魔族の嫁になった僕

たなぱ

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魔族と僕と捕虜

番外編 再会する話/駄犬の話

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前半、シャル視点特大のお引っ越し
後半、駄犬(騎士団長)は病弱お兄さんを孕ませたい



side シャル
その日、僕は朝からそわそわして落ち着きない時間を過ごしていた。レベリアの伴侶になれたからこそ叶う夢、捕虜だった僕のあの日の約束を叶えられる準備が出来たと教えてくれたのは昨晩のことだった 
嬉しさのあまりまだ移住成功してないのにレベリアに飛びついて喜んでしまった
ついに!ついに!僕の生まれ育った村の皆を帝魔国に連れてこれる!
魔王様にも明日中に移住が完了することを伝えると不便の無いように生活できるよう気を配ってやれよと言葉をくれた
その執務室に急に飛び込んできて床を転がりながら「俺の嫁はそこにいますか!!!」と声高らかに叫ぶ犬耳でムキムキな長身の男、この国の騎士団長様が煩い仕事しろと執務室からつまみ出されていた

ハイテンションで廊下でも雄叫び上げてる騎士団長様…え、何その反応…僕の生まれた村のみんななんかされるの?
不安になり旦那様を頼る

「シャル、私達は人を愛したい種族と言いましたね、複数人一気に移住して村を作ったらどうなるかわかりますか…?」

「え……み、みんな…攫われ…る…?」

「そんな物騒な事にはなりませんよ、ただたくさんの魔族がシャルのお母様やみんなを見には来てしまいますね…一目で番いたい相手はわかるものなんです、遠目の集団お見合いみたいなことにはなるかもしれないですが…大丈夫みんな移住してきてくれる人間を大切にしてくれますよ」



集団お見合い現場ってなんですか!え、既に夫婦な近所の皆さんは大丈夫なの?ほんとに平気?でもオーランシア国で辛い暮らしをするくらいならここで幸せになって欲しい…
興奮して夜はあまり寝れなかった
期待と不安と再会できる喜びでいっぱいだ
そろそろ時間ですよとレベリアに抱きかかえられて目的地へ転移する
今、僕はレベリアが管轄している領地に来ている、帝魔国王都から馬車で3日、転移魔法で片道3秒、そこには僕の育った村があった。
正確には村の外観、内装をほぼそのままレベリアの領地に建築し再現してくれた新しい村だ

夢魔と呼ばれる夢を介して人と接触できる彼らに手伝ってもらい、僕が帝魔国に捕虜として捕まったこと、使い捨ての兵器として命を落とすのを救ってもらったこと、魔族の間違った知識、絶望しか残されてないあの国にみんなを置いておけなくてレベリアと婚姻を結び、みんなをこの国に移住できるようになったこと…
初めは信じてくれなかった、あの国には長年に渡る結界内の洗脳があるらしい…でも僕の生まれた村は余りにも田舎で結界にギリギリ入りそうでズレていたため洗脳が徐々に溶けたみんなは僕を信じて全員が移住してくれる事になった

約束の時間、旦那様の転移魔法が発動され村のみんなが、母さんがこの地に降り立った
同時に元の村は野盗に襲われたように偽装し破壊、村人は全滅したようにみせるんだって

目の前に母さんがいる、ずっと心配してた…この準備が整うまで時間もかかったから少し痩せてしまった母さんが僕の方に歩いてくるのを早く抱きしめないと、旦那様から離れる…ごめんなさいってここに来てくれてありがとうって伝えないと
足がもつれながら走り出す、母さん、母さん!
「母さん!会いたかったぁ~~!!!」
「シャル、シャル、ほんとに生きててくれてよかった」
ちょっと痩せてしまった母さんの温もりが伝わってくる、ちゃんと生きてる…捕虜になんてなってしまった僕の責任を取って殺されてしまうかもなんて考えた事もあった…よかった…
母と互いに泣きながら再会を愛おしむ僕を村のみんなも駆け寄ってくれて、死なずに生きててくれてよかったってここに呼んでくれてありがとうとお礼を言ってくれた

みんなで再会を確認し合って泣いて落ち着いて来た頃、旦那様は僕の肩を抱き寄せ母さんに婚姻したことを報告してくれた

「私とシャルは唯一無二の番…婚姻し互いに愛し合う存在です、母君である貴方に事後報告となってしまい申し訳ない…ですが一生をかけて彼だけを愛し守り抜く事を命に変えても約束します」

「僕があの戦場で死にたくないって…助けてって気持ちにレベリアが…旦那様が答えてくれたんだ
ここに来て嫌なことも生きることが大変だって思うこともなくて幸せで…母さんに内緒で結婚してごめん…僕はレベリアが好きなんだ…」

母さんは大丈夫、私は否定なんてしない、互いが幸せであればそれでいいと、おめでとう幸せになるんだよって…ぎゅっと僕とレベリアを抱きしめてくれた

村のみんなはどう思ってるかわからない、聞くのが怖いなって気持ちもあって…
人と魔族が婚姻するあの国では考えられなかったこと、この国では認められてる、移住してみんなもここに慣れてくれたらきっとわかってくれる、貧しく生きることに精一杯だったあの国とは違う…生きてることが楽しいとそう思って欲しいな…






穏やかな日がこれから始まるのこと…………みんなが和やかな雰囲気で魔族の人とも仲良くしていこうそんな時に大きな声が響いた



「お兄さん!そこの運命のお兄さん!俺はライゼルト.ヴィッツ!!!!貴方に俺の子を孕んで欲しい!交際を前提に婚姻…いや子作りしてくれ!!!!」



昨日、執務室を追い出された騎士団長様が村長さんの息子の前に魔薔花(プロポーズによく使われる)を掲げる現場を僕らは何が起きたのかわからず見つめてしまった









side ライゼルト

俺はこの国の防衛を任される騎士団長、数多くの戦場を駆け抜け我が同胞を守る者
1ヶ月ほど前、宰相であるレベリア殿がオーランシア国から初めて生きた捕虜を捕まえたと通達があった、本来であれば尋問や拷問は我々騎士の管轄…しかしレベリア殿は頑なに自分で行うと言い張り我々に手出しをさせなかった

個人的な思念があるのか殺されてしまっては困る、捕虜から得られる情報は頭の狂ったあの国との戦いに大いに役立つはずだ
俺は認識阻害の魔法に身を包み…レベリアが拷問を行う部屋に偵察に向かった、殺そうと嫐るのであれば俺が保護し死なないように尋問を行う、本来我々魔族は人が好きな種族だ、望まぬ拷問を行うなど精神的な苦痛でしかない

確認するだけだと尋問で使用されている牢屋を覗く………………


そこには天井から吊るされ全裸の人間が、レベリアに恥部を弄くり回されている現場だった
痛みは無いのか身悶えながら甘い声を出す人間、幼い生殖機には何がが出入りしている、尻も同時に責められて泣きながら喘ぐ…それをしているのは目の前の男なのになぜそいつに甘えるように縋るのか…ズルい



いや!!!まてまてまてまて何を考えているライゼルト.ヴィッツ!職務中だぞライゼルト.ヴィッツ!!!己の股間が知らない間に膨張している…おいおいおい素直になるんじゃねぇよ!!
くそ…あの人間の痴態か…
レベリアは初めから人間をあんな目に合わせるために…まさかな…今すぐ死ぬことはなさそうだし少し様子をみよう
そう自分に言い聞かせ爆破しそう俺の股間を抑えその場を立ち去った

数日後、執務室にはあの捕虜の人間と番になりましたと嬉しそうに微笑む宰相がいた……………ズルくない?俺だってかわいい嫁が欲しい!!!

騎士団長ライゼルト.ヴィッツ 幻獣種フェンリル目の獣人
威厳のある態度を普段は示すが本質は犬である
そう、犬である、性に素直な駄犬だ



宰相の嫁が城で生活してて暫くして、オーランシア国の人をこの国に移住させる計画に我が軍も参加することとなった
移住する土地の整備に戦争の合間息抜きにどうかと、無論参加した騎士団全員で
帝魔国の騎士はほぼ狼、犬等の獣人で構成される、嗅覚と聴覚、恵まれた身体能力を駆使し戦うためだ
移住計画でも移り住む人間のため家屋を作りにかなり役立つ
全身を使う訓練としてもいい
段々と村が完成し、家具やこちらに移すことを望んた調度品などを設置している時、俺は運命を感じた


少し他の家屋よりも大きく、村の村長である者が住むその家に、人国から移したいと預かった一冊の本、ただの本なのに俺は動悸と息苦しさに襲われた

何故だ?この本に何がある?なにか危険な魔術でも掛かっているのか?そう思うのに俺の行動は本を抱きしめて頬ずりをし始める…一体何故!!!!!抗えない…なんだこの気持ちは…胸がドキドキする危険を確認せねばと、そっと本を捲る…それは本ではなく日記だった
勝手に他人のものを見てはいけないと思うのに身体の自由が効かない、日記の初めには世界共通語で
『自分の生涯を此処に綴る』と書かれていた…これは一体…

これ以上読んでは…プライバシーの欠片もないのか俺は…今、読まなければ後悔する気がしたそう言い訳するほど読むのを止められない

日記にはこうあった
戦争にて魔族へ放った攻撃が外れ、近くにいた私に当たった、この攻撃は徐々に身体を蝕んていくものだと医師は言う
解除しようにもこの攻撃を使ったものは知らぬ間に自滅していて、術者でなければ解除はできないのだと、魔族との交戦において名誉であると国は私を褒めた

身体を蝕まれ、日に日に動けなくなる私を軍は実家へ戻し名誉死を迎えるまで故郷で過ごせと指示を出す
実家に戻った私を皆が心配してくれる、一日でも長生きできるようにと……名誉の死が少しづつ近づく…何時まで私は生きてることができるのだろう…名誉とは…その誉れになんの価値があるんだ?

俺は無心でページを捲る捲る…

その日、私が弟のように構っていたシャルが軍に選ばれた
喜び送り出す私の目からは涙がでる…

…………
シャルはあの戦場で死んだと、嘘だそんなはず…信じたくないのに…名誉だ!素晴らしいと泣きながら口にする私は本当に私なのだろうか…?


………
…私の身体はもう半身が使い物にならない、椅子に座っての生活、誰かの助けがなければベッドにも戻れない…悲しい現実だ

………
シャルが生きていたと夢の中で知った、嬉しいよかった、帝魔国でこれからは暮らすのだと、皆にも来てほしいと…優しい子だ…きっとタダではそんな話は出ないとはずだから…

………
村人全員で彼の国に移住が決まった
私は本当に移住してもいいのだろうか…あと何年、何日生きれるかすらわからないこんな身体は両親にも負担ではないのか…でも叶うことならシャルを救ってくれた彼の国を見てみたい




一番新しく書かれたページに血が付いている…この胸が苦しくなる匂いの原因はこれだ…
この日記の持ち主はここへ来るのか…身体を蝕む術…呪術だろう、解除は出来ないが俺なら…俺にならお前を救うことができると早く伝えたい
早く来い、ここへ、俺の所へ…こいつが俺の番だ…



その日から俺は浮かれていたんだろう、威厳を何処かに置き去りにしてまだ会ってもいない俺の番の部屋を準備し我慢できなくて執務室に突撃しつまみ出されたりしていた、病気ですかと部下から泣かれ大切な番がこの国に来る日に実家に帰って療養してくれと言われるなんて、病気じゃねぇ!!!!

しっかりしろ、威厳のある男でいろ俺、これから番がくる、素晴らしい騎士団長であれよ俺!
深呼吸はもう1時間ほどした、大丈夫、大丈夫、紳士的にスマートに優雅にこの国を案内しようとかそうだなそんな出会いでいこう、よし、よし!!!!



いつも以上に毛並みを整え麗しき騎士団長としての仮面をしっかりと装着し、移住の地へ赴く、ついにこの時がきてしまう!宰相殿が転移魔法を使用し人国の人々が現れる、
宰相の嫁と母親と思しき感動的な再会を皆が優しい目で見ているとき、俺にはある一人の男しか写っていなかった


色素の薄いグレーの髪に灰色の瞳、色白で華奢な男…俺よりは身長が低いがそこそこの高身…家族と思われる人に助けられ用意された肘付きの椅子へ腰掛ける彼が俺を見た気がして…気がついた時には彼の前に跪き、無意識に準備していた花束を掲げ



「お兄さん!そこの運命のお兄さん!俺はライゼルト.ヴィッツ!!!!貴方に俺の子を孕んで欲しい!交際を前提に婚姻…いや子作りしてくれ!!!!」



騎士団長としても一人の男としても最低で最悪な出会いになっていた事を俺だけが知らない
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