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夢ではなく異世界転移

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戦争真っ只中にいる僕は夢を見ているのだろう。うん、間違いない。
こんな物騒な場所へ自ら訪れるような馬鹿ではありません。

金属製の兜と全身鎧を着込んだガチャガチャとうるさい動きにくそうな武装軍団。
アニメかゲームに出てくるようなモンスターの大群。
人間の身長が180だと仮定しても、それよりも遥かに大きなモンスター。
3倍、いや、4倍は軽くある化け物の大群。
これが夢でないなら、何だというのでしょうか?
頭は至って正常ですから、これは夢ですね。
戦争真っ只中にいるのに、呑気にこんなことを考えていられるのも夢だから。

夢ならば、このまま成り行きを傍観しよう。
戦争に参加するなんて考えは最初からありませんよ。


「ガァアアアアアアア!」
「グォオオオオオオオ!」

モンスターの恐ろしい咆哮が大地を揺らす。

モンスターの大群と武装軍団、両方から炎や矢や投石が飛び交い、あちこちで斬り合いや殴り合う姿が見える。
和依李かいりは、戦争真っ只中のに浮かび見下ろしている。


つーか、マヌケ面をして呑気に傍観してる状況ではないようです。
炎や矢や投石が飛び交う真っ只中にいる和依李も、どうやら巻き込まれているらしい。

「うわっあぁあああ!!」

突如戦場真っ只中に放り込まれ、逃げる場所すらない状況。
あちこちに炎があり熱く、矢が飛び交い、炎や投石が飛び交う。

「えっ、…嘘」

矢が飛んで来て頬を掠め、頬から血がたらりと流れる。
痛い……夢に痛覚があるとは、初めてのことに驚く。

飛び交う矢は頬だけでなく、右腕、左太股、脇腹へと次々突き刺さる。

「……っ」

痛っ!イヤだイヤだイヤだ、死にたくない!

絶体絶命のピンチに冷静沈着な判断をするのは難しい。

誰が敵だか味方なのかもわからない……いや、ここには味方などいないのだ。
ヤバい!マジでヤバいんですけどぉ。


現代っ子の強い味方、スマホを手に握っているのに気がつく和依李。
現代っ子というか、現代人の強い味方であるスマホ。
道に迷った時や電車の乗り換え案内、天気予報や地震情報、近所の美味しいパン屋さんの検索など、困った時のお助けアイテムであるスマホ。
現代人には欠かせないアイテムの一つであるスマホ。

パニックになりながら、スマホを見るとスマホは圏外で使えない。

むむぅ。もしや、詰んでる!

ん?コレはもしかすると……

「ぽいゃぁ!」

と場違いな声と共にスマホのアプリをポチッと押す。

「『メテオシャワー』アプリを起動します」とスマホから無機質なアナウンスが流れる。

そう、和依李はこの状況を夢なんだから、と、スマホアプリの『メテオシャワー』をポチッと押したのだ。


空から隕石が流れ星のように降り注ぎ、モンスターの大群も武装軍団もなすすべなく、あちこち爆発して消えていく。
『メテオシャワー』の跡は大きなクレーターがあるのみ。

「あっ!」

ヤバい!!

段々と迫ってくる『メテオシャワー』……死の恐怖にゾッとする。それが夢だとしても、怖いものは怖い。









「……は?どゆこと?」

ホテルのような、いや、マンスリーマンションのような部屋にいるんですけども。

あぁ!
これはまだ夢の中なんですね。
場面がころころ変わるのは、夢ではよくあること。



矢の突き刺さった傷が痛むし、血も出てる。
けれども、これくらいの傷(結構な大怪我だけども)は、気にすることもありませんね、夢なんだから。

ゲームのような世界の夢なら、モンスターがいても不思議じゃないですし。
スマホに知らないアプリがあっても、これは夢なんだから。

ゲームやアニメで見たことある流星群が降り注ぐ『メテオシャワー』を、ポチっと押したのは正解でした。

戦場真っ只中に放り込まれる恐ろしい悪夢から解放され、安堵する和依李かいり
まあ、和依李自身にも『メテオシャワー』が迫ってきた時には死の恐怖でゾッとしてヒヤッとしましたが。


「ふぅ。リアルに近い悪夢はもうゴメンです」


夢から覚めると思っていたのに、一向にそんな気配はなく、困惑する和依李。


まあ、夢ならそのうち覚めるはずだから、いっか。
ん~、戦場があの後どうなってるか気になりますし、チラッと外の様子を…。
ドアを開けて顔だけちょっと出して外の景色を見ると、『メテオシャワー』の威力に驚愕する。
大きなクレーターがぽこぽこと幾つもあり、草の根一本生えていない。
モンスターの大群も武装軍団の姿もどこにもなく、焦げた臭いが漂うだけ。
自然環境を著しく破壊した威力に驚愕する。


「うわぁあああ……さすがはメテオ!!想像以上の威力でしたね」

『メテオシャワー』で生き残っているとは、和依李も思っていなかったけれども、大きなクレーターを実際に見ると圧巻である。まあ、夢だけど。

何もない景色を見ていても仕方ないので、部屋へ戻る。

「あぁ。戦場を一瞬で更地にしてしまう『メテオシャワー』の威力は想像以上でしたね。
それにしても、落ち着いて見ると、この部屋も凄いですね」

戦場真っ只中に放り込まれ死にそうになり、『メテオシャワー』アプリをポチッと起動したら、場面が変わり部屋の中にいた。
夢とは言え死にそうになったので、気にする余裕はなかった。

死にそうにはなったけれど、生きているというか夢なんだから当たり前だけど……ワンルームにしてはちょっと…いや、かなり豪華な部屋を見学してみることに。

20帖の家具付きワンルームで広々としてる部屋。
家具はソファとテーブル、セミダブルベットにクローゼットがある。……豪華なホテルのよう。
キッチンはカウンターキッチン。備え付けの棚に食器類や鍋とフライパン、IHコンロ、冷蔵庫、電子レンジ、トースター、電気ポット。洋式トイレとお風呂は別々にある。エアコンも完備されている。
これは和依李の部屋よりも設備が整っていて快適そうである。

死の恐怖から逃れて、ほっとした和依李は、とても快適そうなベットに横に…、というか矢が突き刺さったままでうろうろしていた和依李はふらふらとベッドに倒れて意識を失った。


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