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フランベ・ルミエール―始まりの炎―
4.嘘と真実のドレスコード
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side 花村 環
数日後。
朝食を終えると、透さんはパソコンを開き、静かに言った。
「今日は、少しリスキーな作戦に出ます」
「え……? リスキーって……」
思わず声が震える。
その視線の先に、透さんは落ち着いたまま画面を向けている。
「西条のレストランで開かれるパーティーに、行ってもらいます」
その一言で、頭の中が一瞬で真っ白になった。
「……パーティーに……行くって? え、ちょっと待って、俺が?」
混乱が一気に押し寄せて、思わず声が裏返る。
「いやいやいや、無理だよ! そんな場に紛れ込めるわけ……!」
「大丈夫です」
透さんは少し笑いながら、画面越しに静かに説明を続ける。
「潜り込むわけではありませんよ。拓実さんが正式に招待されています。ですから、あなたも俺も“同行者”として、すでに招待リストに載っています」
「……え? 本当に?」
「本当です。堂々と参加できます」
優しいけれど芯のある声でそう言われ、ようやく呼吸が戻る。
「そう……なんだ……」
透さんの目が急に真剣になる。
「あなたには、俺の恋人役をお願いしたい」
「こ、恋人……?」
思わず声が震えて、どんどん頬が熱くなる。
「ええ。恋人として参加していただきます」
透さんが椅子から立ち上がり、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。
差し出された手が、自然な流れで腰に触れた瞬間――体が硬直した。
「ちょっ……!」
「慣れておいてください。本番で緊張して固まったら、すぐバレますから」
透さんは、からかうように、けれど優しく笑った。
俺は観念して、小さく息を吐く。
「……わかったよ」
透さんは満足そうに微笑み、頭をそっと撫でた。
*
夕方。準備の時間。
透さんは黒のスーツに袖を通し、ネクタイをきっちり締める。
俺も、用意されたジャケットとスラックスに着替える。
「似合っていますよ」
振り返ると、透さんが真剣な目でこちらを見ていた。
「本当に綺麗な顔をしてますね」
「……そういうの、照れるからやめて」
思わず鏡に視線を向けたけれど、透さんは逃がしてくれなかった。
そっと近づき、俺の首元に手を伸ばす。
ネクタイを回され、指が喉元に触れた瞬間、息が少し乱れた。
透さんは黙ったまま、ゆっくりと結び目を作り上げた。
指先の動きがやけに丁寧で、心臓が落ち着かない。
最後に軽く形を整え、肩に手を置かれた。
「今夜は、俺の恋人として振る舞ってください」
声が低くて静かで、耳の奥まで染みた。
「自然に、俺を見つめていればいい。それだけで恋人に見えます」
耳元で囁かれた言葉に、胸が高鳴る。
――透さんのそばにいると、どうしてこんなにドキドキするんだろう。
“任務”だと頭では理解している。
でも、透さんに触れられると、身体の反応だけ勝手に進んでしまう。
深呼吸をひとつ。
透さんの温もりを感じながら、俺は覚悟を決めた。
「……よし、やろう」
今日のパーティーで何が起きるか、全く想像がつかない。
でも、透さんと一緒なら、乗り越えられる――そう信じていた。
数日後。
朝食を終えると、透さんはパソコンを開き、静かに言った。
「今日は、少しリスキーな作戦に出ます」
「え……? リスキーって……」
思わず声が震える。
その視線の先に、透さんは落ち着いたまま画面を向けている。
「西条のレストランで開かれるパーティーに、行ってもらいます」
その一言で、頭の中が一瞬で真っ白になった。
「……パーティーに……行くって? え、ちょっと待って、俺が?」
混乱が一気に押し寄せて、思わず声が裏返る。
「いやいやいや、無理だよ! そんな場に紛れ込めるわけ……!」
「大丈夫です」
透さんは少し笑いながら、画面越しに静かに説明を続ける。
「潜り込むわけではありませんよ。拓実さんが正式に招待されています。ですから、あなたも俺も“同行者”として、すでに招待リストに載っています」
「……え? 本当に?」
「本当です。堂々と参加できます」
優しいけれど芯のある声でそう言われ、ようやく呼吸が戻る。
「そう……なんだ……」
透さんの目が急に真剣になる。
「あなたには、俺の恋人役をお願いしたい」
「こ、恋人……?」
思わず声が震えて、どんどん頬が熱くなる。
「ええ。恋人として参加していただきます」
透さんが椅子から立ち上がり、ゆっくりとこちらへ歩いてくる。
差し出された手が、自然な流れで腰に触れた瞬間――体が硬直した。
「ちょっ……!」
「慣れておいてください。本番で緊張して固まったら、すぐバレますから」
透さんは、からかうように、けれど優しく笑った。
俺は観念して、小さく息を吐く。
「……わかったよ」
透さんは満足そうに微笑み、頭をそっと撫でた。
*
夕方。準備の時間。
透さんは黒のスーツに袖を通し、ネクタイをきっちり締める。
俺も、用意されたジャケットとスラックスに着替える。
「似合っていますよ」
振り返ると、透さんが真剣な目でこちらを見ていた。
「本当に綺麗な顔をしてますね」
「……そういうの、照れるからやめて」
思わず鏡に視線を向けたけれど、透さんは逃がしてくれなかった。
そっと近づき、俺の首元に手を伸ばす。
ネクタイを回され、指が喉元に触れた瞬間、息が少し乱れた。
透さんは黙ったまま、ゆっくりと結び目を作り上げた。
指先の動きがやけに丁寧で、心臓が落ち着かない。
最後に軽く形を整え、肩に手を置かれた。
「今夜は、俺の恋人として振る舞ってください」
声が低くて静かで、耳の奥まで染みた。
「自然に、俺を見つめていればいい。それだけで恋人に見えます」
耳元で囁かれた言葉に、胸が高鳴る。
――透さんのそばにいると、どうしてこんなにドキドキするんだろう。
“任務”だと頭では理解している。
でも、透さんに触れられると、身体の反応だけ勝手に進んでしまう。
深呼吸をひとつ。
透さんの温もりを感じながら、俺は覚悟を決めた。
「……よし、やろう」
今日のパーティーで何が起きるか、全く想像がつかない。
でも、透さんと一緒なら、乗り越えられる――そう信じていた。
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