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【魔法使いside】
むかしむかしある国に美しい王女さまがいました。
そして王女さまを密か思う魔法使いもいたのでした。
「ねえ聞いて、ハミル。今日も性格が悪いって陰で言われてしまったわ」
そう言って王女は出されたお茶をひと口飲む。あまり目立たないようにするためか、ここに来る時の王女はいつも草色や紺色といった地味なドレス姿だった。
魔法使いは王宮の裏庭の隅に建てられた小さな家で暮らしていた。あまりに小さな家なので、庭師が住んでいる家か物置小屋だと思われているのだが、ここには国一番の魔法使いがひとりきりで住んでいたのだった。
小さな家にある本棚には、魔法書がぎっしりと収められ、窓や壁には所狭しと薬草が干してある。造り付けの小さな棚には粉や何かの液体の入った小瓶が並べられ、部屋の隅の床には大きな鍋や水甕が置かれている。
王女のためのお茶を置いているテーブルには、先ほどまではたくさんのメモと魔法使いが書き付けていた、魔法についての研究を記した帳面が広げられていた。
家の中に小さな寝台はあるが、ソファはないので王女が来ると魔法使いはテーブルの上にあったものを全て寝台の上に移動させて、王女にはテーブルとセットになっている木の椅子に座ってもらっていた。乱雑に物が置かれた部屋の中で金色の髪に、青色と緑色が混ざりあったような、珍しい碧色の瞳を持つ美しい王女がいるのはとても場違いに感じるのだが、こんな場所にいても王女の美しさは損なわれることはなかった。
「まあ、人ってものは嫉妬の塊みないなところがありますからねえ。俺も国一番の魔法使いと言われるようになってからずっと嫌がらせを受けてますよ」
そう言いながらハミルと呼ばれた若い魔法使いは、お茶の次はハーブティーだろうと思い、窓辺に干してあるカサカサに乾いたペパーミントやレモングラスの葉を手に取り、小さなかまどの上に置かれているケトルの中へと入れる。ケトルの中にはぐつぐつと煮立った熱湯が入っていた。
「でもね、私が侍女を打ったとか、令嬢にワインを掛けたとか、誰かの悪口を言ってたとかぜーんっぶ、身に覚えのない事ばかりなのよ!」
王女は憤っているようで、テーブルを拳でドンと叩く。
この王女は容姿がとても美しいせいで、国王やお妃にとても可愛がられて育てられた。だからなのか、王女は人を疑うという事を知らなかった。そしてそのせいで随分と損をしていると魔法使いは思っていた。
王女が友人と思った令嬢に話した事は、些細な内容でも嘘を混ぜられて悪い風に広められてしまうし、ちょっとぼんやりしているだけで睨みつけていると陰口を言われてしまう。しかも王女がそれに気付くのがとても遅く、気付いた時には噂として広まった後で、王女ひとりの力ではどうしようもなくなっているのだ。
王もお妃も兄王子も、皆で王女をかわいがるくせに、守ろうとはしない。
王女もまだ十五歳と若過ぎるのも理由のひとつだった。王女を相手にする時だけは徒党を組んでいる、少し年上の令嬢たちにやられっぱなしで、やり返す事や上手くかわす事が出来なかった。
「王女さまはお美しい上に教育係もうなるほどの才能あふれる方ですから、皆ひとつくらい欠点があればいいのにって思っているんです。だから嘘でも飛びついてしまうんです。他人の嫉妬心なんて気にするだけ時間の無駄ですよ」
そう言いながら魔法使いは二杯目のお茶を王女に出すのだった。
「私にこうやって普通に接してくれるのはハミルだけよ。歳も近いのだし、良かったら私とお友達にならない? 私のことはマリアーヌって呼んでいいわ」
王女の言葉に魔法使いは慌てた様子で首を横に振る。
「いえいえ、そんな恐れ多いことを。王女さまの愚痴ならいくらでもお聞きしますから、まずはこれを飲んで落ち着いて下さい」
魔法使いは王女の事を好きではあったが、その思いはずっと心の中に仕舞ったままだった。
むかしむかしある国に美しい王女さまがいました。
そして王女さまを密か思う魔法使いもいたのでした。
「ねえ聞いて、ハミル。今日も性格が悪いって陰で言われてしまったわ」
そう言って王女は出されたお茶をひと口飲む。あまり目立たないようにするためか、ここに来る時の王女はいつも草色や紺色といった地味なドレス姿だった。
魔法使いは王宮の裏庭の隅に建てられた小さな家で暮らしていた。あまりに小さな家なので、庭師が住んでいる家か物置小屋だと思われているのだが、ここには国一番の魔法使いがひとりきりで住んでいたのだった。
小さな家にある本棚には、魔法書がぎっしりと収められ、窓や壁には所狭しと薬草が干してある。造り付けの小さな棚には粉や何かの液体の入った小瓶が並べられ、部屋の隅の床には大きな鍋や水甕が置かれている。
王女のためのお茶を置いているテーブルには、先ほどまではたくさんのメモと魔法使いが書き付けていた、魔法についての研究を記した帳面が広げられていた。
家の中に小さな寝台はあるが、ソファはないので王女が来ると魔法使いはテーブルの上にあったものを全て寝台の上に移動させて、王女にはテーブルとセットになっている木の椅子に座ってもらっていた。乱雑に物が置かれた部屋の中で金色の髪に、青色と緑色が混ざりあったような、珍しい碧色の瞳を持つ美しい王女がいるのはとても場違いに感じるのだが、こんな場所にいても王女の美しさは損なわれることはなかった。
「まあ、人ってものは嫉妬の塊みないなところがありますからねえ。俺も国一番の魔法使いと言われるようになってからずっと嫌がらせを受けてますよ」
そう言いながらハミルと呼ばれた若い魔法使いは、お茶の次はハーブティーだろうと思い、窓辺に干してあるカサカサに乾いたペパーミントやレモングラスの葉を手に取り、小さなかまどの上に置かれているケトルの中へと入れる。ケトルの中にはぐつぐつと煮立った熱湯が入っていた。
「でもね、私が侍女を打ったとか、令嬢にワインを掛けたとか、誰かの悪口を言ってたとかぜーんっぶ、身に覚えのない事ばかりなのよ!」
王女は憤っているようで、テーブルを拳でドンと叩く。
この王女は容姿がとても美しいせいで、国王やお妃にとても可愛がられて育てられた。だからなのか、王女は人を疑うという事を知らなかった。そしてそのせいで随分と損をしていると魔法使いは思っていた。
王女が友人と思った令嬢に話した事は、些細な内容でも嘘を混ぜられて悪い風に広められてしまうし、ちょっとぼんやりしているだけで睨みつけていると陰口を言われてしまう。しかも王女がそれに気付くのがとても遅く、気付いた時には噂として広まった後で、王女ひとりの力ではどうしようもなくなっているのだ。
王もお妃も兄王子も、皆で王女をかわいがるくせに、守ろうとはしない。
王女もまだ十五歳と若過ぎるのも理由のひとつだった。王女を相手にする時だけは徒党を組んでいる、少し年上の令嬢たちにやられっぱなしで、やり返す事や上手くかわす事が出来なかった。
「王女さまはお美しい上に教育係もうなるほどの才能あふれる方ですから、皆ひとつくらい欠点があればいいのにって思っているんです。だから嘘でも飛びついてしまうんです。他人の嫉妬心なんて気にするだけ時間の無駄ですよ」
そう言いながら魔法使いは二杯目のお茶を王女に出すのだった。
「私にこうやって普通に接してくれるのはハミルだけよ。歳も近いのだし、良かったら私とお友達にならない? 私のことはマリアーヌって呼んでいいわ」
王女の言葉に魔法使いは慌てた様子で首を横に振る。
「いえいえ、そんな恐れ多いことを。王女さまの愚痴ならいくらでもお聞きしますから、まずはこれを飲んで落ち着いて下さい」
魔法使いは王女の事を好きではあったが、その思いはずっと心の中に仕舞ったままだった。
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