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煌めくシュガーグラス―光と影のコントラスト―
4.夜の帳に、あなたの声だけが響く
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マンションに戻ると、リビングのテーブルに資料が広げられていた。
「環、少し手伝ってもらえますか」
「何を?」
透さんはノートパソコンを開き、画面をこちらに向ける。
そこには、ヴィノテークの情報がずらりと並んでいた。
「桐谷さんについて、もう少し調べたいんです。取引記録や西条との契約内容――表に出ている情報だけでも、何か掴めるかもしれません」
俺も隣に座り、画面を覗き込む。
透さんの指が、キーボードを滑るように叩いていく。
「……あった」
透さんが画面を止めた。
「来週、西条が大口の取引でヴィノテークを訪れる予定です」
「えっ、そうなの?!」
透さんの真剣な瞳が、じっとこちらを捉えた。
「もう一度、桐谷さんに会いに行きましょう」
*
翌日、再びヴィノテーク。
「また来てしまって、すみません」
透さんが丁寧に頭を下げる。
カウンターの向こうで桐谷さんは少し驚いた表情を見せたが、やがて苦笑する。
「……執念深いですね」
「ええ。それが仕事ですから」
透さんは真っ直ぐ桐谷さんを見つめ、低く静かな声で告げる。
「桐谷さん、来週西条が来店される予定ですね」
桐谷さんの表情が、一瞬強張った。
「……どうして、それを?」
「調べました」
透さんは言葉を切らずに続ける。
「その場に、俺たちを立ち会わせてください」
桐谷さんは息を呑む。
「さすがにそれは……」
透さんは一歩、静かに前へ出た。
「店のバックヤードからの観察のみで結構です。絶対に姿は見せません」
俺はそこで、透さんの言葉を引き取った。
「桐谷さん。西条の本性を、あなたの目で確かめてください」
店の空気が、少しだけ揺れた。
透さんの声が静かに重なる。
「もし俺たちが間違っていたなら、謝罪します。二度とあなたの前に現れません」
長い沈黙。
カウンターの上のワイングラスが、わずかに光を反射している。
やがて、桐谷さんは小さく息をつき、ゆっくりと頷いた。
「……わかりました」
顔を上げたその目には、迷いと決意が入り混じっていた。
「ありがとうございます」
透さんは深く頭を下げ、俺も慌てて頭を下げた。
外に出た瞬間、張りつめていた空気がふっと解ける。
夜風が冷たくて、けれど少しだけ気持ちよかった。
――帰りの車内。
窓の外を流れる街の灯が、まるで星のように遠く瞬いている。
「……透さん」
「はい?」
「本当に、うまくいくのかな」
透さんはハンドルを握ったまま、信号で車を止めた。
ゆっくりとこちらに視線を向け、穏やかに言う。
「わかりません」
その言葉に、思わず息をのむ。
完璧な人だと思っていたのに――こんな風に正直に言われると、なぜか安心した。
「でも、環の一言が桐谷さんを動かしたのも事実です」
彼の口元が、わずかに緩む。
「やらなければ、何も変わらない」
その言葉が、胸に深く落ちた。
そして、透さんの手がそっと俺の手に触れる。
柔らかく、確かに包み込む温度。
鼓動が一瞬で跳ね上がり、息が詰まる。
「……透さん」
「ん?」
「……俺は、信じる」
透さんは何も言わず、ただ静かに手を握ってくれた。
指先から伝わる温もりが、少しずつ不安を溶かしていく。
視線を前に戻すと、夜の街が、さっきよりも少しだけ優しく見えた。
「環、少し手伝ってもらえますか」
「何を?」
透さんはノートパソコンを開き、画面をこちらに向ける。
そこには、ヴィノテークの情報がずらりと並んでいた。
「桐谷さんについて、もう少し調べたいんです。取引記録や西条との契約内容――表に出ている情報だけでも、何か掴めるかもしれません」
俺も隣に座り、画面を覗き込む。
透さんの指が、キーボードを滑るように叩いていく。
「……あった」
透さんが画面を止めた。
「来週、西条が大口の取引でヴィノテークを訪れる予定です」
「えっ、そうなの?!」
透さんの真剣な瞳が、じっとこちらを捉えた。
「もう一度、桐谷さんに会いに行きましょう」
*
翌日、再びヴィノテーク。
「また来てしまって、すみません」
透さんが丁寧に頭を下げる。
カウンターの向こうで桐谷さんは少し驚いた表情を見せたが、やがて苦笑する。
「……執念深いですね」
「ええ。それが仕事ですから」
透さんは真っ直ぐ桐谷さんを見つめ、低く静かな声で告げる。
「桐谷さん、来週西条が来店される予定ですね」
桐谷さんの表情が、一瞬強張った。
「……どうして、それを?」
「調べました」
透さんは言葉を切らずに続ける。
「その場に、俺たちを立ち会わせてください」
桐谷さんは息を呑む。
「さすがにそれは……」
透さんは一歩、静かに前へ出た。
「店のバックヤードからの観察のみで結構です。絶対に姿は見せません」
俺はそこで、透さんの言葉を引き取った。
「桐谷さん。西条の本性を、あなたの目で確かめてください」
店の空気が、少しだけ揺れた。
透さんの声が静かに重なる。
「もし俺たちが間違っていたなら、謝罪します。二度とあなたの前に現れません」
長い沈黙。
カウンターの上のワイングラスが、わずかに光を反射している。
やがて、桐谷さんは小さく息をつき、ゆっくりと頷いた。
「……わかりました」
顔を上げたその目には、迷いと決意が入り混じっていた。
「ありがとうございます」
透さんは深く頭を下げ、俺も慌てて頭を下げた。
外に出た瞬間、張りつめていた空気がふっと解ける。
夜風が冷たくて、けれど少しだけ気持ちよかった。
――帰りの車内。
窓の外を流れる街の灯が、まるで星のように遠く瞬いている。
「……透さん」
「はい?」
「本当に、うまくいくのかな」
透さんはハンドルを握ったまま、信号で車を止めた。
ゆっくりとこちらに視線を向け、穏やかに言う。
「わかりません」
その言葉に、思わず息をのむ。
完璧な人だと思っていたのに――こんな風に正直に言われると、なぜか安心した。
「でも、環の一言が桐谷さんを動かしたのも事実です」
彼の口元が、わずかに緩む。
「やらなければ、何も変わらない」
その言葉が、胸に深く落ちた。
そして、透さんの手がそっと俺の手に触れる。
柔らかく、確かに包み込む温度。
鼓動が一瞬で跳ね上がり、息が詰まる。
「……透さん」
「ん?」
「……俺は、信じる」
透さんは何も言わず、ただ静かに手を握ってくれた。
指先から伝わる温もりが、少しずつ不安を溶かしていく。
視線を前に戻すと、夜の街が、さっきよりも少しだけ優しく見えた。
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