社長に拾われた貧困女子、契約なのに溺愛されてます―現代シンデレラの逆転劇―

砂原紗藍

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【第一章】運命の歯車

1.過去の残影と“唐揚げ弁当”(桐島柊也視点)

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俺は深夜の路地で、運命の再会を果たした。

3年前から探していた“あの子”。
車に戻り、シートに深く座る。

「……見つけた」
「社長、どうされました?」

秘書の葉山が、運転席から声をかけてくる。

「葉山。今すぐ調べてほしい人物がいる」
「はい」

さっき彼女が走り去る瞬間、視界の端に映ったキーホルダーを思い出す。
そこには、はっきりと名前が書かれていた。

『深月カヤ』
『メイドカフェ・Fairy Tale』

「深月カヤ。おそらく20代前半。メイドカフェで働いている」

葉山は、少しだけ驚いた顔をした。

「……社長、気になる人ができたんですね」

葉山の言葉に、俺は視線をそらすこともなく答えた。

「ああ」

否定する理由なんてない。
胸の奥に浮かんだのは、ずっと忘れられなかった“あの日”の光景。

――三年前。
俺は、駅のホームでただ立ち尽くしていた。

普段は車移動がほとんどで、慣れない路線に完全に迷ってしまったのだ。

「あの、すみません」

周囲の人に声をかけても誰も立ち止まってくれない。
このままだと、大事な会議の時間に間に合わない。

焦りと苛立ちだけが募っていく中、ふいに――
あの明るい声が、俺を救った。

「どちらに行かれるんですか?」

振り返ると、まだ十代であろう女の子が、息を弾ませながらも笑顔でこちらを見上げていた。

「……この住所なんですが――」
「あ、それならあっちの改札ですよ! 出たら左に曲がってまっすぐ。ポストがすぐ見えます!」

急いでいたのは明らかなのに、彼女は足を止めて丁寧に教えてくれた。

「ありがとうございます、本当に助かりました」
「いえ! よかったです!」

笑った次の瞬間。

「やばっ、遅刻する!」

彼女は自分の時計を見て、慌てて駆け出した。
その肩越しにきらり、と小さな光が落ちた。
床に転がったのは、彼女のヘアピン。

「待って!」

必死に呼びかけながら走ったが、人波に飲まれ、彼女の姿はあっという間に消えた。

ガラス細工だろうか。繊細で、透明感のある美しさ。
小さく「M.K」と刻まれている。

――俺は、ずっと彼女を探していた。

それから3年。

間違いない。
さっきのはあの時の子だ。
俺は、ダッシュボードから大切に保管していた、ガラスのヘアピンを取り出した。

M.Kというイニシャル。
ガラスのヘアピン。優しい笑顔。

3年間、ずっと持っていた。
いつか、返すために。
いや——
本当は、もう一度会いたかったんだ。
あの笑顔を、もう一度見たかった。



翌週、車の中で唐揚げ弁当を開けていた。

「深月カヤさんの調査結果です」

葉山が資料を差し出す。俺は無言で資料を受け取った。

――深月カヤ(21歳)
メイドカフェ『Fairy Tale』、お弁当屋『まんぷく亭』勤務。
両親は他界。継母と義姉がいるが、18歳で家を出て一人暮らし。

……ちょうど俺が出会った頃か。

一人暮らしでダブルワーク。
きっと、大変な生活をしているんだろう。

弁当の唐揚げを一つ口に運んだ。

「……美味い」

本当に美味い。彼女が作った料理。

「……で、社長。どうされます……?」
「普通の男として、まずは距離を縮めたい」

葉山は、小さく笑った。

「社長、本気ですね」
「ああ」

もし俺がCEOだと知ったら、彼女は距離を置くだろう。
3年間探していたんだ。絶対に逃したくない。

俺はダッシュボードのガラスのヘアピンを見つめた。

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