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君と出会った
莉子side 3P
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「これ、自分のとちゃう?」
大きな手のひらの中にあったのは、丸みを帯びた白いもの。
…これ。
失くしたと思っていた、わたしのワイヤレスイヤホンのケースだ。
「なんで…これ」
「コンビニに落としてたで。たぶん、俺とぶつかったときに」
「…ぶつかった?」
そうつぶやいてすぐに、引っ越し初日のことを思い出した。
そういえば、コンビニのイートインスペースで、カフェオレを飲んでいたとき――。
「あのときの…野球部!?」
「…野球部?…ああ、あのときは野球チームのメンバーでなっ。こいつもそのとき、そこにおったし」
そう言って、隣にいた男の子に目を向ける。
なんとなく見覚えのある顔だと思ったら、あのときわたしがぶつかった野球部――。
じゃなくて、野球チームの男の子だったんだ。
「あのあと追いかけたんやけど、見失って渡せへんかってん」
…追いかけた?
『…あっ!ちょっと待ってや!』
あのときのあれは、そういうことだったのか…!
てっきり、ぶつかったことを怒られるのかと思って…。
「イヤホン充電できひんくて、困ってたんとちゃう?」
「…う、うん。そうなの。ありがとう」
もう戻ってはこないと思っていたから…。
見つかって、すごくうれしい。
「どういたしまして。…って、なんで標準語?」
…やっぱりそこは、違和感を感じるよね。
「わたし、東京から引っ越してきたばかりなの。だから、まだこっちの生活に慣れてなくて…」
「へ~。わざわざこんな田舎に引っ越してきたんやっ。周り、みんな知り合い同士でビビったやろ?」
「…うん。すごく浮いてる感じがするっ」
「まあ、でもみんな悪いヤツとちゃうし、そのうち仲よくなれるから大丈夫やって!」
「あ…ありがとう」
ほんとに周りは知らない人ばかりだから、偶然だったとはいえ、前に出会った顔なじみの人がいて、少しだけ安心した。
「…で。そこ…、わたしの席なんだけど…」
「ああ、そやったな。勝手に座ってて、ごめんごめん!」
言えばちゃんと席を譲ってくれたし、わたしのイヤホンケースをずっと持っていてくれていた。
それだけで、優しい人なんだろうなとはなんとなく思った。
「そういえば、名前は?」
「…え?えっと…、桜庭です」
「ちゃうちゃう!下の名前っ」
「下…!?桜庭…莉子です」
「莉子なっ。俺は、矢野大河。こっちは悠』
いきなり下の名前で呼ばれて、少しびっくりした。
「大河くんと…、悠くん…」
「大河でええよ!」
まだクラスの雰囲気に溶け込めていないわたしに、強引に入ってくる大河。
それに少し戸惑ったけど、そのおかげでわたしはこのとき、このクラスでよかったかもと思えた。
偶然同じ中学で、偶然同じクラスになって、偶然大河がわたしの座席に座っていた。
でもこれが、わたしと大河の始まりだった。
大きな手のひらの中にあったのは、丸みを帯びた白いもの。
…これ。
失くしたと思っていた、わたしのワイヤレスイヤホンのケースだ。
「なんで…これ」
「コンビニに落としてたで。たぶん、俺とぶつかったときに」
「…ぶつかった?」
そうつぶやいてすぐに、引っ越し初日のことを思い出した。
そういえば、コンビニのイートインスペースで、カフェオレを飲んでいたとき――。
「あのときの…野球部!?」
「…野球部?…ああ、あのときは野球チームのメンバーでなっ。こいつもそのとき、そこにおったし」
そう言って、隣にいた男の子に目を向ける。
なんとなく見覚えのある顔だと思ったら、あのときわたしがぶつかった野球部――。
じゃなくて、野球チームの男の子だったんだ。
「あのあと追いかけたんやけど、見失って渡せへんかってん」
…追いかけた?
『…あっ!ちょっと待ってや!』
あのときのあれは、そういうことだったのか…!
てっきり、ぶつかったことを怒られるのかと思って…。
「イヤホン充電できひんくて、困ってたんとちゃう?」
「…う、うん。そうなの。ありがとう」
もう戻ってはこないと思っていたから…。
見つかって、すごくうれしい。
「どういたしまして。…って、なんで標準語?」
…やっぱりそこは、違和感を感じるよね。
「わたし、東京から引っ越してきたばかりなの。だから、まだこっちの生活に慣れてなくて…」
「へ~。わざわざこんな田舎に引っ越してきたんやっ。周り、みんな知り合い同士でビビったやろ?」
「…うん。すごく浮いてる感じがするっ」
「まあ、でもみんな悪いヤツとちゃうし、そのうち仲よくなれるから大丈夫やって!」
「あ…ありがとう」
ほんとに周りは知らない人ばかりだから、偶然だったとはいえ、前に出会った顔なじみの人がいて、少しだけ安心した。
「…で。そこ…、わたしの席なんだけど…」
「ああ、そやったな。勝手に座ってて、ごめんごめん!」
言えばちゃんと席を譲ってくれたし、わたしのイヤホンケースをずっと持っていてくれていた。
それだけで、優しい人なんだろうなとはなんとなく思った。
「そういえば、名前は?」
「…え?えっと…、桜庭です」
「ちゃうちゃう!下の名前っ」
「下…!?桜庭…莉子です」
「莉子なっ。俺は、矢野大河。こっちは悠』
いきなり下の名前で呼ばれて、少しびっくりした。
「大河くんと…、悠くん…」
「大河でええよ!」
まだクラスの雰囲気に溶け込めていないわたしに、強引に入ってくる大河。
それに少し戸惑ったけど、そのおかげでわたしはこのとき、このクラスでよかったかもと思えた。
偶然同じ中学で、偶然同じクラスになって、偶然大河がわたしの座席に座っていた。
でもこれが、わたしと大河の始まりだった。
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