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幕末剣士、未来へ
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「でも、もうタイムスリップができるわけないし…。それに、“宗馬”って名前…」
突然現れた宗治のような宗馬に、わたしはただただ混乱するばかり。
頬を痛いくらいに引っ張ってみるけど…。
やっぱり痛かった。
なんとか落ち着き、話を聞く。
厳密に言うと、わたしの目の前にいる人物は『春日井宗治』ではなくて、『春日井宗馬』。
青柳中学校に通う、中学3年生だ。
そして、宗治の子孫にあたる。
宗治はわたしと別れたあと、都子姫とは結婚しなかった。
わたしが考えていたように、宗治も自分が都子姫と結婚してしまったら、生まれるはずだった人が生まれてこなくなることをわかっていたんだそう。
「…都美、お前な。お前たち家族を犠牲にしてまで、俺が都子姫と結婚しようと思うかよ」
なぜかデコピンされてしまった。
わたしが現代に帰って2年後、宗治が仲を取り持ち、都子姫と壱さんが結婚。
その10年後、宗治はお見合い相手と結婚した。
そうして、現在に至る。
話の辻褄は合うのだけれど、まだ夢を見ているような感覚だ。
そう簡単に、目の前にいるのが宗治だとは理解できない。
そんなわたしに、あるものを差し出した。
「これ、ずっと蔵に保管してたものなんだけど…」
それは、縦縞模様の古くて黒い布…。
見覚えがあると思ったら、それはお母さんが宗治に作った甚平だった!
裏地には、【SOUJI】と名前の刺繍が施されている。
…間違いない。
春日井宗馬は、前世の記憶を受け継いだ宗治の生まれ変わり。
だから、わたしとの思い出も記憶もすべて覚えていた。
そう。
わたしたちが両想いだったということも。
「よくも、俺のことは好きじゃないだの、散々捨て台詞を吐いてくれたものだな」
「ご…ごめん」
まさか、あのときのことを説教される日がくるとは思ってもみなかった。
「もし俺が、未来が変わると気づいてなかったとしても、都子姫と結婚する選択肢なんてなかった。俺が好きなのは、お前なんだからっ」
「宗治…」
「俺、言ったよな?『必ず会いにいく』って。『未来でまた好きになる』って」
…覚えている。
『必ず会いにいく…!そして、未来でまた都美を好きになる!だからっ…』
『だから…!そのときは、ずっと俺のそばにいてくれ!』
宗治に言われたのは、幕末の時代だけれど…。
わたしにとっては、つい昨日のことのように感じる。
宗治は、桜の木の下でそっとわたしを抱き寄せた。
「また都美に会いたくて、こうして未来にやってきた。だから、ずっと俺のそばにいろ」
ぎゅっと抱きしめられ、わたしは宗治の腕の中で大きくうなずいた。
「…好き。大好き」
「俺もだよ。今度は絶対に離さない」
わたしたちは見つめ合うと、そのままゆっくりと唇が重なった。
その後、宗治…ではなくて、宗馬を家族に紹介したら、みんな引くくらいに驚いていた。
その中でも一番喜んでいたのは朔で、宗馬とは定期的にゲームをして遊ぶ仲に。
宗馬は恐ろしく剣道が強く、夏休みに行われたわたしたちの引退試合でも、宗馬がいる青中が決勝戦で神代中学を破り優勝した。
去年に引き続き、2連覇だ。
宗馬は最後の試合で有終の美を飾り、わたしにとってはうれしいような、悔しいような。
そんな複雑な気分だった。
神代中学は準優勝止まりかと思われていたが、その1年後、怒涛の優勝ラッシュが巻き起こる。
それはわたしの弟である朔が、神代中学校の剣道部に入部したから。
朔は頭角を現し、1年生にして大会の優勝を次々とかっさらっていった。
というのも、宗治に腕を認められ、朔は再び剣道に打ち込むように。
稽古は、宗馬がつけるようになった。
あれだけ、『剣道よりもサッカー』と言っていた朔はもういない。
竹刀を握ると目つきが変わるのは、宗治や宗馬にそっくりだ。
そのおかげで、サッカーをしていたときよりも女の子からモテてるらしい。
わたしは、剣道の強豪校である高校に進学し、そこでもマネージャーをしている。
そして、わたしが応援する視線の先には、竹刀を振るう宗馬の姿が。
宗馬は推薦でこの高校に入り、当然のことながら剣道部のエースに。
わたしと宗馬は同じ学校、同じクラスになり、毎日楽しく仲よく過ごしている。
わたしたちを隔てるものは、もうなにもない。
これからは、ずっといっしょだ。
わたしたちの想いは時を越え、未来へと続くことだろう。
『時をこえて、またキミに恋をする。』【完】
突然現れた宗治のような宗馬に、わたしはただただ混乱するばかり。
頬を痛いくらいに引っ張ってみるけど…。
やっぱり痛かった。
なんとか落ち着き、話を聞く。
厳密に言うと、わたしの目の前にいる人物は『春日井宗治』ではなくて、『春日井宗馬』。
青柳中学校に通う、中学3年生だ。
そして、宗治の子孫にあたる。
宗治はわたしと別れたあと、都子姫とは結婚しなかった。
わたしが考えていたように、宗治も自分が都子姫と結婚してしまったら、生まれるはずだった人が生まれてこなくなることをわかっていたんだそう。
「…都美、お前な。お前たち家族を犠牲にしてまで、俺が都子姫と結婚しようと思うかよ」
なぜかデコピンされてしまった。
わたしが現代に帰って2年後、宗治が仲を取り持ち、都子姫と壱さんが結婚。
その10年後、宗治はお見合い相手と結婚した。
そうして、現在に至る。
話の辻褄は合うのだけれど、まだ夢を見ているような感覚だ。
そう簡単に、目の前にいるのが宗治だとは理解できない。
そんなわたしに、あるものを差し出した。
「これ、ずっと蔵に保管してたものなんだけど…」
それは、縦縞模様の古くて黒い布…。
見覚えがあると思ったら、それはお母さんが宗治に作った甚平だった!
裏地には、【SOUJI】と名前の刺繍が施されている。
…間違いない。
春日井宗馬は、前世の記憶を受け継いだ宗治の生まれ変わり。
だから、わたしとの思い出も記憶もすべて覚えていた。
そう。
わたしたちが両想いだったということも。
「よくも、俺のことは好きじゃないだの、散々捨て台詞を吐いてくれたものだな」
「ご…ごめん」
まさか、あのときのことを説教される日がくるとは思ってもみなかった。
「もし俺が、未来が変わると気づいてなかったとしても、都子姫と結婚する選択肢なんてなかった。俺が好きなのは、お前なんだからっ」
「宗治…」
「俺、言ったよな?『必ず会いにいく』って。『未来でまた好きになる』って」
…覚えている。
『必ず会いにいく…!そして、未来でまた都美を好きになる!だからっ…』
『だから…!そのときは、ずっと俺のそばにいてくれ!』
宗治に言われたのは、幕末の時代だけれど…。
わたしにとっては、つい昨日のことのように感じる。
宗治は、桜の木の下でそっとわたしを抱き寄せた。
「また都美に会いたくて、こうして未来にやってきた。だから、ずっと俺のそばにいろ」
ぎゅっと抱きしめられ、わたしは宗治の腕の中で大きくうなずいた。
「…好き。大好き」
「俺もだよ。今度は絶対に離さない」
わたしたちは見つめ合うと、そのままゆっくりと唇が重なった。
その後、宗治…ではなくて、宗馬を家族に紹介したら、みんな引くくらいに驚いていた。
その中でも一番喜んでいたのは朔で、宗馬とは定期的にゲームをして遊ぶ仲に。
宗馬は恐ろしく剣道が強く、夏休みに行われたわたしたちの引退試合でも、宗馬がいる青中が決勝戦で神代中学を破り優勝した。
去年に引き続き、2連覇だ。
宗馬は最後の試合で有終の美を飾り、わたしにとってはうれしいような、悔しいような。
そんな複雑な気分だった。
神代中学は準優勝止まりかと思われていたが、その1年後、怒涛の優勝ラッシュが巻き起こる。
それはわたしの弟である朔が、神代中学校の剣道部に入部したから。
朔は頭角を現し、1年生にして大会の優勝を次々とかっさらっていった。
というのも、宗治に腕を認められ、朔は再び剣道に打ち込むように。
稽古は、宗馬がつけるようになった。
あれだけ、『剣道よりもサッカー』と言っていた朔はもういない。
竹刀を握ると目つきが変わるのは、宗治や宗馬にそっくりだ。
そのおかげで、サッカーをしていたときよりも女の子からモテてるらしい。
わたしは、剣道の強豪校である高校に進学し、そこでもマネージャーをしている。
そして、わたしが応援する視線の先には、竹刀を振るう宗馬の姿が。
宗馬は推薦でこの高校に入り、当然のことながら剣道部のエースに。
わたしと宗馬は同じ学校、同じクラスになり、毎日楽しく仲よく過ごしている。
わたしたちを隔てるものは、もうなにもない。
これからは、ずっといっしょだ。
わたしたちの想いは時を越え、未来へと続くことだろう。
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