153 / 174
反撃編
2度目の魔力判定の儀
しおりを挟む大司教様が聖女ルチアの魔力判定を行って下さる事になり、おれたちは学園長室周辺に用意されている別の客間に移動した
先程まで意識不明だったから、階段での事件の後聖女ルチアがどういう状況か詳しくは知らなかった為、心の準備が出来ていなかったのもある…が
「あたしは悪くないの!離して、離してよぉ!!ルディヴィス様が!あの男が全部悪いのよ!
信じて、あたしは聖女よ!?女神様に愛された存在なのに!なんで…どうしてこんな目に遭わないといけないの!?あの男を捕まえて!あのモブを捕まえてよぉーーーー!!!」
客間入った瞬間目に飛び込んできたのは、縄で指一本動かせないよう拘束された状態で、椅子にしっかりと縛り付けられいる聖女の姿で…
更にはボロボロと大粒の涙を流しながらおれが悪いと喚いている…そんな聖女ルチアを見て少し後退りしてしまった
叫んでいる内容から猫かぶりが消えかけているのはまぁいいとして…まさか椅子にギチギチに縛られる程の事になってるとは…何をしたら一応聖女がそんな事になるんだ…?
おれの最初の予定、おれの命を餌に聖女を牢屋にぶち込む作戦だったらこうなってもおかしくは無いが、今回の作戦でおれはちゃんと生きている…取り調べの段階では見張り付きで監視くらいだと思ったんだけどな…
唖然としてると、驚くおれに気付いたのかレオがすかさず耳元で何故こうなった状況を説明してくれた
「ちゃんと理由があって厳重に拘束してるんだ
まぁ、次期王太子妃への殺人未遂で拘束し、良い感じのタイミングで口枷ずらして意味のわからない思想を公開してもらって盛大に暴れてもらった結果があれなんだけども…ルディを傷付けておいてただ拘束するなんて絶対嫌だったからな」
って、優しい声で…………優しくない説明をしてくれるのだ
な、なるほど?だから一応聖女って立場はまだそのままの筈なのにあんなに厳重に拘束されてるんだな…?
レオがそれだけおれのことを心配し、大事にしてくれようとした結果が今の聖女への対応に繋がっていると思うとちょっと嬉しい…少し怖いけど…
的確に生前の桃香が最も嫌がりそうな状況になっているのは偶然なのか…察したものがあるからなのか…
とりあえず、客間にレオに支えられるようにして入室したおれを見て、今まで泣き喚いていた聖女が可憐な乙女って自分の設定も忘れて一瞬般若みたいな表情でおれを睨みつけてきた…精神的にかなり追い詰める程適度にストレスを与えていてくれたんだろう
『お兄ちゃん!あんたがあたしを嵌めたのね!?ふざけないで!!なんで死んでないの!?さっさと消えてよ!!!』
あの一瞬の表情変化でそう言いたそうな顔をしていたが、おれの周囲に攻略対象が揃い心配している様子を見て、自分が想像以上に不利な場面だと理解したのか罵声は飛んで来なかった
自分は可哀想、自分は疑われているの、無実なの…そう周囲に訴えかけるよう、先程まで色々喚いていたのが嘘のように静かに聖女ルチアは俯く
その姿は小さい頃、自分に都合が悪くなった時の桃香の反応そっくりだ…
聖女ルチアは魂から全て桃香なのか…そうじゃないのか…しっかり調べてもらおうな…?桃香
「これはこれは…確かにリジャール王妃殿下の言うように魔物憑きの可能性もある反応ですね…
しかし、魔物憑きにしては言動に意味がある…先程感じたルディヴィス公爵子息に掛けられた魔法の違和感と照らし合わせても何か不思議な感じがあるようだ…
早速調べてみるとしましょうか……………では、これから魔力判定の儀を行います
皆さんは少し離れていてくださいね」
大司教様はゆっくりと聖女ルチアに近づき優しい顔でそうおっしゃる
魔物憑きって知らない単語も飛び交ってるしリジャール王妃がどうのってどう言うことなのかわからないが、とりあえずはこの診断結果が気になってしょうがなかった
皆、ある程度離れると大司教様は女神様へ祈りを捧げ、そして聖女ルチアの頭に手をかざす
「始めますよ」と言われている意味が分からないのか聖女ルチアは呆気にとられた表情をしている…そんな状況で大司教様の手が優しく光り、桃香の頭部を優しく撫るように動かし始めた瞬間、異変が起きた
「………………え、なに、なに!?!ぁぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙っ、痛い!痛い!!!頭がいたぃぃ゙ぃ゙いぎぃ゙ぃ゙ぃ゙!?!?なにぃ゙!?なにじでんの!?ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ーーー!!やめで、やめでよ!!!頭の中さわらないでぇぇえええーーー!!!やぁあぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ーーーーー!!!!!」
急に頭をふり乱し、大司教様の手から逃れようと動けぬ手足を椅子ごとバタつかせて暴れる聖女ルチア
…………………その姿を見て確信した
おれだって経験がある…十歳の頃…始めて魔力判定を受けた時なら他人の魔力が自分の皮膚を食い破ってくる嫌な感覚に気持ち悪さを覚え、泣きそうになったあの日の事、ちゃんと覚えている
暴れたり泣いたり…気絶したりする事も多いって話も覚えてるんだ
けど、2回目に受ける魔力判定の儀では自分の魔力が定まり安定している為、そんな不快感は起きない…
ジェイス第二王子の言っていた言葉が事実なら、本当の聖女ルチアが存在するのなら…彼女という存在が消えたのは魔力判定の儀の後…つまり魔力判定を受けていることになる
だから聖女ルチアは本当はもっと平然と魔力判定の儀を受けないといけない筈なんだよ…なのに、目の前の聖女ルチアは頭を必死にふり乱し暴れているんだ
これではっきりとわかった
桃香は聖女ルチアを乗っ取る形で存在している
聖女ルチアは桃香ではない、聖女ルチアという人格を共有して桃香が存在している訳じゃないんだ………!
ああ、よかった……………
大司教様が手をかざし、少し動かす度…桃香は泣き叫びその声は客間に響き渡る
聖女ルチアが魔力判定の儀を受けた後、徐々に桃香に蝕まれるように変化していったとするなら…桃香自身は魔力判定の儀を受けるのは今回が始めてだもんな?
おれたちは手と手を合わせて儀式を行ったけど今回は頭だ…脳みそを直に触れられるような嫌悪感は相当酷いのかもしれない…
2,365
あなたにおすすめの小説
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる