初恋の王子様

中小路かほ

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王子様と初デート

2P

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fromほのか
優馬くん…大丈夫?
あたしのことは気にしないで!
この休みの間に、風邪治るといいね。
お大事に。


あたしなんかよりも、自分の体の心配をしてほしい。

それでも、あたしとの待ち合わせを気にしてくれるところは、やっぱり優馬くんの優しさだなぁ…。


あたしはそう思いながら、そっと携帯をバッグの中にしまった。


優馬くんとのデート…。

楽しみにしていたけど、風邪なら仕方ないよね…。


デートの予定もなくなってしまった。

なにしようかな…。


とりあえず、家に帰るしかないよね。


そう思い、くるりと振り返ると――。


「…ハァ、ハァ。ほのかちゃん…!」


名前を呼ばれて顔を上げて驚いた。


なんとそこには、風邪でこられないとさっき連絡のあった、優馬くんが立っていた。


「…優馬くん!なんでここに…!?」

「よかったー…。もう帰っちゃったのかと思ったよ」

「…ちょうど、今から帰ろうとしてたところだけど…。それよりも大丈夫なの…?」

「…大丈夫って、なにが?」


キョトンとした顔を見せる優馬くん。


「だって、風邪引いちゃったんでしょ…!?だから今日これないって、さっき…」


当の本人の優馬くんから、そうメッセージががきて…。


だけど、あたしの前に立つ優馬くんは、走ってきたのか肩で息をしているくらいで、体調が悪いようには見えない。


すると、なにかを思い出したように優馬くんが頷いた。


「こられないと思ったから、俺がここにきて驚いた?」

「そりゃ、驚くよ。風邪引いちゃったって連絡あったのに、振り返ったらいるんだもん…!」

「へへへ…♪ほのかちゃんを驚かせようと思って」

「…え、そうなの?…じゃあ、風邪でもなんでもないの?」

「うん、心配させてごめんね。ただの冗談だから!」

「なんだ~、よかったぁ」


てっきり、本当に風邪で寝込んでいると思ったから…。

元気な優馬くんの姿を見て、安心した。


そんな冗談を言って、無邪気な笑顔を見せるところも優馬くんらしい。


「じゃあ行こうか、ほのかちゃん」

「うん!」


あたしは満面の笑みでそう答えて、優馬くんのあとをついて行った。


優馬くんが『当日のお楽しみ』と言っていたから、今日どこへ行くのかは、あたしはまったく知らない。


連れてこられた場所は、白の外壁のオシャレなカフェ。


「ここ知ってる!」


見覚えのあるお店に、あたしの期待が高まった。


前にアミと見た、雑誌のスイーツ特集のページに載っていたお店だ。

2ヶ月ほど前にオープンして、ここのスフレ風のパンケーキが絶品だとかで。


あまりにも人気で、予約して行かないと、2時間待ちは当たり前だと雑誌に書かれてあった。


もしかして、優馬くん。

今日のために、予約してくれたのかな…!?


…しかし。


「申し訳ございません。ただ今、大変混み合っておりまして…。ご予約がなければ、最短でも2時間程度の待ち時間となっております」


お店に入ってすぐに、店員さんにそう断られた。


「…2時間も!?まさか、そこまでとは…」


優馬くんは予想外といったように、目を丸くして驚いていた。


そしてふと、優馬くんは左腕にはめた腕時計に目を移す。

シルバーのベルトの腕時計が、キラリと光る。


腕時計なんて、普段学校にしてこないから、その仕草に思わずドキッとしてしまった。


「ごめんね、ほのかちゃん。さすがに2時間は、待てないよね…」

「あたしは、べつに構わないよ」

「…いや。せっかくの時間がもったいないから、移動しよう。俺、ほかの店も知ってるから!」


どうやら、ほかの候補のお店もあるみたい。


あたしは優馬くんとなら、長時間並んでもよかったんだけど。


けどあたしはここで、少し疑問に思ったことが…。


このスフレ風のパンケーキのカフェの記事を読んでいたとき、優馬くんもいっしょにいた。


「予約が必要なんだ~!すごい人気のお店なんだね」


と、そのとき言っていた優馬くん。


だから、ここのカフェが超人気店ってことは知っているはず…。


なのに、“2時間待ちなんて初耳…!”という風な反応を見せた優馬くん。

あのときはああ言ってたけど、もしかして優馬くん、うっかり忘れてたのかな?


次に連れて行ってもらったところも、パンケーキのお店。

多少並んだけど、30分くらいで店内に入れた。


あたしは、ストロベリーがたくさん乗ったパンケーキにした。


即決したあたしとは逆に、優馬くんはメニューとにらめっこ…。

…かなり悩んでいるみたい。


でも結局、バターとメイプルシロップがかかったプレーンのパンケーキを選んでいた。


「ほのかちゃん、ドリンクはなににする?」

「あたしは、フルーツミックスジュースにする!」

「そっか。じゃあ俺は、ホットコーヒーで」


店員さんにそう伝えて、優馬くんはメニューを閉じた。


「お砂糖とミルクはいかが致しましょうか?」

「ブラックでお願いします」


それを聞いて、あたしはとっさに優馬くんのほうを振り返る。


“ブラックでお願いします”


さっきの優馬くんの言葉が、頭から離れない。


だって、優馬くん…。


「…ブラックって、飲めないんじゃなかったの?」


甘い物好きな優馬くん。


とくにホイップクリームが大好きという優馬くんは、お昼に学校で買うパンはホイップたっぷりの練乳クリームパン。

自動販売機で買うジュースは、いつもいちごミルクか甘いコーヒー牛乳だ。


そういうかわいいところも、優馬くんがモテる理由の1つでもある。


それに――。


「俺、ブラック飲めないんだよ」


と、前に優馬くん自身が言ってた。


なのに、今日の優馬くんは、ホイップなしのシンプルなパンケーキに、ブラックコーヒーをオーダー。


…なんか、いつもとちょっと違うような。


「あっ…、そうそう!飲めなかったんだけど、最近飲むようになったんだっ」

「…そうなの?」

「うんっ。飲んでみたら、意外とおいしくて」


なんだ、そうなのか。

あたしが気にするようなことでもなかったみたい。


それから、パンケーキを頬張りながら、2人でいろんな話をした。

他愛もない話だけれどどれもおもしろくて、あっという間に時間が過ぎていった。


「お食事中のところ、申し訳ございません。そろそろ、お席の方が2時間になりまして…」


楽しそうに話すあたしたちのところへ、申し訳なさそうな顔をして店員さんがやってきた。


席は、2時間制。

あとにもまだ並んでいる人がいるから、出なくてはならない。


「ほのかちゃん。俺、ちょっとトイレ行ってくるから、それまでゆっくりしてて」

「…あ、うんっ。ありがとう」


あたしが慌てて準備をしていたからか、優馬くんがそう言ってくれた。


「…そうだ!今日って、何時までいっしょにいれそう?」

「今日…?6時には帰るって言ったけど、先に連絡を入れておけば大丈夫だと思う」

「…よかった!」


優馬くんは優しく微笑むと、席を立った。


優馬くんが席を外して、少ししてから気づいたけど…。

テーブルにあったはずの伝票がなくなっていた。


もしかして、優馬くんが…。


トイレに立つフリをして、お会計を済ませてくれるなんて、紳士的すぎてまた惚れ惚れしてしまう。


…あとで、ちゃんとお礼言わなくちゃ!


そのとき、テーブルに置きっぱなしにされていた優馬くんの携帯が目に入った。

どうやら、置き忘れているようだ。


優馬くんに渡そうと、あたしはその携帯に手を伸ばす。


すると、ちょうどメッセージが入ったようでパッと画面が明るくなった。


――べつに、見るつもりなんてなかった。


だけど、画面の明るさに無意識に反応して…視線が勝手にそちらに向けられた。

優馬くんの携帯のロック画面が目に入り、あたしは一瞬固まった…。
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