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恋と忠誠の間で
5.今日の疲れは、俺の腕の中で
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パーティーとその後のバーでの時間を終え、ようやく解放された。
タクシーで送ってもらった帰り道、玄関を開けた瞬間にどっと疲れが押し寄せる。
「はぁー……疲れたぁ!」
遥は靴を脱ぎ散らかして、リビングのソファーにそのまま倒れ込む。
ネクタイを緩めてだらんと腕を投げ出す姿に、思わず笑ってしまった。
「お前、帰ってくるなりそれかよ」
「だって……今日一日緊張しっぱなしだったんだってば」
ぐったりした声で天井を見ながら、遥が弱音を吐く。
俺もジャケットを椅子にかけて、隣に腰を落とした。
ソファーに沈み込む感覚と、すぐ隣にいる遥の熱が心地いい。
「でも、ちゃんとやれてたじゃん」
「え?」
「プロデューサーたちとも普通に話してたし、英語だってすぐ返してたし。……俺、ちょっとびっくりした」
「なにそれ、褒めてんの?」
「当たり前。めっちゃ助かった」
そう言うと、遥が照れたみたいに小さく笑う。
「でもさ」
俺はわざとらしく体を傾けて、ソファーに横たわる遥に近づいた。
「お前、あの外国人とやり取りしてる時……俺のこと見ただろ?」
「えっ……だって、ちょっと不安だったし」
「ふーん。不安、ねぇ」
口の端が自然に上がる。思わず、遥の額を軽く指でつついた。
「なにすんだよ」
むっとした顔で俺を見上げてくる。
「可愛いってこと」
そのまま頬に触れる。少し冷たくなっていて、つい自分の体温を移すように撫でた。
「……拓実、やめろよな」
小さな声で抗議しながらも、逃げようとはしない。
「やめない」
わざと低い声で囁いて、額に軽く唇を触れさせる。
「ちょ、近いって……」
焦ったように身じろぎする遥をソファーに軽く押さえ込む。
「俺のことチラチラ見て、緊張してたくせに」
「そんなに見てねえよ!」
「嘘。さっきもバーで、俺のこと見てただろ」
遥は完全に言葉に詰まって視線を逸らす。
それがまた、たまらなく可愛くて。
「ほらな」
笑いながら、今度は首筋に軽くキスを落とす。
「ひゃっ……!」
小さく肩をすくめて声を上げる遥。
「なにその声。……もっと聞きたい」
「バカ……っ」
その反応が楽しくて、つい頬や耳に何度もキスを散らす。
「もう、疲れてんのに……」
小さく笑いながら抗議する声も、頬を赤らめる仕草も、全部愛おしい。
「いいじゃん。疲れ取れるかもしんねえし」
「そんなわけ……」
言いかけて視線を伏せる。その照れ隠しの横顔を見ながら、胸の奥がじんわり温かくなる。
――なのに、ふと脳裏をよぎる。
さっきバーで、遥に向けられていた田中の目。そして、意味深に笑っていた華園社長。
気づけば、遥を抱き寄せる腕に力がこもっていた。
「拓実?」
不思議そうに俺を見上げる遥。
「……いや、なんでもない」
首を振り、強引に笑みを作る。
せっかく二人きりの時間なのに――あの二人の顔が浮かぶのが、妙に気に入らなかった。
「……シャワー浴びてくる」
起き上がった遥は、視線を逸らしたまま立ち上がる。
「おい、逃げんなよ」
「逃げてねぇし。ただ汗かいたし……」
「俺だって汗かいてんのに」
俺がじとっと睨むと、遥はタオルを手にしてそそくさとバスルームへ向かう。
「一緒に入るとか言わねぇよな?」
「言わねぇよ。でも……俺はその方がいいけどな」
「バカか」
振り返りざま、ちょっとだけ視線が合った。
「……後で、ちゃんと相手すっから」
小声で言い捨てるようにして、すぐにドアの向こうへ消えていく。
バスルームのドアが閉まる音が妙に響いて、俺は思わず苦笑した。
ソファーに背を預けて息を吐き、スマホを手に取る。
画面には、華園社長からのメッセージ通知が光っていた。
――“今夜は楽しかったわ。またゆっくりお話ししましょう”
「……はぁ」
眉がわずかに動き、指先でスクリーンをなぞりかけて、やめる。
既読はつけずに、画面を伏せてテーブルへ置いた。
しばらくして、バスルームのドアが開く。
濡れた髪をタオルで拭きながら、白いTシャツ姿の遥が戻ってきた。
頬がほんのり赤く、シャンプーの匂いが漂う。
「……何してんの? そんな顔して」
不思議そうに首をかしげられ、俺はそっぽを向いた。
「だって、お前……逃げただろ」
遥が苦笑しながら隣に腰を下ろす。
その瞬間、体温と匂いが一気に近づき、余計に拗ねた気持ちが膨らむ。
「……逃げてねえし。ただ、顔熱くなって……恥ずかしかっただけ」
その一言で、胸の奥がほどけていく。
「なら、ちゃんとこっち来いよ」
「……はいはい」
渋々みたいに言いながら、遥が俺の肩に体を預ける。
「やっぱり遥は可愛い」
「……言うなって」
軽い体温が伝わってきて、思わず笑ってしまった。
スマホに残る華園のメッセージなんて、どうでもよくなる。
――俺が欲しいのは、目の前のこいつだけだ。
タクシーで送ってもらった帰り道、玄関を開けた瞬間にどっと疲れが押し寄せる。
「はぁー……疲れたぁ!」
遥は靴を脱ぎ散らかして、リビングのソファーにそのまま倒れ込む。
ネクタイを緩めてだらんと腕を投げ出す姿に、思わず笑ってしまった。
「お前、帰ってくるなりそれかよ」
「だって……今日一日緊張しっぱなしだったんだってば」
ぐったりした声で天井を見ながら、遥が弱音を吐く。
俺もジャケットを椅子にかけて、隣に腰を落とした。
ソファーに沈み込む感覚と、すぐ隣にいる遥の熱が心地いい。
「でも、ちゃんとやれてたじゃん」
「え?」
「プロデューサーたちとも普通に話してたし、英語だってすぐ返してたし。……俺、ちょっとびっくりした」
「なにそれ、褒めてんの?」
「当たり前。めっちゃ助かった」
そう言うと、遥が照れたみたいに小さく笑う。
「でもさ」
俺はわざとらしく体を傾けて、ソファーに横たわる遥に近づいた。
「お前、あの外国人とやり取りしてる時……俺のこと見ただろ?」
「えっ……だって、ちょっと不安だったし」
「ふーん。不安、ねぇ」
口の端が自然に上がる。思わず、遥の額を軽く指でつついた。
「なにすんだよ」
むっとした顔で俺を見上げてくる。
「可愛いってこと」
そのまま頬に触れる。少し冷たくなっていて、つい自分の体温を移すように撫でた。
「……拓実、やめろよな」
小さな声で抗議しながらも、逃げようとはしない。
「やめない」
わざと低い声で囁いて、額に軽く唇を触れさせる。
「ちょ、近いって……」
焦ったように身じろぎする遥をソファーに軽く押さえ込む。
「俺のことチラチラ見て、緊張してたくせに」
「そんなに見てねえよ!」
「嘘。さっきもバーで、俺のこと見てただろ」
遥は完全に言葉に詰まって視線を逸らす。
それがまた、たまらなく可愛くて。
「ほらな」
笑いながら、今度は首筋に軽くキスを落とす。
「ひゃっ……!」
小さく肩をすくめて声を上げる遥。
「なにその声。……もっと聞きたい」
「バカ……っ」
その反応が楽しくて、つい頬や耳に何度もキスを散らす。
「もう、疲れてんのに……」
小さく笑いながら抗議する声も、頬を赤らめる仕草も、全部愛おしい。
「いいじゃん。疲れ取れるかもしんねえし」
「そんなわけ……」
言いかけて視線を伏せる。その照れ隠しの横顔を見ながら、胸の奥がじんわり温かくなる。
――なのに、ふと脳裏をよぎる。
さっきバーで、遥に向けられていた田中の目。そして、意味深に笑っていた華園社長。
気づけば、遥を抱き寄せる腕に力がこもっていた。
「拓実?」
不思議そうに俺を見上げる遥。
「……いや、なんでもない」
首を振り、強引に笑みを作る。
せっかく二人きりの時間なのに――あの二人の顔が浮かぶのが、妙に気に入らなかった。
「……シャワー浴びてくる」
起き上がった遥は、視線を逸らしたまま立ち上がる。
「おい、逃げんなよ」
「逃げてねぇし。ただ汗かいたし……」
「俺だって汗かいてんのに」
俺がじとっと睨むと、遥はタオルを手にしてそそくさとバスルームへ向かう。
「一緒に入るとか言わねぇよな?」
「言わねぇよ。でも……俺はその方がいいけどな」
「バカか」
振り返りざま、ちょっとだけ視線が合った。
「……後で、ちゃんと相手すっから」
小声で言い捨てるようにして、すぐにドアの向こうへ消えていく。
バスルームのドアが閉まる音が妙に響いて、俺は思わず苦笑した。
ソファーに背を預けて息を吐き、スマホを手に取る。
画面には、華園社長からのメッセージ通知が光っていた。
――“今夜は楽しかったわ。またゆっくりお話ししましょう”
「……はぁ」
眉がわずかに動き、指先でスクリーンをなぞりかけて、やめる。
既読はつけずに、画面を伏せてテーブルへ置いた。
しばらくして、バスルームのドアが開く。
濡れた髪をタオルで拭きながら、白いTシャツ姿の遥が戻ってきた。
頬がほんのり赤く、シャンプーの匂いが漂う。
「……何してんの? そんな顔して」
不思議そうに首をかしげられ、俺はそっぽを向いた。
「だって、お前……逃げただろ」
遥が苦笑しながら隣に腰を下ろす。
その瞬間、体温と匂いが一気に近づき、余計に拗ねた気持ちが膨らむ。
「……逃げてねえし。ただ、顔熱くなって……恥ずかしかっただけ」
その一言で、胸の奥がほどけていく。
「なら、ちゃんとこっち来いよ」
「……はいはい」
渋々みたいに言いながら、遥が俺の肩に体を預ける。
「やっぱり遥は可愛い」
「……言うなって」
軽い体温が伝わってきて、思わず笑ってしまった。
スマホに残る華園のメッセージなんて、どうでもよくなる。
――俺が欲しいのは、目の前のこいつだけだ。
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