクセに。
「えーっと、スターム君……とりあえず大丈夫かしら?」
「なんか笑ってるですよ。若人、それは諦念の笑みってやつですか?」
両脇からはカリウタとデータ・Kの声が。
落ち着いたお姉さんであるカリウタが珍しく言葉に戸惑っているのは、スタームがこんな状態になった原因に気を使っているからだろう。
呆れているというよりはむしろ笑いをこらえているドンの声が言う。
「にしてもスタームよぉ、お前このままじゃ破産するぞ?
主に状態回復アイテムの使いすぎで」
「分かってますよ!」
物を売りたい商人の性ゆえにか喜びすら滲んできているその声が、スタームの神経を逆撫でする。
思わず眉間に力が入るが、シワの寄ったその顔ですら、ドンにとっては笑いの種にしかならない事は確実だった。
せめてもの慰めは、本人のムカつく事極まりない顔が見えないのが不幸中の幸いか。
そう、比喩表現ではない。
現在スタームはリアルで視界が真っ黒なのだ。
数時間前に認識した通り、魔法使いの職を持つはずのニトアは、魔法を使うと同時に状態異常の魔法を繰り出してしまう。
その時の状態異常の種類、レベルと出現場所は全くのランダム。
つまり、敵だろうが味方だろうがお構いなしなのだ。
「アイテムがなかったらとっくに死んでるダメージですよ。
状態異常だけで臨死体験ってのも、なかなかに貴重な出来事ではあるですけど」
ステータス板を確かめていたデータ・Kの言葉が笑えない。
現に休憩を取ろうと木の陰に寄るスタームは、ふらついた足取りが危ないとドンに腕を掴まれていた。
命の危険がある異常はアイテムで回復してもらったとはいえ、数個のそれがいまだスタームの体を蝕む。
しかもかかった状態異常の数とこれまでの戦闘回数は全く同じ。
これが何を意味するか。
「戦闘のたびに、なんつーか、面白いくらい僕に状態異常のとばっちりがきますよね。
あれですか、信頼度の低さでも関係してるんですか?」
口に出しても仕方のないことだったが、視力のない不安定な状態、真っ黒な海に何かを吐き出さずにはいられなかった。
もう自力で立てると、スタームはいまだ笑いをこらえるドンの手を振り払う。
力を入れた右足の靴裏がぱきりと音を立てる。小枝か何かを踏んだのだろうと、それくらいしか分からなかった。
「おい、せめて暗闇も解除しとけ。
そのままじゃ移動もままならねぇ」
「暗闇状態は時間が経てば解けるから結構です。また状態異常にさせられるかもしれないじゃないですか」
相手が見えないからか、普段なら心の奥に隠しておく小さなトゲが口をついて出た。
視界に映らないだけで、そのトゲは存在している相手を傷つけるのに。
スタームには見えていなかったが、白魚のような細い指は、紺のローブをきつく握りしめていた。
「……スターム君、『戦闘フィールド下指揮権譲渡』の指示をお願いします」
唐突に告げられたお願いで、スタームの眉間に思いきりシワが寄る。
ぱきん。また枝の折れる音がした。
「そんな事できる訳ないでしょう」
一つ息を飲み込んで、桃色の薄い唇は開かれる。
「できるんです。普通だったら勇者さんは必ず戦闘フィールド下に入ってないといけないけど、あくまで主権はフィールドを作り出す電脳天使の方にあるから。
電脳天使がそれを認めれば、勇者さんは戦闘フィールドに入らなくてもいいことになります」
バキ。今度はさっきより大きな音が響いた。
息をつがずに説明できるのは、彼がそれを体験したことがあるからだ。
「ニトア、それは」
「勇者さんがいなくても、ぼく一人だけで戦えます」
『お前と一緒に戦いたくない』と、拒まれたことがあるからだ。
ためらいがちなカリウタの声を遮り、ニトアはきっぱりと言いはなった。
これ以上味方を苦しませたくないという気遣いに見せかけた、彼からの拒絶でもあった。
ぱき、ぱき。この音は果たして枝の折れる音だろうか。
じっと聴いていたスタームも、きっぱりと言いはなった。
「嫌ですよ、そんなの」
「え」
「そのシステム自体は授業でやってますし、やり方も知ってます。そうじゃなくて、僕は」
見えない相手に向かって声を張る。
言いかけた言葉は、破壊音と浮遊感でかき消された。
メキメキバキッ!
最後まで心の音に比喩したかったが、どうやらそうもいかないらしかった。
後にその場面を見ていた者は語る。
『モンスターから避難していたそこは崖の近くだったのでスタームの腕を掴んでいたのだが、自分が笑っているのが嫌だったらしく手を払われた。
見えなくてふらふらしてんのが面白かったんだからしょうがねぇだろ。
爆笑しなかっただけましだと思ってほしいが正直反省している』
『スターム君が立っていた場所は木の枝に土や木の葉が被さっていただけの所だったようで、枝が彼の体重を支えきれずに折れたと思われる。
忍者なのに場所把握がこなせておらず反省している』
『ちょっと険悪な雰囲気で言い争いをしていたために微妙な距離感が空いており咄嗟に彼の腕を掴めなかった。
もうちょっと場の空気を読んで発言するべきだった、反省している』
各々心の中で思うことはあったが、その時彼らの取れた行動は一つしかなかった。
「うわぁああああぁあああ――――!」
落ちていく本人も、それを見ていた者たちも、思う限りの絶叫を上げたのだ。
『いやー、まさにタイミングも言葉もぴったりハモってて、あれ、こいつらもう連携バッチリじゃね? チームとしてやっていけんじゃね? って思ったです。
落ちていくスタームを一欠けらも心配しなかった点については反省も後悔もしてねーです』
後に、関係者は語る。
「ふげらっ!」
枝の折れる音を下敷きにし、木の葉の感触と共に転げ、土の味がする口内に辟易してきた頃、ようやく少年の身体は回転運動を止めた。
頭の揺れる感覚に、しばらく立ち上がれずにいる。
果たして自分が倒れている場所は斜めなのか、それとも平地なのか。
目の奥を踊り狂うひよこ達を追い出して、ようやくスタームは上半身を起こすことに成功した。
「あああ、ひ、ひどい目に遭った……」
神様、これは僕が理想を求めすぎた罰ですか。
感じる気持ち悪さに、口の中から入ってきた土を吐き出す。
ふと、水音が聞こえた。
ちょうど転がってきた方向とは反対だ。
波よりも小さく、川の流れよりもゆっくりと。
そこに存在しているだけの水音は、佇むという表現がピッタリのように思えた。
スタームの視力は大分と回復してきている。
ぼんやりと目の前に広がる蒼は、泉という広さよりもむしろ、
(湖……?)
フィブロ山に湖があったことを意外に思いつつも、やはり霊峰なんだから綺麗なんだろうなぁと、スタームはこれから広がるであろう幻想的な光景に夢を馳せた。
ふと、ついていた右の手のひらに、違う感触を感じてスタームは視線を落とす。
木の葉や枝ではなく、それは人工物のように思えた。
(直線っていうか、厚みのある長方形……もしかして、本か?)
何故山の中に本が? そんな疑問も相まって、指先の感覚を頼りにそれを開いたのはスタームにとって大きな分かれ目だったかもしれない。
気を取られて視線を落としていたと同時に、うすぼんやりと見えていた視力が完全に回復したからだ。
スタームの体中に衝撃が走った。
回復したばかりの視力が光の速さで霞んでいく。
頭の中をかき回す金属音は耳鳴りというやつだろうか。
口の中に入った土によるものより何倍もの嘔吐感が腹の底から込み上げてきた。
何故山に、それも霊峰にこんな本が?
いいや、場所の疑問よりもスタームにとって、この本の存在意義の方が分からなかった。
自分がこれほどまでに理解できない書物は、もはや別次元の禁書のように思えた。
いや、ある意味禁書だ。
だって、男と男が! どう考えたって有り得ない表情をして、有り得ないシチュエーションで、あまつさえ、ああ、言い表すのも憚られる格好で!
認めたくはないが、スタームはこの書物がどういう物であるかを知っている。
それは一般的にマニアやオタクの系統と似たような位置付けをされているが、全く違う物だと声を大にして主張したい。
主に婦女子の皆さんが買っていかれる本だ。腐っている方の。
男子でもそういう物を好む人はいると聞いたことはあるが、生憎ながらスタームは好めない方だった。
むしろ回転運動で催した気持ち悪さが更にパワーアップした。
自分は何故こんな所でこんな目にあっているのか、自分の存在とはなんなのかを宇宙に問いただしたくなるほどの衝撃だった。
だからスタームは気付けなかった。
本の更に向こう、修道服の淡い蒼が木の枝に掛けられている事に。
大きくなった水音に、スタームはようやく視線を外すことができた。
映ったそれは、スタームの想像通り、幻想的な空間だった。
中心に向かう程に濃くなる蒼は、水と言う己の存在を主張することなく、ただそこに居続ける。
ちらほらと舞う神気の靄は、小さな結晶となって触れるたび湖に波紋を描いた。
白と蒼に彩られたそこに、生物の気配はない。
生者を拒む冷たさを表しているようだった。
いや、いた。
気付かなかっただけだった。
何故ならその者は一糸纏わぬ姿で蒼に浸かり、雪のような白をさらけ出していたのだ。
肩まで伸ばした髪は神気と同じ白銀に輝き、眼は底を見せぬ深い蒼。
蒼と白だけで形作られたような生き物だった。
眼に、釘付けになる。
深い蒼と表現したが、その蒼は深いだけではなかった。
鼓動を繰り返す。
生物が息づくように、眼の中に浮かぶ蒼はちらちらと発光していた。
そしてスタームはようやく気付く。
何故自分は眼の中の様子まで分かるのか。
湖の中心に居たはずのそれは、いつのまにか自分の目前までに近づいていたのだ。
目の前にいるのが人間であることを頭が認識する。
何か言わねばと口を開く。
「あ、の」
だが、スタームの身体を再び衝撃が走った。
それは眼の中の蒼を一段と光らせたかと思いきや、見事なまでのボディーブローを少年に叩きこんだのだ。
「げふうっ!」
「歯ぁ食いしばれ」
もう既に殴っているとか、そんな次元の問題ではなかった。
普段から興奮が過ぎると奇声を発することで有名なスタームだが、今回ばかりは奇声を上げてもしょうがない状況にあったといえる。
何故憧れの霊峰で体質的に合わない本の中身を見なければならないのか、何故幻想的な湖で少女に殴られねばならないのか。
そう、その生き物は少女だった。
華奢な白樺のような腕で、世界を狙えるほどの殺人パンチを繰り出してきた。
「あ、いるっぽいですよ」
「スターム君、大丈夫?」
「奇声上げてたから死んじゃいねぇだろって、おぁぎゃああ!」
横の茂みから、複数の声と再び奇声。
え、なんですか? という素朴な疑問と友達でいたいならお前は見るな! という叫びが上がる。
どうやら男性陣二人は少女の格好に気を使って後ろを向いたらしかった。
そんな気づかいなど意にも解さぬようで、少女の視線がそちらの方に向く。
スタームを殴った直後構えは解いたものの、その両手は横にだらり。
何がおかしいのかと言わんばかりに生まれたままの姿で直立していた。
スタームの方も気を使う余裕などなかった。
吹っ飛ばされた格好のまま、少女を凝視している。
衝撃の連続で、思考回路のどこかがショートしたかもしれないと他人事のように思っていた。
少女が口を開く。
「少年。わたしは、おっさんが好きだ」
は? とスタームは思う。だが声に出せる程に頭は回復していなかった。
少女は更に口を開く。
「幼女が好きだ」
「男の娘が好きだ」
「巨乳のお姉さんが好きだ」
「貧乳でもそれはそれで好きだ」
つらつらと並べられる言葉に、感情の揺れが見られない。
それでも顔なじみのニトアはその声だけで分かった。
少女は確固たる意志を込めて言葉を放っていると。
「だけど」
ここでようやく少女がスタームの方に視線を戻した。
それと同じくらいに、スタームの思考能力、そして運動能力が回復してくる。
「どうしても好きになれないものがある」
「少年。わたしは同年代の男の子は守備範囲じゃないんだ」
どうしてだろうな? と静かに問いかけるその姿は哲学者のようであった。
実際その場でそれを聞いていた人間すら、語られているのが深い宇宙の真理を説いているものだと錯覚を起こす程に。
言葉の意味を考えれば、それはただの特殊性癖の暴露であった訳なのだが。
「だから、なんだって言うんだ……」
ようやく絞り出したスタームの言葉は、弱々しくはあるが確かに己の疑問を形にしたものだった。
それからその少女が、傍らに掛けてあった服を手に取って纏い始めたのはすぐの事だった。
すぐ、というには複数の視線にさらされてからにしては随分と遅い反応だったが、まるでそれまでスタームのリアクションを待っていたかのように微動だにしなかったのだ。
そして彼女が纏う服もまた、正規の修道服とは一線を画す外見であった。
膝まで伸びているはずの長いローブは涼しげなクールビズで、余裕のある袖口は見る影もない。
というか本当にない。肩と裾が揃いのギザギザで縁取られていた。
まさか破ったのか。
回復士達が履いているのはロングスカートであったはずだ。
そんな健康的な黒スパッツでは、断じてない。
連なる光をモチーフとしたキュアブラッド教のシンボルがかろうじて彼女を関係者であると教えてくれるが、それがなければ本当に『どこの道場破りですか?』と問いかけたくなる格好であった。
「で、治った?」
「はっ」
ローブと同色の額当てを締め終えた少女に問われ、回復士の制服についてトリップしかけていたスタームの意識が引き戻される。
「治ったって、なにがですか?」
再び訳のわからない主張かと顔を歪めるスタームに対し、何かに気付いて顔を上げたのはデータ・Kだった。
多い歩数でスタームと少女の元へ歩み寄ると、出現させたのはおなじみになってきたステータス板。
スターム=レリリオットの名が刻まれたそこに、状態異常の文字は欠片もなかった。
「な、えぇっ! 一体なんで」
何重にも掛けられていた補助魔法の鎖が、いとも容易く消え去っていることにスタームは開いた口が塞がらなかった。
思わず殴られてからそのままだった体勢を起こしてみると、動きづらかった身体は羽根のように軽い。
「ん、治った。良かった」
相手の困惑など意にも介さず満足げな少女に、いまだ後ろを向いたままのドンが納得いったようないかないような声をひねり出す。
「さすが掟破りの『破壊僧』……こうも一気に治療されたんじゃ、回復アイテムの立場がねぇ」
いまだ衝撃冷めやらぬのか、炭色の髪から覗く耳まで真っ赤なドンに向かって、訳の分からぬスタームが疑問を投げかける。
「破壊僧? この女の子がですか? っていうか僕はなんでいきなり回復してるんですか?」
「お前もキュアブラッド教マニアなら、純血統が行う回復術の大まかな原理は理解してるですね?」
が、それに答えたのはデータ・Kの幼い声だった。
僧侶は己の中に有る魔力を操り、回復術を行う。
フィブロ山にいるのなら、神気を利用する事も出来る。
ところが、キュアブラッド教開祖の血を引く純血統はそれとはやや一線を画する。
彼らは神から授かった神気を、己の血の中に宿すのだ。
ゆえに純血統が回復術を使う時は、魔力を増幅するための呪文や媒体となる杖を必要としない。
患部に血をかけるか、それでなくとも血の通った肉体を触れさせるだけでいいのだ。
「詠唱も必要ねーんですから元々チートみたいな回復術なのに、更に時間短縮できないか? って考えて、こいつが考えた結論が『殴る』事なのです」
人間が最も集中する時はいつか。
それは、攻撃する時である。
拳に神気を集め、衝撃波のごとく触れた患部に対して放てば、無駄なく神気が浸透するのではないか、彼女はそう考えたのだ。
とどめを刺しているようにしか見えないその回復方法は、同業者でさえ目を見張る効率と実績を誇っているらしい。
理論は分かった。
効果もいましがた目の当たりにした。
だがそれでも、納得できないことはこの世にたくさんあるのだ。
「絶対間違ってる、こんなの……『癒し』って言葉の意味を知らないのか……?」
ふかふかのベッド然り、白衣の天使然り。
患者は怪我を治して欲しいだけじゃない、もっと清らかで安らぎのある心の安住地を求めているはずなのに。
タイマン勝負と僧侶という、自分の中でもっともかけ離れた言葉が重なろうとしていて、スタームは踏みしめている大地が傾くのを感じた。
しかしそれよりももっと信じられないのは。
「キュアブラッドの純血統。この人が?」
「そうですよ。お前もさっき情報板で顔写真見たです」
神様どうかこの人が予想通りの立場の人じゃありませんようにってか分かってますよそんなお願い聞き入れられない、だって向こうは神に回復術授けられた子孫なんだもん、そりゃ向こう贔屓するに決まってるよ!
「キナー! 無事だったんだね、良かった!」
意味をなさない言葉を羅列することで平静を図ろうとしたが、着替え終わったのを確認して飛び出してきたニトアの言葉でそれすら無駄となった。
「キナー=キュアブラッド。
お前を殴って回復させたのが、チームFの僧侶です」
スタームとて分かっている。
自分が思い描く理想など、手の届かない遥か高みにあることくらい。
だがしかし、現実には失敗例が多すぎやしないだろうか。
いよいよ世界に視点を向けるような議題で少年が頭を悩ませ始めている間も、時間と話は容赦なく進められていった。
「連絡しても向こうの人が取り次いでくれなくて、心配してたんだよ」
「山に引きこもって何してたですか」
「えー……修行、的な」
的なってなんだ。自分がやってたことなのになんでそんな抽象的なんだ。
一言一句に苛立ちを覚えるほど、もはやスタームは彼女の事を魂レベルで好きになれない気すらしてきた。
「心配はいらないんで、帰って」
「そーはいかねぇですよ。お前はチームFの僧侶として馬車馬のごとく働いてもらう予定なのです」
「へぇ。・・・・・・誰?」
「疑問を抱くのが遅いのです!」
数分、データKの説明。
状況を理解して肯いたキナーに、畳みかけるようにドンが迫る。
「そういう訳でよ、お前が参加してくれなきゃあ予算がマイナスになっちまう。
修行だかしんねぇが早いとこ切り上げてチームFの方へ戻ってくれよ」
あぐらをかいて説明を受けていた銀髪が、ぐるりと揺れた。
眠そうな蒼い半目は会話の輪から外れていたスタームから端のカリウタまでを映し、ニトアへと戻る。
「モンスター。ここに来るまでに結構遭ったでしょ」
「え? うん、そうだね」
「倒せた?」
「うん、一応……」
モンスターとはいえフィブロ山の中腹にも辿り付けていない現状、強敵など出るはずもなく。
少なくとも今まで出現したそれらはニトアの魔法やカリウタの一撃であっけなく倒れる程度の雑魚であった。
質問の意図が分からず語尾が細くなるニトアに対し、期待した回答でなかったキナーが、中空を見つめて考える。
少し皺の寄った眉間は再び地上に戻り、その先には勇者見習いの少年。
「そこの少年は、ニトア達をまとめられてたの?」
今度の質問は、全員が言葉に詰まるものだった。
スタームは頑張っていた。
初対面の先輩達に対し、チームワークを作ろうと懸命に動いていた。
が、それは質問の答えではない。
まとめられていたかと問われれば、それには否と返すしかなかった。
「で、でも、それはぼくの補助魔法のせいで」
「そうだぜ、こいつだって慣れてけばそれなりにこなれてくるって!
ただ今日は初めてだから仕方ないっつーか」
「その『慣れていった人』を、いつまで待ってるつもり?」
フォローに回ろうとしたドンとニトアを黙らせるには、十分な言葉だった。
自分の力をフルに発揮させてくれる理想の勇者が現れない年月は、言い換えてしまえば。
発揮できない、加減できない、操れない。
自分自身の問題じゃないのかと尖った言葉が責めてくる。
「ニトア達をまとめきれないなら、わたしはまだ戻らないよ。……っていうか」
その台詞をどの立場で言っているのか、彼女の詳細をよく知らないスタームには分からない。
ただ、彼女が立ちあがって身体についた木の葉をはらって、チームFのメンバーに向かって言った言葉は、
「視線が地べたを這いずったままの君らが、わたしの人生に必要とは思えない」
無情の色を帯びていた。
逸らしもしない、丸く深い蒼が綺麗だ。
きっかけだけが原因ではない。
積み重なっていたそれの重みに耐えかね、何かがプチンと切れた音を、スタームは静かに聞いていた。
「ス、スターム君?」
脈絡もなく突然立ちあがった少年に、ニトアが戸惑いの言葉を掛ける。
だが、混乱するポメラニアンをなだめるほどの余裕は、スタームにはなかった。
「キナーさん。一つ聞きたいことがあるんですが、いいですか」
彼女と同じように尻の土を払い、真正面に立つ蒼の瞳を睨む。
剣呑なそれに臆することもなく、蒼はただ次の言葉を聞こうと佇んでいた。
「さっき僕が見てしまったその本……なんのために持ってたんですか?」
指をさしたそれは、服のかかっていた木の根元に置かれていた。
汚れないよう、木の葉の上にそっと。
意図の分からない質問だったにも関わらず、キナーは眉ひとつ動かさず答えた。
「補給用」
たった一言だった。
だが、スタームには分かった。
似て非なる体質だからこそ分かってしまった。
自分の属性と腐った方々がしばしば混同されがちな原因がそこにあった。
それはエネルギーだ。
生きていくにあたってなくてはならない活動の原動力だ。
それがあるからこそ人は何かに突き動かされるように、時に激しく、時に穏やかに偉業を成す事ができるのだ。
伝説の勇者について綴った古書や、チームワークの攻略本なら分かる。
むしろ眼を輝かせて握手を求めただろう。
しかし根本的に理解できない物で同じ原動力を作り出しているという中途半端な同調が、スタームの箍を外してしまった。
要するに、この女は男と男が絡むようなエロ本で萌えを感じているのだ。
「ふざけんなぁああああああぁあああああ!」
数瞬のち、慟哭。
山全体に轟こうかという叫びは、少年が今日一日に感じた事を如実に語っていた。
「何が補給用だ、何が慣れればそれなりにこなれてくるだ! 人を馬鹿にするのもいい加減にしろ!」
きっと自分はこれからひどい事を言う。
それでも走り出した奔流は止まらなかった。
「自分は戦えるのに戦わない商人!
魔法を使えば味方を攻撃する魔法使い!
こんな奴ら相手にどう慣れたら戦えるってんだ、ええ!」
崖っぷちにいるにも関わらず後輩に状態異常魔法をかけまくり、心配した友人には罵倒され、訳も分からず涙をにじませるニトア。
さして動揺もせず、聞きあきたとばかりに三白眼を細めるドン。
再会してから一度も言葉を発していないカリウタは、鋭い目線をキナーに向けている。
「極めつけは癒しのいの字も知らない腐れ僧侶か!
ちゃんと制服を着ろ、修行にかこつけて学校休むな、ふざけた本を読むのを止めろ!
回復効率だかなんだか知らないが治療で人を殴るな!
なんなんだお前は、僕の理想をぶち壊しにやってきたモンスターか!
なんでお前みたいなのがキュアブラッドの純血統なんだ!」
直線だった眉がわずかに動いた。真正面の開きかけた口を制するために、スタームはまた息を吸う。
「僕はお前なんか大っきらいだ!」
どうせ耳を傾けたところで、魂レベルで苛つくような事しか言わないのだ、こいつは。
「ただの勇者見習いですよ、二年に進級したばっかりなんですよ!
いきなり留年組の面倒を見ろって、僕が一体何をしたって言うんだ!」
気が付けば高かった日はいつの間にかすっかり傾き、水色と紫のグラデーションが空を囲んでいた。
夕陽と同じ色の髪を上下させて、スタームは息を吐いて、吸う。
住処へ帰る鳥がかすかに鳴いていた。
なきたいのはこっちだ。
「冗談じゃない……!」
叫び過ぎて口が引きつりかけているスタームは、嫌な事を思い出した。
フィブロ山の通行証は一つだ。
この空気のまま人を引き連れて帰らなければいけない。
ぬか喜んだり、喜んだり、期待はずれに肩を落としたり、終いにキレたりして。
総合的に見てチームFの出会い方は最悪だった。
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