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運命の夜会 動揺
しおりを挟む今日は行なわれる王家主催の夜会は社交デビューを果たす者を主役として、夜更けまで執り行われる舞踏会だとフレイズ様は仰っていた
社交デビューを果たすまでは、同年代を除く多くの貴族とは関わりを持たないのがこの国では普通、基本的に学園で同年代と知り合い交流を学び、この夜会で貴族の社交という世界を知り、今後のあり方を学ぶ…その為に毎年行なわれている大切な夜会…
この夜会で最も大切な事は、礼儀作法なのだと言う
だからこそ、僕はフレイズ様がこの夜会に僕を連れて来たいと言っていたその日から、必死に無知だった頭に礼儀作法をたたき込んできた
フレイズ様の隣にしっかりと意味を持って立つために…
…………実際は学ぶのが楽しすぎて叩き込むと言うよりも楽しく学ぶ…だったけど…
そうして得た礼儀作法の知識、実践で学んできた成果を僕は今日活かす
大勢の人が居るこの会場で…人からどう見られているかを考え、姿勢をより美しく見せれるよう胸を張り、フレイズ様にエスコートされつつ、一歩一歩確実に夜会の会場内へ足を進めるのだ
決して足は上げすぎず頭は動かさず、一歩を踏み出す所作が上品に見えるように…美しい刺繍の施された衣装の上着、ルドレッド公爵家の家紋が縫われたその裏地までも自然に人の視界に映るように…
フレイズ様の連れとして恥ずかしくない立ち振舞を完璧にこなせるように…その一心で前を向く
会場内へ進めば進むほど、周囲のざわつきが一層強くなり、多くの視線が集まるのを感じた
その理由は考えなくても分かる、ここにいるフレイズ様が入場したからだ
ルドレッド公爵家へ嫁ぎ、妻となる事を決意した僕は日々の学びの中でルドレッド公爵家に対する他貴族からのイメージについても学んでいる
人食い公爵家には逆らうな…
国で最も強く、軍部を任されご自身も強いフレイズ様…しかし、その強さは人の常軌を逸脱している…
何故好き好んで激しい戦場に赴くのか?、それは敵国で捕虜を得て、持ち帰り血肉を食らう為だと、多くの貴族の間で噂され信じられているのだ
近付いてはいけない存在…近付けば闇に連れ込まれ食われると…黒い軍部は返り血を隠すためだと認識されている…
そんな噂を持つフレイズ様が到着したのだから周囲の視線は一気に集まる
しかも舞踏会が始まる寸前に僕達は合わせて入場したから余計に目立つのだろう
………………けど、何故か他貴族の目が…恐ろしい噂があってもとても格好いいフレイズ様だけではなく…僕に注がれてるような?…気がしてならなかった
耳を澄まして見ても聞こえ無い囁き声…
僕達に聞こえないギリギリの声量で話しているみたいだと、それだけは分かるが…何故僕の方を見る熱いというか…不思議な視線を感じるのか分からなかった
会話の内容はわからなくても事前の想像通り、フレイズ様が誰かと参加している事に皆、驚いている…でも、7歳以降本当に外へ出たことの無い僕をサージェス伯爵家子息だった子とは認識していないみたいだ
あれは誰だ、そんな視線と熱い視線しか感じない
各々、こちらには聞こえていないからと、好き勝手に思った事をつぶやく中で、徐々に会場がざわめき、既に会場にいた多くの参加者がフレイズ様を中心へ誘うように道を開ける
その開けられた道をフレイズ様は誘いに乗るかのように進む…僕をエスコートしつつ、囁く周囲の声に反応する事も無く…誰とも話さずに、真っ直ぐ会場の中央へ…
たぶんフレイズ様は会場の中央で今日の目的を果たすんだろう
運命の夜会、害虫駆除…収穫…この日まで時々言ってた言葉の意味はよく分からない事も多いけど…僕はフレイズ様の妻として何事にも動じない、それだけを守り抜こう
…………ちょっとだけ、フレイズ様にエスコートされてこんな大勢の前で歩けるって事が嬉しくて…微笑みそうになってるけど………
ちゃんと真顔で我慢できるか心配だ
フレイズ様と僕が丁度、会場の中央へ辿り着くと同時に、背後の…会場中央にある壇上に国王陛下が現れ、舞踏会の開始を告げた
「諸君、よくぞ集まってくれた
これより、舞踏会を執り行う、今宵は社交の世界へ羽ばたく子達の夜である!!
国を繁栄に導く未来の宝、素晴らしき子達の成長を祝おうぞ!!!」
お言葉が終わると同時に巻き起こる大きな拍手、初めて見たけど国王陛下はとても優しそうな方だった
フレイズ様が言うには国王陛下はこれから2階の観覧ブースに移動し王家の方々と夜会を楽しむのだという
けど、そうはならない
国王陛下が拍手を受けながら壇上を降りようとされたその時…会場に響いたのは拍手だけでは無かったから
「お待ち下さい…!!!国王陛下……!!!
皆様……!!!駄目です!!このままで!!!
素晴らしい舞踏会をこのまま開始してはなりませぬ!!!
この会場には人殺しが…化け物がいるのです……!!祝いの場に相応しくない者がいる!!!」
「…………ええ!!そうですわ…!このままではこの国は…この国が滅ぼされてしまいますっ………!
どうか、私達の言葉をお聞き下さいませ…!!!」
サージェス伯爵夫妻、そしてマイトとデオン様が会場の中央に泣き崩れるように現れた…
僕とフレイズ様を睨み付けつつ…拍手をかき消すほど異常によく通る…大声で訴えかけながら……
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