リドル・クリーチャー

巫衣弥七

文字の大きさ
1 / 64

第0問

しおりを挟む
コンコン

 「はーい」

 ガラガラ

 準備室のドアがノックされた。
 持っていた i Padを積まれた資料の上に置き、ドアを開ける。

 そこには、男子生徒が二人いた。
 真新しいスーツを着ているので、新入生だろう。

 「あの、すみません。クイズ研究部は、ここでよろしいでしょうか?」
 「……あぁ。わかりにくいよね。クイズ研究部は隣、向こうが視聴覚室のドアだよ」
 「「ありがとうございます」」

 今日は大学の入学式。二科生である俺は、授業もないので、朝から一人、部室でのんびりしていた。
 そこへ、説明会を終えた新入生が、クイズ研と間違えて来たのだ。

 俺は、新入生にクイズ研究部の場所を教え、
 部屋に戻って椅子に座り、再び i Padを手に取ろうとしたとき、
 ガヤガヤと廊下が騒がしい事に気付く。

 「整合性がここまで取れているんだから、ぜったいそうだって!」
 「でもでも、運動部の方も、バラバラだったけど、文章には、なってなかったし、たまたまじゃない、かなぁ?」
 「そんな事ないって! じゃあ、この矢印はなんなの?」
 「そ、それは……い、印刷ミスかなぁ?」
 「ほら、アンタだって、私が正しいって思い始めてるじゃない! 行くわよ!」

 壁を一枚隔てているので、声は聞き取れないが、また新入生だろう。

 コンコン

 またしても、ドアがノックされた。
 どうやら今年は、晴さんのクイズ研は豊作らしい。これで4回目だ。

 「ハイハイ」

 ガラガラ

 「クイズ研は隣ですよ」
 「えっ? 私たち、ナゾトキ制作部に来たんですが」
 「ほぅ。って事は、冊子の謎を解いたのか? やるねぇ」

 予想外にも、今度の新入生は、ここナゾトキ制作部が目的だった。

 「ハイッ! 圭太が冊子に違和感を見つけたんです」
 「へぇ~」
 「そ、そんな、迷が、頭文字に、気づいたから、ここまで来れたんです」
 「なるほど。じゃ、自己紹介がてら、謎を解いた課程、教えてくれる? 俺は二科生の、甲斐 創(かい つくる)」
 「わかりました! 甲斐さん」

 新入生の内、髪を腰まで伸ばした女子が、元気よく返事をして、話し始めた。

 「私は、宮本 迷(みやもと めい)。そして、こちらが、貝木戸 圭太(かいきと けいた)」
 「ど、どうも」
 「私たちは、部活動紹介の後、冊子を見ながら、順番がバラバラだったね~って話してたんです」

 迷は、そう言って冊子を取り出して、あるページを指差す。

  ・
  ・
  ・
 軟式野球部
       文化部
 造花(フラワーアレンジメント)同好会
 登山部
 奇術部
 生物部
 囲碁部
 茶道部
 クイズ研究部
 ブラスバンド部

 「そして、このページにある部活を頭文字だけ読んでいくと、な・ぞ・と・き・せ・い・さ・く・ぶ。ナゾトキ制作部となります。
 さらに、このページの本の『ノド』部分に、見にくいですが、矢印がありました。
 その矢印が指していたのが、ここ視聴覚準備室でした」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...