【完結】俺の教育係は、甘くて意地悪なエリート【α】――未熟御曹司【Ω】の恋レッスン

砂原紗藍

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【第二章】距離が縮まる日々

6.Ωの傍で、αの想い

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side 桐生冬馬

家に帰り、買った服を律の部屋に運ぶ。

「荷物、置いといたぞ」
「……ありがと」

淡々とした返事。
だが、ちらりと俺を見てすぐそらすその仕草に、思わず笑みが浮かぶ。

「今日は買い物、楽しめたか?」
「……普通」
「普通か。……でもお前、ちょっと顔赤いんじゃないか?」

言葉に出さずとも、律の耳先がかすかに熱を帯びているのがわかる。

「……そんなことない」
「そうか。じゃあ、夕飯までゆっくりしてろ」
「……わかった」

俺は軽く笑みを返して、部屋を出る。
自分の部屋に戻ると、大きく息を吐く。

今日も、律と楽しい時間を過ごせた。笑顔も見られた。
でも、この気持ちをいつまで抑えられるだろうか――。

律のことが好きだ。もう認めている。
でも、言えない。
教育係としての立場、律の親父さんからの信頼。
それを裏切ることはできない。

「……どうすればいい」

呟いたところで、答えは出ない。
ちょうどその時、ドアがノックされた。

「冬馬、入るぞ」

誠の声だ。

「ああ」

誠が部屋に入ってくると、真剣な目で俺を見た。

「律、今日も楽しそうだったな」
「ああ」
「お前のおかげだ」
「……そうかな」
「うん。律、本当に変わった。前より明るくなったよな」

誠がソファに座る。

「冬馬、お前もそう思うだろ?」
「……ああ」

確かに、律は変わった。
最初会ったときは反発ばかりだった。でも今は、素直に笑うことが増えた。

「冬馬」
「なんだよ」
「お前、律のこと本気で好きなんだな」

……またこの話か。

「ああ。好きだ」

言葉に出すと、少しだけ胸の奥が熱くなる。誠が少し驚いたような顔をした。

「認めたか」
「ああ。でも……言えない。俺は律の教育係だ」
「それは、言い訳だろ」

誠の声には力があった。

「お前は、自分の立場を盾にして、律への気持ちから逃げてる」

その言葉が、胸に深く刺さる。

「冬馬、律も同じだぞ」

誠は言葉を続ける。

「律も、お前のことが好きだ。でも、立場を気にして言えないでいる」

律が、俺を意識していること。
微かに香るフェロモン、ヒート前の揺らぎ。
嬉しい。でも同時に、苦しい。

「……俺は――どうすればいい」

問いかけるように呟くと、誠は少しだけ優しく微笑んだ。

「お前はどうしたいんだ? このまま、律への気持ちを隠し続けるのか?」
「……」
「それとも、ちゃんと向き合うのか?」

向き合う――それが正しいのはわかっている。

「でも、律の父さんに、何て言えばいい」
「それは、これから考えればいいだろ。律も、お前の答えを待ってる」

そう言って誠は出て行った。

部屋に一人残り、窓の外を見た。
夕暮れが夜に変わろうとしている。
律への気持ちに、向き合う時が来たのかもしれない。



――翌朝、律の部屋の前に立つと、妙な静けさを感じた。

いつもなら、ノックをすれば小さく返事が返ってくるはずなのに、今日はない。

「律、起きろ」

扉越しに声をかけても反応はない。
胸の奥がざわつく。嫌な予感がする。

もう一度強めて叩く。

「律?」

反応がないままの静寂が、不安を煽る。

「……入るぞ」

ドアを開けた瞬間、空気が甘く揺れた。

――これは、まずい。


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