悪役令息はモブに愛を捧ぐ

たなぱ

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色付く世界

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聖夜祭で起きた事件から色々な事があった
おれの身体は想像以上に動かなくて、一人で歩けるようになるまで1ヶ月間程時間要した

エアが身体が動かなくて落ち込むおれのために自らメイド服を着て、看病してくれるって奇跡があり衝撃的だったことは勿論だが、レヴィル様とラドラ様が種族を超えて正式に婚約した事も大きな吉報だった

そして、おれが次の聖獣様を孕める可能性がある存在だとレヴィル様から教えられた事も……



「伝えて良いものか悩んだんだが…事実を知る事とそこからどうするか選ぶのはお前自身だ

リナルド、お前の魂と魔力は限りなく俺の母に近い…そう思っていたが、あの日…お前から現れた両親を見て確信した…

お前は母の…聖獣の守り人の生まれ変わりだ」



そう、伝えてくるレヴィル様は何処か苦しそうで…それが印象に残っている

おれの魔力と魂はレヴィル様の母に近い、だから母体として聖獣を孕む可能性を秘めているらしい
レヴィル様の父の魔力残滓があの日、おれたちの前に現れたが…その父もこの世界の何処かで生まれ変わっている可能性があると
父の生まれ変わりと愛し合うことで確実に次代の聖獣様が誕生するのだと教えてくれた


闇の聖獣様、この国を長年守り続け死後もなお奇跡を起こしてくださる存在…その次世代をおれが産める可能性がある…


「素晴らしく光栄な話です…でも、遠慮しておきます
おれは自分の人生でエア以外を愛するなんて事、出来ないんで…それにおれ、自分が孕むより孕ませたいんですよ…エア以外に触れられるとか死んでも嫌です
なんで、レヴィル様にその役目はお渡ししますね?

伝説には深く愛し合った者同士の間に聖獣様は生まれてくるってあるじゃないですか?それはきっとレヴィル様とラドラ様の事だと思いますよ」


「…………っ!?、はははっ…!おいおい、リナルド?悩んでいた俺が馬鹿みたいじゃないか!
……………そうか…そうだな…俺も元々は呪われた子だ…
両親の深い愛の結晶として、聖獣である末の子は生まれた…俺はその奇跡を唯一間近で見てきた存在だ」


レヴィル様はそう言って、一度だけ母にまた抱き締められたいと、おれにお願いしてきた
魂と魔力が限りなく近い生まれ変わりというおれの存在を、母の温もりを確かめたいのだと

拒否する理由なんて無くて、エアとラドラ様には内緒ですよってしっかりと抱き締めてあげた
その現場を何故か聖夜祭の事件の後から喋れなくなってしまった猫の精霊にしっかりと見られていたが、エア達にバレなかったのでセーフだと思う




あの日から…おれが悪役令息として役割を強制されていた時とはまるで違う、既視感の無い日常はあまりにも新鮮で…楽しくて、あっという間に時が流れていく

学院に復帰したのもつかの間、直ぐに卒業式になり、国王陛下に報酬のお願いをして卒業直後に婚姻の書類をもぎ取り、そのままエアの実家…隣国へ嫁ぐ準備に入って…

結婚式の準備も段取りもエアと楽しくしてたらどんどん日が過ぎていく…新しい発見しかない日々がとても幸福な事だと何度も理解する
しかし、既視感は消えても灰色の世界は変わらない、けどその世界でエアだけはずっと色があって輝いてて可愛くて…一生このままでもいいかなって思った頃には結婚式前日の夜になっていた


「つい先日、聖夜祭で大変な目にあって問題解決ひたと思ってたらもう半年も過ぎてたんですね…速すぎてびっくりしてます!

…………明日、本当にリナルド様が僕のお嫁さんになるって思うとドキドキして寝れそうも無くて…あの、今日はずっと手…握っててもいいですか?」

「ああ、おれもエアにずっと触れていたい
おれも毎日が楽しくて日が経つのが早すぎて怖いくらいだよ…でも明日、エアに嫁げるのは正直踊りたいくらい嬉しい…早く明日になるといいな」


ベッドに並んで寝て、手を握り合って、出会った日のことから1つずつ思い出し、思い出を二人で話し合った
よく考えたら出会ってその場で互いに恋に落ちてた事、その日の内に同室をもぎ取った事…合同合宿の準備でで毒まで飲めるようになった事…
出会ってまだ1年経ってないのに幼い頃から隣りにいるような、エアとずっと心で繋がっていたような気持ちになるのはなんでなのか…エアも同じことを考えてて驚いた
二人でこれから一緒に暮らしていくうちに解ったらいいなって…触れるだけのキスして手を握り合い眠る……………




…………………
……………
………





そして、結婚式当日
隣国のモブヴィール辺境伯の領地にある最も大きな教会で、カレリナ国からも多くの列席者を招いて盛大に式を挙げた
事前に列席者の説明はしていたが…本当に代理を立てずに、祝言の言葉だけでなく実際に来るのか!と、王宮で式を挙げてもおかしくない豪華な列席者にエアのご両親…これからおれの義理の両親となるモブヴィール辺境伯殿は大笑いして喜んでいる


カレリナ国からは国王、王妃、アークランド家と交流のある貴族の家系のほぼ全て…ラドラ様、レヴィル様も勿論列席してくれた…両国合わせて列席者で国際会議が出来てしまう程祝われている事が嬉しい


そして大司教様がおれとエアの誓いを結んで下さった
この世界では、司教様に指輪を貰い、互いに嵌めた後、誓いの言葉を闇の聖獣様に捧げ婚約の書面に互いの魔力を流す
その瞬間、嫁入り婿入りする側の名が変化し、姓が変わるのだ

文字が変化するだけで特殊な演出等はない静かな誓い…おれ達も大司教様に促され、互いの手を取り書面に魔力を流した



その瞬間



風も吹いていないのに、黒に金の刺繍がされたような美しい花びらがどこからとも無く舞い込み、教会を彩る
その花びらがたった今、誓いあった婚姻の書類に触れた時、おれの目に変化があった



「エア…………おれ、色が見えるんだ…
世界が灰色じゃない…エア以外にも色があるんだ………」

「…………っ、リナルド様、もしかして…!?」


世界が色付いてる
赤や青、黄色、緑…全ての色がちゃんと色として見えるんだ…エアだけじゃない、全部に色がある

父様が、母様が…ラドラ様もレヴィル様も…みんなみんな灰色じゃない姿で見れる日が来るなんて思わなかった…
目頭から熱い、おれはきっと泣いてるのかもしれない…でも、涙で色は溶けていかなくて…ひたすらに美しい世界が目の前に広がり続ける



ふと、視界の外に誰かがいたような気がした
黒髪に金の…誰かが…確かにそこにいた気がする…

あれが誰だったのかわからない、けど…おれ達を祝福してくれているんだ…



『今度こそ、幸せになってね』



身体の中から何かが抜け落ちる感覚と共に、そう…言われた気がした…




ああ…そう言う事か…悪役令息であったリナルド.アークランドはもう居ないんだ…
おれはエアの妻、リナルド.モブヴィール…既視感をみていた悪役令息役のおれじゃない



おれは…ただのリナルド…
ひたすらに一人を愛し、愛し尽くす、ただの男になれたんだ……………



黒い花びらが蝶のように教会を舞い、まるで聖獣様が祝福をしてくださるような奇跡は式が終わるまで続く
美しい色に満ちた世界でもエアの輝きは変わらなくて、誓いのキスをするため向かい合うと花びらを纏い、恥ずかしそうに微笑む姿は本当に可愛くて愛おしくて…
色のある世界でも一際輝いている事に変わりはなかった



「エア、おれと出会ってくれてありがとう…全てを変えるキッカケをくれてありがとう
おれを推して好きになって愛してくれてありがとう…

大好きだよ、愛してる…エア」

「っ……………僕も…!僕だってすきです、愛してます!」





これからは受け取った愛を何倍にも増幅してエアに捧げよう、この世界で一番可愛くて優しくて輝いていてる…おれの世界を変えてくれたエアに…










悪役令息はモブに愛を捧ぐ 完










本編はここで一旦終了となります
当初の予定より長くなってしまったので最後まで読んで頂きありがとうございました!
番外編で初夜とかその後を載せる予定です、そちらも楽しんで頂けたら嬉しいです!



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