私の立場

けんけん

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仕事が始まり数時間、他の社員が見渡せる入り口から1番奥の席で机の上に置かれた資料を手に取り内容を確認すると立ち上がり、職場内を歩き出し、入り口奥に居る男の元へ。
「鈴木さん、少し宜しいですか?」
そう言うと男の机に手に持った資料を置く。
「こことここの数字おかしいって、この間送っていただいたデータの時に言いましたよね?分かったって言ってましたよね?何で直さずに提出したんですか?」
机に置かれた資料をゆっくりと手に取る男
「本当だ、この間と同じ数字になってる...直したはずなのですがね~。じゃあ今直しますからちょっと待って下さいよ向井課長」
男のあっけらかんとした悪びれる様子もない態度に内心イライラする気持ちを落ち着かせる。
「直したらすぐにデータを私に送ってください。それと印刷の方もお願いします。」
そう言いながらその場を離れ自分の席へと戻り椅子に腰掛ける。

 私は自社製品の市場調査とサンプル品の営業を主とする部署の課長を任される向井美和。大学卒業後、この会社に入り14年の36歳の独身。162cm50kgと女性にしては高い身長に、少し大きな胸を強調する様な背筋を伸ばして歩く姿が印象に残る。彼氏とは数年前に別れ今は1人、見た目は可愛いと言うよりは綺麗で何人かと付き合ったりはするが大体長続きせず、別れる原因は一緒に居ても落ち着けない。言い方や当たりがキツイという事だ。
自分で言うのもなんだが仕事は出来る方でいずれは課長クラスにはなれる自信はあった。だが去年、元々予定していた課長候補が部下からセクハラで訴えられた事と、女性の活躍出来る職場をと言う社長の号令があり私が選ばれたのだった。
だが、いざなると上の頭の硬い人からは若い女のくせにと時代錯誤の様な事を色々言われる事も多く、若い子からも気の強いおばさんみたいに思われている節があり、ストレスが溜まる。それと同時に先ほど資料を間違えた男...こいつがさらに私をイライラさせる。
あの男、鈴木正志56歳は元々の課長候補。
昭和の感覚が抜け切らない男で、新入社員の女の子に彼氏は居るのかとか飲み会の時には新入社員が酒を注ぐのが社会人の常識だなどと言っていた事を部下に訴えられ、上層部への評判が悪くなり昇進の話もなくなり、奥さんとも言い合いになり離婚されたとの事だ。それだけが原因とも思えないが......
本来仕事が出来ない事は無いのだが、昇進は出来ないは、自分の代わりになったのが若い女だって事も有り今では周りからも嫌がられる存在になってしまっている。

椅子に座り大きなため息をつけば他の資料や報告書の確認その他をこなしていると、昼休みの時間になっていた。気分転換にコンビニでサンドイッチを買えば外のベンチに座り食べる。
本当にあんなオヤジ共はマジで要らない…そんな事を考えながらも、今日は週末でストレス解消の日だと思えば昼からの仕事も頑張れたのだった。
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