クールな幼なじみが本気になったら

中小路かほ

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文化祭で愛を誓ったら

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セミが合唱する暑い夏が終わり――。

夏服から冬服に衣替えする秋。


少し肌寒い風が吹くことはあるけど、秋晴れの気持ちよい天気が続く…10月の下旬。


今日は、待ちに待った文化祭!

各クラスの出し物が教室で行われ、校舎内は賑わっている。


周りは仲のいい友達とまわったり、付き合っているカップルは2人で見てまわったりしている。


わたしもりっくんとまわれたら…。

そんな願望はあるけれど、そんなことをしたらすぐに付き合っていることがバレてしまう。


せっかくこの5ヶ月、周りには知られずに平凡なお付き合いをしていたのに。


だからわたしは、芽依といっしょにまわる約束をしていた。


そもそも、りっくんと付き合っていることがもしバレていたとしても、この文化祭はりっくんとはまわれなかった。


なぜなら――。



「見て見て!生のミュウ、かわいすぎないっ!?」

「顔ちっちゃい~!うらやましい~!」

「今、手振ってくれたよ!」


人だかりから、そんな声が飛び交う。

グラウンドにできたその人だかりを、隣にいる芽依は遠目で見ながらため息をついている。


「律希くんの人気もすごいけど、ミュウの人気もすごすぎっ」


さっきから聞こえる『ミュウ』という名前は、人気女子高生モデルのことだ。


ミュウちゃんが専属モデルを務めるティーンズ雑誌の企画で、『文化祭デート』という特集をするんだそう。

わたしの学校が他よりも早く文化祭を行うということで、ここで『文化祭デート』の撮影をすることになったのだ。


『デート』と言うからには、ミュウちゃんの相手役の男の子が必要。

それが、りっくん。


りっくんがミュウちゃんの彼氏役で、文化祭を楽しむカップルの様子を撮影するのが目的だ。


わたしは、その撮影のことを事前にりっくんから聞かされていた。

だから、初めからりっくんと文化祭をまわることはできないのだ。


メンズファッション誌の枠を越えて、りっくんは今やティーンズ雑誌にまで進出している。

ティーンズ雑誌の彼氏役と言えば、だいたいはりっくんになるのだ。


「あたしはミュウにそんなに興味ないから、しずく行こ!」


ミュウちゃんをひと目見ようとグラウンドへ向かう生徒をかわして、芽依はわたしの手を引いた。



芽依とは、いっしょにコスプレをして写真を取ったり、メイド喫茶に行ったりと、各クラスの出し物を満喫した。


だけど、行くところ行くところに、ミュウちゃんとりっくんの撮影に遭遇して…。


「2人、手を繋いでカメラ目線で!」

「律希くんは、後ろからミュウちゃんを抱きしめる感じで」

「キスしそうなくらいまで、顔を近づけてみて!」


カメラマンさんのそんな指示が聞こえ、思わず視線がそちらに行ってしまう。


りっくんが女の子と手を繋いだり、抱きしめたりするのは、『モデルのお仕事』だということはわかっている。


…だけど、やっぱりあまり見たくないというのが本音。


「ミュウと律希くん、超ラブラブ~♪」

「本当に付き合ってるみたい!」


それに加えて、そんな声まで聞こえたら…。


…わたしたちって、本当に付き合っているのかな。

なんていう不安を抱いてしまったりしてしまう。



「しずく、そんなに律希くんのこと…気になるっ?」


上の空だったわたしに気づいて、芽依が声をかける。

その声にハッして、我に返る。


決して、芽依とまわる文化祭がつまらないというわけではない。

楽しいんだけど、どうしてもりっくんのことが…。


シャッターごとに瞬時にポーズを決めるりっくん。

ミュウちゃんとの息もピッタリだ。


普段見ることのない『モデルの律希』の顔。

それはそれで、とってもかっこいいんだけど…。


ずっと胸がモヤモヤする。


「彼女なのに、陰からしか見ることができないって…なんか寂しい」


あれだけ、周りには騒がれたくないと言ってヒミツのお付き合いをしていたけど、こういうときだけわたしを見てほしいなんて思ってしまう…。

…わたしって、わがままだ。


「りっくん忙しそうだし、きっとわたしの存在に気づいてないよね」


人だかりにも囲まれて、それどころではないだろうし。
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