KAKERA

花岡橘

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プロローグ

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 ――― いつも見る夢の中、少女は少女ではない存在であった。そしてもう一人の誰かと一緒にいるらしかった。毎回、同じ場面、同じ台詞が繰り返される。

「いいか? これから話す事はお前達にとって大切な事だから、よく聞けよ」

「この世界に存在する物質には全て≪KAKERA≫が宿っている。例えば鉛筆一本。元は木と黒鉛に粘土を混ぜた物で出来ているが、木は種子の頃から≪KAKERA≫を宿して生まれ出てくる。その芯は黒鉛に粘土を混ぜて出来ているが、土の中に粒子の形で存在する時からやはり≪KAKERA≫を宿している。そうして塗料やら何やら含めて鉛筆一本出来上がった時には、それぞれに宿していた≪KAKERA≫も融合して一つの物となるわけだ。自然物質というものは全て存在した時からこの≪KAKERA≫を宿しているんだ。人工的に造り出したとしても元は自然の中にあった物から出来ているだろ? 人間でも動物でもどんな物でも≪KAKERA≫を宿して存在しているってことだ」

「ところでこの≪KAKERA≫、普通の人間の眼にはちっとも映る事が無い。故にさわる事も出来無い。だが、時々それが見れる・さわれる奴らがいる。見れる分にはキラキラして綺麗だとか、どす黒くてもやっとしてこんなもん持っている奴は一体どんな何をこれからやらかすんだ? とかそんな事を考えていりゃあ良いだけだ。だがな、さわれるっていうのはやっかいだったんだ。それを取り出しちまえるからだ。取り出しちまうとどうなるか……時々分からなくってやっちまう奴がいる。それは悲惨な状態さ、人間だったらまだ心臓は動いているのに身体は爛れる様にドロドロ、まるでゾンビのようになっちまう。物であれば歪んで、使えるのかこれ? 状態だ。だから決してそれには触れてはいけないんだ。だから見える奴らはきちんと訓練する。何かに触れても≪KAKERA≫には触れないように……。おい、話聞いているか? おい……」

それは、とても大切な事のようでそうでも無いような目が覚めてしまえば忘れるくらい曖昧な、そんな夢であった ―――
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