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第一章 悪役令嬢っていいな
01:悪役令嬢っていいな、なれたらいいな
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「悪役令嬢っていいな!」
散らかった部屋の中で、たまたま無料期間だった漫画の単行本一巻をスマホで読み終えて、私は思わず絶叫していた。
いいな!いいな!だって、現代の知識を持って、いまよりちょっと文明が遅れている世界に行って現代の知識を披露したら天才扱い、令嬢って言うからにはお金持ちで、見た目も美人で、これから破滅ルートに行くかもしれないのを知ってるから、現代の常識レベルで人を気遣えば聖女扱い。転生前は悪役モードで周りに疎まれてるから、人が変わって良い子になったらイケメンにもモテ放題。異世界転生チートものの中でも群を抜いて恵まれてる。恵まれすぎている。
「羨ましい!私も転生して悪役令嬢になりたい!」
もう一回絶叫してから、私は虚しくなって布団に入って眠った。明日も朝早くから日雇いのバイトなのだ。
日雇いバイトはきつい。きつくてしんどくて人気がないけど単純作業で誰にでもできる。それが日雇いだ。
淡々と進む作業はハマると脳汁が出たり、良い人が集まってると奇妙な一体感が生まれて和やかに進むこともある。でも、寒かったり、暑かったり、現場監督がきつい人間だと最悪だ。そして、その日は最悪なほうだった。
現場監督は指示の仕方が曖昧で、曖昧ゆえに理解できないバイトが仕事を間違うと怒鳴り散らし、連帯責任だと言って間違えたバイト以外のバイトも集めてまとめて怒鳴り散らし、お前らはクソだ、だから日雇いしか出来ないんだ、と、人格否定を含めた暴言でこんこんとお説教。しかも吹きっさらしのコンクリートの馬鹿でかい倉庫で。
寒くて死にそうになりながら棒立ちで怒鳴られながら30分。
「お前らのせいで仕事が遅れたから休憩はなし!シートに変なこと書くんじゃないぞ!」
日雇いバイトは世間体的には派遣社員である。
派遣会社と契約して、そこから、その日その日で別の現場に送られる。その際、どこどこの会社で何時から何時まで働きました、休憩は何時間でした。ということを記録シートに残す。現場の判断で休憩をとりあげられたら、休憩は無かった、と記録しなくてはならない。現場監督は、それをするなと言ったのだ。割と良くある話だ。
曖昧な指示で現場を混乱させ、喚きちらす監督の下でトータル8時間、段ボールに品物を詰めたり出したり運んだりを繰り返し、ようやく上がりと言われて記録シートを取り出しながら、周りの様子を伺った。
休憩時間の項目に、1時間、と記入する数人のバイトの姿を確認してから、私も、1時間、と記録して、持参したペンケースにボールペンを仕舞う。
交通費は自費だ。この現場には二度と来ねえ、と決心する。けど、他に仕事が無かったらまた来ることになるんだろうなあ。
ため息を吐きながら、帰り道の自販機でホットコーヒーを買って飲む。温かい液体が気道を降りてゆくと、じんわりと癒される。
カフェインの取りすぎは良く無いとか、温かい飲み物でも取りすぎると水分で体が浮腫んで云々とか、Twitterでフォローしてる薬学の先生が言ってたけど、今この瞬間、体を暖めなければ心が死んでしまう。
コンビニで甘いお菓子も買った。
糖分の取りすぎは~と、やっぱり頭の中の偉い先生が言うけど、これも、今食べて気分を上げないと死んでしまう。無駄遣いで、体に悪くても、いま、この瞬間に自分を癒さないと、きっと、家に帰り着くことさえ出来ない。
泣きそうになりながら自宅のアパートに着き、なんとかシャワーを浴びてカップ麺を食べて歯を磨いて布団に入った。
シャワーを浴びた私、えらい!
歯を磨いた私、えらい!
こんなに疲れて悲しくてボロボロなのに、ちゃんと生きてて、偉い!!!!!私万歳!!!!
心の中で虚しく絶叫しながら瞼を下ろす。
その瞬間、ドクンッと、心臓が大きく脈を打った。
その1回目で、これは、ヤバいやつだ、と分かった。
大きいとは言っても、通常より少し大きいかな?くらいのものだった鼓動は、どんどん大きくなる。
ドクンドクンドクンドクン。
息が苦しくなった。体かガクガクと震え始める。寒くてたまらないのに冷や汗が出る。
これ、死ぬやつだ。
恐怖と混乱で耳が良く聞こえなくなっていたけど、多分、死ぬ、とか、誰か助けて!とか、さんざん喚き散らしたと思う。
でも、間に合わない、このまま死ぬ、ということも分かった。
年末、師走、歳末、どこもかしこも誰も彼も、隣近所も大家さんも病院も忙しい。
運良く死ぬ前に救急車を呼んでもらえても、病床が空いてないかもしれない。
死ぬ、私は死ぬ。
「生まれ変わるなら、
悪役令嬢でお願いしますーーーーーーーー!!!!!!!!」
断末魔をあげて、意識が真っ暗になった。
そして目を開けた時、私が横たわっていたのは…。
数年使い古してペラッペラの綿布団や、もはや反発しない低反発枕ではなく、
ふっかふかの羽布団と、羽枕が3つも4つも備えられ、ビロードのカーテンで覆われた、天蓋付のベッドだったのだ
散らかった部屋の中で、たまたま無料期間だった漫画の単行本一巻をスマホで読み終えて、私は思わず絶叫していた。
いいな!いいな!だって、現代の知識を持って、いまよりちょっと文明が遅れている世界に行って現代の知識を披露したら天才扱い、令嬢って言うからにはお金持ちで、見た目も美人で、これから破滅ルートに行くかもしれないのを知ってるから、現代の常識レベルで人を気遣えば聖女扱い。転生前は悪役モードで周りに疎まれてるから、人が変わって良い子になったらイケメンにもモテ放題。異世界転生チートものの中でも群を抜いて恵まれてる。恵まれすぎている。
「羨ましい!私も転生して悪役令嬢になりたい!」
もう一回絶叫してから、私は虚しくなって布団に入って眠った。明日も朝早くから日雇いのバイトなのだ。
日雇いバイトはきつい。きつくてしんどくて人気がないけど単純作業で誰にでもできる。それが日雇いだ。
淡々と進む作業はハマると脳汁が出たり、良い人が集まってると奇妙な一体感が生まれて和やかに進むこともある。でも、寒かったり、暑かったり、現場監督がきつい人間だと最悪だ。そして、その日は最悪なほうだった。
現場監督は指示の仕方が曖昧で、曖昧ゆえに理解できないバイトが仕事を間違うと怒鳴り散らし、連帯責任だと言って間違えたバイト以外のバイトも集めてまとめて怒鳴り散らし、お前らはクソだ、だから日雇いしか出来ないんだ、と、人格否定を含めた暴言でこんこんとお説教。しかも吹きっさらしのコンクリートの馬鹿でかい倉庫で。
寒くて死にそうになりながら棒立ちで怒鳴られながら30分。
「お前らのせいで仕事が遅れたから休憩はなし!シートに変なこと書くんじゃないぞ!」
日雇いバイトは世間体的には派遣社員である。
派遣会社と契約して、そこから、その日その日で別の現場に送られる。その際、どこどこの会社で何時から何時まで働きました、休憩は何時間でした。ということを記録シートに残す。現場の判断で休憩をとりあげられたら、休憩は無かった、と記録しなくてはならない。現場監督は、それをするなと言ったのだ。割と良くある話だ。
曖昧な指示で現場を混乱させ、喚きちらす監督の下でトータル8時間、段ボールに品物を詰めたり出したり運んだりを繰り返し、ようやく上がりと言われて記録シートを取り出しながら、周りの様子を伺った。
休憩時間の項目に、1時間、と記入する数人のバイトの姿を確認してから、私も、1時間、と記録して、持参したペンケースにボールペンを仕舞う。
交通費は自費だ。この現場には二度と来ねえ、と決心する。けど、他に仕事が無かったらまた来ることになるんだろうなあ。
ため息を吐きながら、帰り道の自販機でホットコーヒーを買って飲む。温かい液体が気道を降りてゆくと、じんわりと癒される。
カフェインの取りすぎは良く無いとか、温かい飲み物でも取りすぎると水分で体が浮腫んで云々とか、Twitterでフォローしてる薬学の先生が言ってたけど、今この瞬間、体を暖めなければ心が死んでしまう。
コンビニで甘いお菓子も買った。
糖分の取りすぎは~と、やっぱり頭の中の偉い先生が言うけど、これも、今食べて気分を上げないと死んでしまう。無駄遣いで、体に悪くても、いま、この瞬間に自分を癒さないと、きっと、家に帰り着くことさえ出来ない。
泣きそうになりながら自宅のアパートに着き、なんとかシャワーを浴びてカップ麺を食べて歯を磨いて布団に入った。
シャワーを浴びた私、えらい!
歯を磨いた私、えらい!
こんなに疲れて悲しくてボロボロなのに、ちゃんと生きてて、偉い!!!!!私万歳!!!!
心の中で虚しく絶叫しながら瞼を下ろす。
その瞬間、ドクンッと、心臓が大きく脈を打った。
その1回目で、これは、ヤバいやつだ、と分かった。
大きいとは言っても、通常より少し大きいかな?くらいのものだった鼓動は、どんどん大きくなる。
ドクンドクンドクンドクン。
息が苦しくなった。体かガクガクと震え始める。寒くてたまらないのに冷や汗が出る。
これ、死ぬやつだ。
恐怖と混乱で耳が良く聞こえなくなっていたけど、多分、死ぬ、とか、誰か助けて!とか、さんざん喚き散らしたと思う。
でも、間に合わない、このまま死ぬ、ということも分かった。
年末、師走、歳末、どこもかしこも誰も彼も、隣近所も大家さんも病院も忙しい。
運良く死ぬ前に救急車を呼んでもらえても、病床が空いてないかもしれない。
死ぬ、私は死ぬ。
「生まれ変わるなら、
悪役令嬢でお願いしますーーーーーーーー!!!!!!!!」
断末魔をあげて、意識が真っ暗になった。
そして目を開けた時、私が横たわっていたのは…。
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