5 / 39
幼少期編
あって欲しくない未来
しおりを挟む今世の美し過ぎる母様にお洋服選んできますと、平常心を貫いた可愛い女児の見た目で伝え、自室に戻り姿見の前で信じたくない現実に気付いてしまってからどれくらいの時間が経過しただろうか…
どんなに見ても、どんな角度で見ても…おれはどう考えたって乙女ゲーム、『花の聖女と魔法学園』のヒロイン、アイリスの幼少期である事に変わりは無く…
ついでに前世の記憶を取り戻すまで、自分は女児だと思い込んでいた悲しい事実が物凄くショックで、床に座り込んだまま時が流れるのを感じていた
父様母様兄様含め周囲がおれを女児だとたぶん勘違いしている事も…何もかもここが乙女ゲームとして存在する世界だと言ってくるようで…泣きたくもないのに涙が出てくるのだ
溢れた涙は瞬時に花びらっぽく変わり…パラパラと足元に綺麗に散らばる始末…
この涙は魔力を多く含んだヒロインの能力だ…
涙から魔力が弾けて花びらに見えるとかとてもファンタジーな設定がありましたね、あの乙女ゲーム!!
美しい花びらが床に転がる度、これは本気で現実だぜ…と伝えてくるからどんどん悲しくなっていく
「……………おれ、なんでヒロインなんかになってんだよ…野郎なのに…なんでみんな、なんの疑いも無く女児扱いするんだ………?メイド達さ、風呂で見てるじゃん…兄様も風呂でおれのちんこ見てるじゃん…
どうしよう…無理、しんどい…せめて性別は間違えないで欲しかった…そしたらまだ諦めきれたかもしれないのに…クソ神様…」
あまりにも悲しくて…母様と約束したドレスを選ぶとかそんな事も忘れ、愛里と攻略していた乙女ゲームの事を思い出して現実逃避をするしかない自分がいる…
ここが乙女ゲームの世界で自分が性別を間違えられたヒロインならば、このまま物語通りに進んでいくかも知れない…そう考えるとストーリーとか登場人物を思い出しておかないと不味い気もして…鏡に映る無駄に可愛い自分の姿を見ながら、前世の記憶を無意識に掘り起こしていた…
乙女ゲーム『花の聖女と魔法学園』には攻略対象のイケメンが数人と、絶対的な権力と存在感を持つ悪役令嬢とその取り巻きがいる
攻略対象に婚約者はおらず、仕様と言う名の婚約者候補的な存在が居るだけでヒロインと結ばれても寝取りだとか気分が悪くなる事はない
色々外伝とか含めるともっと多いけど、おれの見た目的に、シリーズの大元になった第一作のヒロインとして異世界転生していると思っていい
第一作目の攻略対象者は5人
1人目はこの国の第一王子、アルフレッド.フィン.グラジオラス
見た目は顔良し性格良しで優しい王子様ってキャラ…けど、幼い頃から王家の闇に触れ、暗殺とか結構されかけて心がちょっと歪んでる…
2人目はこの国の宰相を務める父を持つ公爵家の嫡男、パトリック.スプレンデンス
見た目は穏やかな笑みが特徴の好青年、しかし幼い頃から家族に有能であれと求められ過ぎていてしんどくなり、心がちょっと歪んでる…
3人目はこの国の防衛を務める騎士団長を父に持つ侯爵家の次男、エルヴィン.エドレンシス
見た目は爽やかなイケメン…でも、幼い頃から長男と比べられてお前はスペアだと言われ続け、ちょっと心が歪んでいる…
4人目と5人目は隣国から参戦…な、ちょっと特殊だったり、2週目以降のイケメン攻略対象…各々自国で色々問題を抱えてて…やっぱりちょっと心が歪んでいる
…………ん?、てか、改めて考えると、なんか全員心歪み過ぎじゃない?
ヒロインに救われることを前提してるにしたって心歪み過ぎなんだけど…!?
乙女ゲームを普通にプレイヤーとしてやる分には全然重い過去をヒロインと乗り越えて良かったな!って思えるが…
現実問題、キャラクター設定通りの幼少期を攻略対象者達が送っていると思うと、ちょっと可哀想に思えてくる
都合のいい話の流れにするためにはシリアスな部分も必要、それは分かるけど…それにしたって心が歪むほどの過去を与えられてる存在って…………
しかし、攻略対象者可哀想とか、男として見てもらえない自分可哀想とか、悲しんでばかりも居られない
父様、母様達周囲の反応が既におかしい事実…ここがあの乙女ゲームなら、この先の人生も乙女ゲームとして進んでいくのでは…?と、この先の未来に不安しかないから
このまま行けば、ヒロインポジションなおれは男児だろうがその事実をねじ曲げられ、この素晴らしく可愛い見た目のまま成長し確実にヒロインとして攻略対象と出会い…ハッピーエンドに向けて進んでいくんでは無いのか?
「待って、不味くないか?このままじゃヤバくないか…?
おれ、ヒロインとして強制的に乙女ゲームのストーリーに進んで…ハッピーエンド迎えちゃったら…
攻略対象者の…イケメン野郎と恋愛すんの??甘い甘い青春♡したあげく、悪役令嬢に虐められる定番イベントを経て最終的に結婚する羽目にならない?初夜♡とか言って掘られるんじゃないの…!?てか、王妃とか、公爵夫人とか…無駄に高貴な妻ポジションになっちゃうんじゃねぇの…?
妻ポジって…一生、女装させられて…ドレス着せられて…女と間違われたまま…おっさんになるの…?
…………………嘘だろ?」
……………………嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ…!普通に考えて嫌だ!!!
野郎に女と思われて女扱いのままヒロインとして恋愛してくとか無理!!更には将来的に抱かれるとか、絶対に嫌だ…!!それだけじゃなく、壮年になった自分が美しいドレスを着せられてウフフと扇子持って微笑んでいる光景がもっと嫌だ!
乙女ゲーム仕様でキラキラエフェクトの中で自分がお姫様抱っこされてる場面が浮かび…気分が悪くなる
やばいやばいやばい………このまま乙女ゲームのヒロインとして人生を受け入れたらやばい!!!!
このままじゃ、乙女ゲームの強制力という呪縛の元、高役職でめんどくさいおっさんの一生女装生活♡とか絶望の未来に突き進んでいってしまう!!!
「嫌だ………………そんな人生………無理…………絶対に、嫌だ……………っ!!!
おれ、ノンケ!女の子大好き!愛里みたいな可愛子が好き!!!イケメン野郎と結婚なんてしなくない…!!!
……………逃げ、なきゃ……乙女ゲームの運命を変えなきゃ……」
この日、おれは可愛い妹にすら会えず、野郎ヒロインポジという絶望を目の前にして、ヒロインというポジションから逃げる為に動く事を決意した
436
あなたにおすすめの小説
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される
水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。
絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。
長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。
「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」
有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。
追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる