ありがとう、ばいばい、大好きだった君へ

中小路かほ

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君とすれ違い

大河side 1P

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桜が舞う春。

晴れて莉子と悠といっしょに、明光学園に入学した。


高校生になっても、まさかこの3人と同じになれるとは思ってなかった。


というのも、莉子の学力が絶望的だったから。

べつに、莉子がバカと言っているわけではない。


でも、明光学園の普通科を志望しようと思ったら、それなりの偏差値が必要だったから。


莉子には厳しいんじゃ…。

と思うことは何度もあった。


俺は、明光学園の野球部の練習もあったから、毎日勉強を教えてやれるわけじゃなかった。

空いた時間に見てやれるくらい。


だけど莉子は、俺が出した宿題はちゃんとやってきていたし、スパルタでもなんとかついてきていた。


だから、もしかしたら可能性はあるかもしれないって思い始めたんだ。


そして、その勉強の甲斐あって、莉子は無事に明光学園に合格。

今日、この日を迎えることができたのだ。



俺と悠は、スポーツ科。

莉子は、普通科。


そのため、莉子とは必然的にクラスは離れる。


俺と悠は、運よくまた同じクラスになった。

そして、小学生のときに所属していた野球チームのチームメイトとも、同じクラスでまさかの再会をはたした。


莉子は、1人でどうしてるかな…。

そんなことを思っていたけど、どうやらまったく心配する必要はなかった。



〈さっそく友達できちゃった~♪〉


入学式の日の夜、上機嫌な様子の莉子から電話がかかってきた。


俺たちと出会ったころ、知らない土地にきたばかりということもあって、どこかツンツンしていた莉子。

だけど、根は素直でいいヤツ。


だから、中学でも友達は多かったし、そんな感じで高校でも初日からうまくやっているようだった。

莉子が楽しそうでなによりだ。


…ただ、俺は前みたいにいつでもそばに莉子がいるわけじゃないから、少し寂しかったりもするけどな。


莉子はそんなことは思っていなさそうだから、このことは本人には言わねぇけど。


クラスが違って普段なかなか会えないかわりに、莉子が野球部のマネージャーになったらとも考えていた。

そうしたら、部活中もいっしょだし、帰る時間も同じになるだろうし。


だけど、明光学園の野球部は『部内恋愛禁止』。


一度は莉子をマネージャーに誘ってみたものの、そもそも付き合っている俺と莉子が、同じ野球部に所属できるわけがなかった。


結局、莉子は帰宅部に。

マネージャーになれなくて、落ち込んでいるかと思ったが――。


〈でさ~。駅前のカフェのパフェがめっちゃおいしかったの~♪〉


毎日、新しい友達の名前が出てきて、高校生活を謳歌していた。


〈俺が、吐きそうなくらいの練習してるときに、莉子はずいぶん楽しそうやな〉

〈だって、しょうがないじゃんっ。わたし、放課後暇なんだし〉

〈初めは、野球部に入れへんくてうじうじ言ってたくせに〉

〈まあ、あのときはねっ。でも、試合のときはちゃんと応援行くからさ!〉


そう言ってくれるなら、毎日のハードな練習もがんばらないとな!となる。



そして、入学して1ヶ月がたったゴールデンウィーク。

初めて、他校との練習試合が行われた。


俺はその試合で、まさかのピッチャーで登板することとなった。


周りは、2年生と3年生ばかり。

俺が、ヘマするわけにはいかない。


しかし、レギュラーにもベンチ入りにも、悠の名前は呼ばれなかった。


「大河!やっぱお前、すげーわ!」


練習試合前のミーティングのあと、悠が俺の肩を組んできた。


「1年で選ばれたの、お前だけやろ?しかも、さっそくピッチャーで登板とか、ほんますごいわ!」

「お…おう!がんばるわっ」


悠は手を振ると、応援席のほうへ向かっていった。


これまで、ずっと悠とバッテリーを組んできた。

そんな悠が、あんな遠いところの応援席にいる。


今まですぐそばにいた悠の存在が――。

なんだか…遠く感じてしまった。


練習試合とはいえ、悠もこのグラウンドに立ちたかったはず。

かっこ悪いところは見せられない。


それに、莉子も見てくれている。


だから俺は、たとえ練習試合とはいえ、精一杯投げきった。


そして、試合は7ー0で明光学園が圧勝した。



試合後、ベンチに座っていると――。


「大河、お疲れ!」

「入学して初めての試合やったのに、すごいやん!」


マネージャーの先輩たちが、タオルやスポーツドリンクを持って、俺のところへきてくれた。


そのどちらも、今から取りに行こうとしていたところだったから、ちょうど持ってきてもらえて助かった。


さすが、マネージャー。

よく気が利く。


「俺なんか、まだまだっすよ。先輩たちがフォローしてくれたからっす」

「それでも、相手を無失点で抑えるのはすごいって!」

「そうっすか?」

「そうやでっ。これからも期待してるで!」


そう言って、先輩たちは俺の肩を叩いたり、頭をわしゃわしゃと撫でた。



それからも、俺は野球部の練習に励んだ。


この前の練習試合に出させてもらったからって、マネージャーの先輩たちにほめてもらったからって、そんなのは関係ない。

次、試合に出させてもらえる保証なんてないのだから。


そのせいで、なかなか莉子と連絡を取れない日が続いた。

遅くまで練習をして、ヘトヘトになって帰ってきたら、そのまま寝落ちしてしまうことも。


でも、気づいたときにはなるべく返信するようにしている。

【おはよう】、【おやすみ】など、そんな些細なメッセージでも。


付き合う前は、どうでもいい内容を頻繁に送り合っていたから、そのときからと比べたら、考えられないくらいメッセージのやり取りが減った。


だけど、莉子ならわかってくれてる。

なかなか会えなくたって、連絡が取れなくたって、そんなことで悪くなるような仲じゃない。


俺は、心のどこかでそう思っていた。



6月下旬のある日――。


この日は事前に、練習がいつもより早く終わると言われていたから、莉子と会う約束をしていた。
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