おれがヒロイン!?無理です、逃げていいですか!

たなぱ

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幼少期編

プロローグという悲劇

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あなたには大切な人がいるだろうか?



おれにはいた、大切な人が
目に入れても痛くない訳は無いけど、入れたくなるほど可愛い可愛い…性格だけじゃなく見た目まで物理的に可愛い妹がいた


そんな可愛い可愛い妹の名前は愛里
両親や祖父母、親戚、ご近所さん…もちろんおれからも愛され、しかし決して自分は愛されてるー!と無駄に自意識過剰や生意気になること無く、知的で誰にでも優しく、慈愛の心に溢れた最高の妹だった

おれは可愛い妹を守るんだ!と兄いうポジションを気に入り幼い頃からずっと考えていたと思う


おれは愛里(あいり)の双子の兄、愛斗(まなと)
双子だがそこそこ顔面は似てない…二卵性双生児と言うやつだ
本気でモデル並みに可愛い愛里に比べておれはどちらかというと平凡フェイスだった
身長だけは当に双子で…後ろ姿だけ恐ろしく似てるね!と、そんな話を真に受け、わざと似たような髪型で…似たような部屋着を好んで着ていたおれたち…周囲に後ろ姿で間違い探しされるくらい、正面はそんなに似てないけど仲良しな双子だった



仲良し家族、その中心でいつも家族をさらに明るくしてくれる天使の様な存在…それが双子の妹の愛里…

互いに20歳を超えても何となく上京するってよりは地元で親孝行する為にまだ実家に居ようぜ!ってタイプの可愛い妹…
可愛い見た目に反してゲームも好きで、互いに就職してからも休みの日には、色々おれと一緒に遊んでた可愛い可愛い妹





おれはこの何気ない幸せな毎日が大好きだった
お金持ちとかそんなんじゃないけど、…ただの日常が本当に幸せだった…
例え平凡フェイスでも、愛里の為なら格好いい兄でいよう、変な彼氏連れてきたら威嚇するから!威嚇するけど認めない訳じゃないからね!?兄として見極めたいだけだから!………とか考えたりして
こんな可愛い妹を絶対に守れる兄でいよう…そう思っていたのに…
しかし、そんな楽しい日々は永遠に続かなかったんだ…








ある日、突然事件は起きた
いや…既に事件が起きる予兆はあったのかもしれない、誰にでも優しくモデル並みに可愛い愛里にストーカーがいた事を、もっと早く気付いてあげる事が出来ていたら…予測する事ももしかしたら出来たのかもしれない…
時間は巻き戻せ無いから今更どう思っても意味は無いんだけどな




事前にある程度知ってたら…きっと、ストーカーを格好良く撃退するって兄なヒーローになれていたかもしれない…けど




とりあえず、何も防ぐ余地も無く…事件が起きた





グサッ…




きっとそんな音がしていたかもしれない
していなかったかも、しれない…
不意に腹からそんな変な音がした様な気がして、訳が分からない傷みがおれを襲ってきた



『はは…はははっ…♡ついに、ついにやってやったよ♡僕の勝ちだ…♡

ふふ、…くくく………愛里…キミは僕と結ばれる運命にあるんだよ…?なのになんで告白を断ったりしたの?ずっと見つめ続けていたのに!気持ちが伝わったと思って告白したのに!!!ふふ、ふふふふ…あはははは!!!もう、駄目じゃないか?愛里♡愛里♡本当に悪い子だったね?

分かる?判るのよね?判れよ!?断るなんて許せない、許せない、許せないんだよ!!!!わかるかいだから事になってしまう…キミが悪いんだよ?愛里♡
ふふふ…痛いかい?痛いね♡それは僕の心の傷みだ!!!わかれ!判れよ!!!
………………はぁはぁ…♡大丈夫、僕と一緒に死ぬだけだから…ね?愛里♡心配いらない、直に痛みは無くなるよ♡死んだらずっと僕たちは僕たちの世界で愛し合い続けるんだ、最高だろう?』

「………っ、ぁ゙、かはっ……」




愛里に急に予定が入ってしまい、友達に送る荷物がー!と焦ってた妹の代わりに荷物をコンビニまで預けに行った日、おれは誰かに腹を刺された
後ろから抱き締められるように羽交い締めにされた状態で、愛里愛里愛里愛里と耳元で呟く男に刺されたんだ

突然の事に…おれは何も言葉を発する事が出来なかった
ぐちゃぐちゃと腹から嫌な音がするのを感じつつ…
勝手に耳元で話す知らない男の言葉を聞きながら…



全身が酷く凍える…なのに、腹だけが燃えるように熱い…きっと腹から大事なものがどんどん流れて行ってるんだろうなって、痛いはずなのに…段々と、どこか他人事の様に感じてしまう…そんな状況
心の中で第三者目線で考えようとしてしまった結果…



え…………なんでおれは刺されたの…?腹刺されてるよな…?…………は?
てか、この男、ヤバくない!?
これ、あれ!!どう考えても愛菜のストーカー!?ストーカーさん!?!

だって、うちの可愛い愛里に現在彼氏いない、お兄ちゃん情報には無い…って事は本当にストーカー?………っ、まじかよ!?ストーカーいたとか知りません!!いや、あまりにも可愛くて天使だからストーカーの1人や2人くらいいるのか!?

いやいやいや、それどころじゃない!何こいつ?ヤバすぎなんじゃないのか?!愛里があまりにも好きだからって振られたから?!って普通刺す!?大好きとか言いながら刺す馬鹿がいるのか!?!

てかさ、おれ、愛里じゃなねぇんだけど?後ろ姿はそっくりでも顔が全然違うから!!!よく見ろ!パーカーのフード被ってて見えないなら顔を確認しろよ!
服で誤魔化してるけど肩幅とか野郎じゃん!抱き心地柔らかくねぇよ!?胸も無いよ!?

そういう所ちゃんと確認してから刺せよ!?いや刺すなよ!ふざけんな!!愛里になんてことをしようとしてんだこの変態っ!!!



とか、一杯心の中で考えて、ツッコミを入れていた



しかし、そんな余裕も段々と無くなり…腹を襲う激痛と熱さ寒さに危機的状況っていうのが目に見えて分かってきた…
脳内物質がドバドバ出てるのか、傷みさえ段々と鈍くなってきて…ずっと身体の自由は利かず…抵抗する事なんて出来なかった



愛してる愛してると気味の悪い声で呟くストーカー男はやっと愛里を手に入れたと確信しているのか、全然顔を見ようともせず、おれを羽交い締めにしたまま空に向かって笑っているから怖い
段々と自分から身体から力が抜けていくから余計に怖い



この状況を何とか出来るわけもなく…
刺された体験なんか今まで無い、どうしたらいいか分からない、と考えているうちに意識が遠退きそうになった瞬間…


『可愛い…♡かわいいねぇ…♡震えてる……
ああ…もう眠るんだね?ふふ、いいよ…大丈夫、僕も今、いくよ♡…………ゥ゙ぐぅっ……♡』


と、声が聞こえ…ストーカーの変態は自分の腹にもナイフを突き刺したのか、変なうめき声を上げて…おれ諸共地面に崩れ落ちたのだけは分かった…





最後に聞こえた声は…確か…




『愛里、愛してるよ♡死に際のキスをし……………え、誰?』





人違いを確信した馬鹿なストーカーの発言だった








そこからおれの生きてる上での意識はない

享年23歳
おれはこの日、可愛い可愛い妹を結果的にストーカーから守り、腹を刺されて死んだ
妹を守りる格好いい兄として…とは言えないが、それでも可愛い可愛い愛里が無事ならそれでいい…お兄ちゃんは変態から妹を守ったぜと胸を張って言える

これまで育ててくれた両親には申し訳ないけど…まさかおれも人違いで刺されるとか想像もしてないし、避けられなかったんだ…ごめん



神様…願わくば…守護霊に…いや、幽霊だとなんか除霊されそうだから…早急に生まれ変わらせてくれ…
犬とか猫とか…いや、それだと確実に愛里に会えるかわからない…出来たら愛里が好きだった物とかがいい…お兄ちゃんは付喪神となって側で見守っていたいです…
付喪神の求人募集…ありますか…?




そう願いつつ、おれの意識は闇に溶けていった………………











しかし、おれは知る由もない
神様が本当にいて、早急におれを転生させてくれてた事を…
その転生先が大いに間違っている事を…!!!









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