400字以内のダメ人間ショートショート

磁石大好きな男の子がコイン博物館に行った結果

　ウチの息子の玲音（れお）は6歳だが、最近磁石にはまっている。
　それを使ってスプーン、時計、私のイヤリングなど、なんでもくっつけて遊んでいた。

　ある日、私は玲音とともにコイン博物館へ行った。
　私はそのなかで「ウィーン金貨ハーモニー」に目を奪われた。
　オーストリア発祥で、99.99％以上純金とされる。
　私が玲音の手を引いて、そこから歩き出したときだった。
「ねえねえ、ママ。これがくっついちゃった」
　玲音がいつのまにか磁石を持っていて、コインをそこにくっつけていた。
　まぎれもなくウィーン金貨ハーモニーだ。 
「僕、勝手に持っていっちゃダメだよ」
　従業員があわてて磁石から金貨を外す。しかし周囲は、その従業員に白い目を向けていた。
「純金って、磁石にくっつかないんじゃないの？」
「ねえ、それって偽物でしょ」
　従業員は周囲に核心をつかれ、言葉を失った。こうして博物館は、偽金貨の問題でメディアから叩かれた。