【完結】こじらせ半猫くんは、好きな人の前だけ可愛い―溺愛ダーリン×半猫化男子―

砂原紗藍

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【最終章】僕の世界は、あなたでできてる

最終話.一生分の愛を、ふたりで

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叔父さんが再び現れた。

「レンを連れて行くからな」

……まただ。
どうして、いつもこうなんだろう。

体が強張って声が出ない。
そんな僕の前に、カナトさんが静かに立った。

「もう弁護士に相談してる。あなたのやってることは、脅迫と誘拐未遂だ」

書類を差し出すカナトさんを見て、思考が一瞬止まった。

……そこまで、準備してくれてたの?

「それに、組織に情報を流してた件も調べてる。証拠もあるからな」
「な……」
「警察にも通報済みだ。もうすぐ来る」
「くそ……!」

叔父さんが逃げようとした瞬間、警察が現れる。

「動くな」

そのまま叔父さんは連れて行かれた。
呆然とする背中を、僕はただ見ていた。

……終わったんだ。
やっと。

気づいたら、カナトさんの腕の中だった。

「これで、もう安心だよ」

その一言で、張りつめていたものが一気にほどける。

「……ありがとう、カナトさん」
「礼なんていいよ。お前を守るのは、当たり前だから」

カナトさんが優しく笑った。
この人に、こんなに守られていいのかな。

「これから、新しい生活が始まる」
「うん」
「楽しみだね」
「……うん。すごく楽しみ」



――新しい家は、静かな住宅街にあった。
派手じゃない。でも、落ち着く場所。

こんなふうに普通に隣を歩いて。
普通に、同じ家に帰る。

なんだか夢みたいだ。

「レン、不安か?」
「ううん、不安じゃない。ただ……」
「ただ?」
「嬉しすぎて、実感が湧かないだけ」

自分で言って、少し照れた。
カナトさんは何も言わず、また俺を抱きしめる。
その腕が、あったかい。

――もう大丈夫。

逃げなくていい。怯えなくていい。
ここが、僕の居場所なんだ。

「カナトさん」
「ん?」
「愛してる」

言った瞬間、カナトさんの表情がぱっと明るくなる。

「俺も、愛してるよ」

その言葉を聞いて、僕はそのままカナトさんの胸に顔を埋めた。

「……夢みたい」
「夢じゃない。ちゃんと現実だよ」

そう言われて、ようやく実感が追いつく。

これから僕たちは一緒に暮らす。
同じ家で、同じ時間を生きていく。

それが、たまらなく嬉しかった。




引っ越しから一週間。

二人で選んだ家具が部屋に並んで、少しずつ“生活”の匂いがしてきた。

「レン、夕飯できたよ」

キッチンから聞こえる声に、自然と顔が緩む。

「今行く!」

テーブルには、湯気の立つ料理。
僕の好きな唐揚げ。

「わあ……美味しそう」
「レンの好物だからな」
「ありがとう、カナトさん」

向かい合って座る。
それだけで、心が落ち着く。

「いただきます」
「いただきます」
「……美味しい」
「よかった」

嬉しそうに笑う顔を見ると、胸の奥がぽかぽかしてくる。

「ねえ、カナトさん」
「ん?」
「こうやって、毎日一緒にご飯食べられるの……すごく嬉しい」
「俺もだよ」
「……ありがとう」
「何に?」
「僕を、守ってくれて」

カナトさんは何も言わず、ただ優しく微笑んだ。


――それから時は流れて、僕は大学を卒業した。
式が終わった会場の外で、カナトさんが待っていてくれた。

「レン、卒業おめでとう」

ぎゅっと抱きしめられて、少し照れる。

「ちょ、ちょっと……人がいるよ」
「いいだろ。今日は特別な日なんだから」
「うん」
「よく頑張ったな」
「……これから、もっと頑張る」
「ああ、一緒にね」

カナトさんが優しく笑う。
頭を撫でられて、自然と笑顔になった。

ふたりで暮らす毎日は、穏やかであたたかい。

「いってきます」
「いってらっしゃい」

それぞれ仕事に行って、夜にはまた同じ場所に帰る。

「今日どうだった?」
「まあまあかな。カナトさんは?」
「忙しかったけど、レンの顔見たら元気出た」
「……そういうこと、さらっと言わないで」

食後は、ソファで並んで座る。
カナトさんの手が猫耳を撫でる。

「んん……」
「レン、相変わらず可愛いな」
「可愛くない……」

否定しながらも、尻尾は嬉しそうに揺れていた。 

「レン」
「なに?」
「最近、不安そうにすること減ったな」
「そうかな」
「ああ。前は、よく『置いてかないで』って言ってた」
「……うん。カナトさんがいてくれるから、大丈夫って思えるようになった」
「そうか。俺はずっと隣にいるよ。絶対に離れない」

カナトさんが僕の顔を両手で包んだ。

尻尾がゆらゆらと揺れる。
幸せの証。


あの日、雨の中で秘密を知られたとき。
最初は怖かった。拒絶されるかもしれないって。

でも、カナトさんは受け入れてくれた。

優しくて温かくて。
不安定な僕も、弱い僕も、全部まとめて愛してくれた。

「おやすみ、レン」
「おやすみ、カナトさん」

明日も、カナトさんと一緒。

これからも、ずっと一緒。



End.

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