Alice in the Darkness~闇の国のアリス~

闇狐

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一章「月夜のメルスケルク」

第二夜[窃盗のマッチ売り]

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[メルスケルク中央通り]

『夜のアリス』こと少女アリスは、夜の九時を回ったメルスケルク中央通りの繁華街を一人ぶらぶらと散歩していた。

「流石のメルスケルクの繁華街もこの時間帯になると過疎っ過疎ね‥‥。人影も疎らでなんも面白くないわ」

退屈してあちらこちらをふらふらと徘徊し始めるアリス。
すると‥‥

??「マッチは要りませんかー?あ、そこのお方、マッチはいかが‥‥」

「五月蝿い!どけ、邪魔だ小娘!!」

「ひゃあ!?」

通行人の男に突き飛ばされ、尻餅をつく少女。
見るからに痩せ細っていて今にでも倒れてしまいそうだ。

「あぁ、せっかくの売り物のマッチが‥‥」

地面に散らばったマッチ箱とマッチ棒を必死になって掻き集める少女。
偶然その前を通り掛かったアリスは‥‥

「大丈夫?」

「え?ええ、何とか‥‥」

「貴女本当に大丈夫?顔色悪いわよ?それにそんなに窶れて‥‥ちゃんと食事は摂ってるの?」

「‥‥‥」

不意に黙り込む少女。
しかしアリスは少女が心配で堪らない。
彼女はの目元には日頃の疲労が溜まっている証拠であろう隈がどんよりと浮き出ている。

「御心配どうもです。でも本当に大丈夫ですから‥‥」
 
ふらふらとした覚束無い足取りで歩き始める少女。
しかし、次の瞬間。

「ゴラアァァァァァァァァァァァァァァア!!!」

遠方からガタイの良い大男が少女目掛けて全速力で走って来た。

「!!」

少女は過労のあまりもう走る力は残されていない。
そして少女はその場で頭を抱え、膝を着いて倒れ込んだ。

「お許し下さい‥‥!お許し下さい‥‥!」

「テメェ、よくもうちの店のマッチを盗みやがったな!お陰でうちの経営はガタ落ちだ!一遍地獄に行きやがれ!!」

憤怒する男は何度も少女の軟弱な身体を蹴り付け、挙げ句の果てには胸倉を掴んで剥き出しになった腹を拳で殴打する程でもあった。

「カハッ!?」

少女は再び倒れ込み、その場で腹を抑えて悶え苦しんだ。

「お許じ‥‥ゲホッゲホッ‥‥お許じぐだざい‥‥!」

夜の街に響き渡る少女の断末魔。
その悲愴的な光景に対して、見るに見兼ねたアリスは、透かさず少女を庇いに入った。

「もうやめてあげて!お金は持ってないけど‥‥でも、その代わりになる『物』なら持ってるわ!」

透かさず自らが着ているエプロンドレスのポケットに手を突っ込むアリス。
そこから出てきた『物』とは‥‥

「‥‥ヒィッ!?こいつは魂消た‥‥!‥‥ダイヤの原石だと‥‥!?」

何とそこから出てきた物とは、直径15cm程のダイヤの原石であった。
その石は、どの宝石よりも負けず劣らず強い光輝を放っている。

「私のパピーが仕事場の鉱山で拾って来た物よ。私の宝物だけど、仕方ないわ。これを貴方にあげるから、金輪際、この子には一切手出しはしないで」

「わ、分かった。チッ‥‥命拾いをしたな!」

そう言い残すと男は喜びの声を上げながらそそくさと去っていった。

「貴女も貴女よ。こんな愚行に走る前に少しは脳みそを使いなさい。親が悲しむわよ」

アリスにこっ酷く叱られ牽制される少女。
すると少女は、掠れた声でこう言い放った。

「私‥‥お父さんとお母さん‥‥いない‥‥」

「えっ‥‥」

少女の衝撃的な一言に口を塞ぎ驚きを隠せないアリス。
少女は再びその場に倒れ込み、気を失った。

「ちょっと貴女大丈夫!?凄い熱‥‥」

突然の出来事に対し、アリスは当惑の色を見せたが、直ぐ様冷静さを取り戻し、名の知れぬ少女を負ぶって母が待っている自宅へと直行した。

「もう何でこうなるのよ!!」

アリスは少しばかり蟠りを抱いてしまったようであった。

【アリス宅】

「う、うーん‥‥此処は‥‥?」

「あら、やっと目を覚ましたようね。アリス、例の子が起きたわよ」

少女はアリス宅の寝室のベッドで寝かされ、暫くの間眠っていた様だ。

「貴女は‥‥」

「私?私はジャンヌ。アリスの母親よ」

「アリス‥‥」

顔を上げ、起き上がろうとする少女。

「イテテッ‥‥」

「ああ、そんな無理して起きなくても良いわよ。今は安静にしてて‥‥」

「‥‥はい」

トントントントントン‥‥
一階から階段を上がって来る足音が聞こえてくる。

「‥‥やっと起きたみたいね。はいこれ、蜂蜜トーストと苺。無理しなくて良いから自分のペースで食べて」

そう言うとアリスはトーストと苺が入った器が乗っている盆を少女が寝ているベットの横の小さい円卓上に乗せた。

「そういや貴女の名前、聞いてなかったわね。貴女の名前は?」

ジャンヌが尋ねた。

「エリカ‥‥」

「エリカ‥‥良い名前ね。」

「そういえば貴女。親がいないって言ってたわね。それは何で?」

藪から棒にアリスが問い掛けた。

「知らない‥‥私知らないわ‥‥!だってあの人達、『買い物に行く』って言った限り帰って来ないんだもの‥‥!家主さんには『家賃が払えないなら出て行け!』って言われたし‥‥もう私‥‥分からないわ‥‥!」

エリカは顔をくしゃくしゃにしながらアリスの問い掛けに答えた。

「可哀想な子ね‥‥。分かったわ。アリス、少しの間この子を家に置いてあげましょう。聞きたい事も沢山あるし‥‥」

「えっ、でもマミ‥‥!!」

反論しようとするアリスの首元にナイフを突き付けるジャンヌ。 

「異論は無いわね?」

「‥‥分かったわ‥‥」

この後、彼女達は問答を重ね、最終的にはエリカを養子として受け入れる事になった。
今宵も満月が彼女達の微笑みを照らしだす。

「早く早く、行くわよエリカ!夜のメルスケルクは最高よ!!」

「待ってよ御姉ちゃん!」

第二夜[窃盗のマッチ売り] 【完】

【第三夜へ続く】
………………………………………………………………………………‥

【マッチ売りの少女(エリカ・ノーラン)】

・メルスケルク中央通りにてマッチを売り続ける少女(尚マッチは人様の家から盗み取ったものの模様)

・ホームレス

・元々は三人家族だったが、ある時、両親が買い物に出掛けたっきり帰って来ず、そのまま蒸発。

・13歳

・孤児

・マッチは一箱55※ピソカと比較的安め
※1ピソカ=1円

・いつもお腹を空かせ、メルスケルク中央通りの中にあるパン屋で本来は廃棄処分される予定の※『食パンの耳』を頂いて飢えを凌いでる
※一袋26ピソカ

・エリカ(花名)の花言葉は『孤独』。
その他にも『博愛』・『希望』等沢山有ります。

【ジャンヌ・ウィンターソン(母)】

・アリスの実母

・34歳

・18歳の時にミントンこと『おじさん』とメルスケルクに行った事をきっかけに移住を決意

・専業主婦

・武器は投げナイフとサバイバルナイフ

※詳しい設定は前作の『Little Red Riding Hood』を参照

【ジェフ・ウィンターソン】

・アリスの実父

・37歳

・石炭採掘(鉱業)を生業とする
 
・住み込みで仕事に勤しんでる為、中々家に帰る事が出来ない
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