ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ

中小路かほ

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君と出会った

大河side 1P

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「大河~!コンビニ寄って帰るやろ?」

「そやな。小腹空いたから」


俺は、グローブをエナメルバッグの中にしまいながら返事をした。



俺の名前は、矢野大河。

野球大好きの野球バカで、この春から中学1年生になる。


今日は、小学1年生の頃から所属している野球チームの練習日だった。


白色のストライプの入った紺色のユニフォームのまま、チームメイトとグラウンドを出る。


12時前に昼メシを食ったところなのに、それから2時間近くも練習していれば、さすがに小腹が空いてくる。


だから練習後は、チームメイトとコンビニに行くのが習慣となっていた。


同じ時期に所属した同い年のチームメイト5人と、いつものコンビニに向かう。


今日は、なににしようかな。

なんて考えながら、チームメイトのあとに続く。


「いや~。今日の筋トレも厳しすぎ!」

「あれ、腹筋バキバキになるんちゃう?」

「ノックもやばかった!」


前からそんな会話が聞こえ、俺は後ろのほうで無言で頷いていた。


確かに、この前の練習試合で最後に逆転されたからって、今日の練習メニューはいつもよりハードだった気がする。

だから、まだ昼の2時だけれど、いつもより腹が減っていた。


チームメイトたちとコンビニの中をざっと見てまわり、それぞれが好きなものを手に取る。


俺は、ツナマヨおにぎり2つと、焼きそばパンと、アイスを買うことにした。


「オレ、腹減ったから、ここで食ってくわっ」

「晩メシまでなんもないとか、無理っ」

「それな。練習終わったら、とりあえずなんか食わな気がすまへんし~」


俺が最後に会計をしている間に、向こうのほうからそんな声が聞こえた。

いつもなら、ここからすぐの公園に集まって、芝生の上に寝転がりながらして食べるけど、どうやら今日は腹が減りすぎて、そこまで保たないらしい。


チームメイトたちが、イートインスペースに座っているのが見えた。


「大河~!お前もこっちで食べるやろ~?」

「ああ」


そんなに今すぐ食べたか?

と思いつつも、俺も会計を済ませるとそちらへ向かう。


俺を待つことすらできないのか、すでにパッケージを破く音すら聞こえる。


しかし、俺がイートインスペースを覗くと、席は全部で6つ。

5つはチームメイトで埋まっていたが、残りの1つには女子が座っていた。


「…あっ。でも、大河の席空いてへんかったわ」


一番端のヤツが、メロンパンを頬張りながら言っている。


「それなら、オレといっしょに座ったらいいやん!」


すると、その隣のヤツが席を半分空けて、その空いたスペースをバンバンと叩いている。


男が仲よく1つのイスを共有するのは座りづらそうだが、せっかくだしお言葉に甘えて――。


そう思い、近づこうとしたそのとき。


…ドンッ‼


右腕に衝撃が走り、持っていたレジ袋を落としかけた。


見ると、イートインスペースに座っていた女子だった。

俺よりも少し背が低く、おそるおそる俺を見上げているように見える。


「す…すみませんでした…!」


そして、俺と顔を合わせるなり、そう言って逃げるように行ってしまった。


そのコがコンビニを出ようとしたとき、俺の足元に小さな白いケースのようなものが落ちているのに気がついた。


拾い上げると、それはワイヤレスイヤホンのケースだった。


…そういえば、さっきのあのコも耳にイヤホンをしていたような。


――もしかして!


「…あっ!ちょっと待ってや!」


そのコのものかと思い、俺は慌ててあとを追いかけた。


しかし、そのコは俺の声が聞こえると、なぜか急に走り出してしまい、角を曲がったときにはいなくなってしまっていた。


…思ったよりも、足が速かった。


そこは、少し驚きだった。

俺も、一応足には自信があったから。


だけど…。

どうすっかなー、これ。


俺は、イヤホンケースを握りしめる。



「おっ!大河が戻ってきた」

「なにしに行ってたん?」

「さっきのコ、知り合い?それとも、ナンパ?」

「ちゃうちゃう。たぶんイヤホンのケースを落としたみたいで、返そうと思ったんやけど、途中で見失った」


確か、このケースにイヤホンをしまって充電するんだったよな?


つまり、このケースがないとイヤホンが充電できない。


だから、渡したほうがいいと思って追いかけたんだけどな…。


「知らん男がいきなり追いかけてきたら、そりゃビビるやろ!」

「しかも、あのコのものかもわからへんのやろ?」

「落とし物やったら、店員さんに預けといたらいいやんっ」

「てか、ちょうど席空いたんやし、大河早く食べたら?アイス溶けるで?」


…あっ、忘れてた。


ひとまず、店員さんに渡すのはあとにして、俺はさっきまであのコが座っていた席に座った。



そして、帰宅後。


「大河~!ユニフォーム洗えたら、こっちに持ってきてな~」

「はいは~い」


母さんに返事をしながら、俺はユニフォーム姿から部屋着姿へと着替える。


脱いだユニフォームを洗うのは、俺の仕事。

野球チームに所属したときから、それは変わらない。


…えっと、ポケットにはなにも入ってないよな。
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