チートスキルと無限HP!〜いじめられっ子は最弱職業だが、実は地上最強〜

ボルメテウス

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第1章 ゲームと現実

02王に選ばれし者

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 ゲーム化された世界で、俺が授かった【職業】は奴隷(スレイヴ)だったんだ。
 笑えるだろ?
 全人類の0.01%ってさ。俺、どれだけ運が悪いんだよって、この時は思ってた。



 ■□■□■□

 
(なんだよこのクソステータスは)

  
 初めて自分のステータスを見た時は、現実を信じたくなかった。
 俺の職業は『奴隷(スレイヴ)』だし、能力値も最底辺レベルだからな。
 皆になんて言えばいいんだろう?


 俺は無理やり笑顔を作ってはいたが、心の中では酷く落ち込んでいたんだ。
 何も考えられない。心の何かが折れたような、そんな喪失感に襲われた。
 しかし、現実は待ってはくれない……日常はすぐにやって来る。
 それを思い知らされたよ。今日は平日だったんだ。
 パジャマ姿の俺に向かって、母さんが急に顔をしかめ出したんだ。


「ちょっと蓮、何ボーッとしてるのよ。学校休みなの?」
「あっ……そうか」


 リビングで突拍子なニュースを聞いていると、現実から遠のいてしまうが、そうだ、今日は平日であった。


〈ピンポーン〉


 いつもの朝と同じように家のベルが鳴った。
 この時間にベルを鳴らすのは1人しかいない。恐らく、ベルを鳴らしたのは幼馴染の氷華だろう。
 落ち込んでた俺だけど何故か、氷華の事を考えると心が軽くなった。
 気持ち悪い発言だと思うから、本人には言わないけどね。


 そんな事はどうでいいか。とりあえず、俺は制服に着替えるために階段を駆け上がったよ。
 母さんに玄関に出て!と伝えてね。


「母さん! 制服に急いで着替えてくるから。玄関に出てちょっと待ってって伝えといて」
「はーい。早く着替えなさいよ」


 急いで階段を駆け上がり制服に着替えた。
 いつもの日々と何一つ変わらない。
 先程までのニュースは、ドッキリなんじゃないかって思えるくらい普通だ。
 ただ、ゲーム世界と混じったことが事実なら1つ気になることがある。それは氷華の『職業』についてだ。


 優秀な人物の『職業』は誰もが気になるだろ? 俺もその1人にすぎないわけだ。
 もしかしたら『騎士(ナイト)』……いや、『魔導師(メイジ)』かな?
 俺が様々な想像をしていると、どうやら時間が経過していたらしい。
 一階から母親の怒鳴り声が響いた。


「早くしなさいよ! 蓮!」
「……分かってるって母さん!」


〈ガッガッガッ〉
 今日もいつものように階段を降りる。
 そして、幼馴染と玄関で合流して一緒に登校するのだ。
 いや、いつもと違う所はあった。


 今日は母さんが、なぜか見送ってくれたんだ。
 俺が来る前に氷華と何か話してたんだろうか、なぜか笑顔である。



「気をつけていきなさいよ~貴方達~」
「はーい!」
「ありがとう、おばさん」



 今日も2人で、いつも通りの道を歩いていく。
 ここは、何も無いさびれた商店街で、ここは公園で、ここは2人して通った中学校。やっぱりいつもと変わらないじゃないか。
 そうだ!きっと今日の会話だっていつもの……。


 俺が氷華の方を向くと、彼女もこちらを向いていた。
 まるで、何かを伝えたいかのようにニコニコしている。嫌な予感がした。話したくない話題を振られる前触れだ。
 顔をしかめる俺を気にせず、彼女はニコニコしながら話しかけてきた。
 ――『職業』についてね。



「あのさ蓮。私『王(キング)』だったの」
「え?……」


 コツ……コツ………コツ…………


 衝撃のあまり俺は足を止めてしまった。
 だってそうだろ!職業が『王(キング)』ってだけでも驚くのに、なんでそんなにサラッと言えるんだよ。
 動揺を隠そうと、平静を装(よそお)う努力はしたさ!
 だけど、言葉の節々に動揺が出ちゃってたから、多分バレてると思う。


「へ、へぇ~。ステータスどうなってたの?」
「大体、全部5000越えかな」
「……そっか」
「どうしたの蓮? 調子悪い?」


「……い……いや大丈夫だよ!」
「良かった。あ、おばさんから聞いたけど、蓮は『村人(ヴィレジャー)』だったんだよね?」
「う、うん。そうだよ」


 ……また俺は嘘をついてしまった。
 でもしょうがないだろ!好きな人にら職業が『奴隷(スレイヴ)』でした、なんて言えるわけない。
 俺は、惨めな気持ちを殺して笑顔で振る舞ったよ。 
 会話の話題を変えようと努力もしたさ。


 でも結局、話題は朝のニュースに戻るんだ。  
 まぁ、ゲーム世界と現実世界が混ざるなんてあり得ない話なのだから、話したい気持ちは分かるけどさ。


「氷華はやっぱりすごいな。『王(キング)』だなんて」
「でもさ、職業とか能力値って何か意味あるのかな?」
「確かにな。ただの意味のない数字かもしれない……」


 氷華の考え方は盲点であった。
 ステータスとか職業とかいう言葉に踊らされていたが、今のところ影響は何もない。
 もしかしたら、ステータス表示なんて意味ないんじゃないか?


 そう思うと顔の筋肉が緩くなっていく。その変化に氷華が気づいたようだ。
 彼女は肩を叩いてからかってきた。 


「あれ、元気になった? もしかして私が『王(キング)』だからって、嫉妬してたんじゃないの~?」
「ち、ちがうから……ほ、ほら分かれ道だよ。また明日ね」
「うん! また明日ね~」


 元気になった俺の足取りは軽くなった。高校へ到着してからもその気持ちの軽さは続く。
 なぜなら、いつも虐めてくる鮫島と松尾が今日は欠席していたからだ。


 どうしたんだろうか……いや、あの2人が学校をサボる事は珍しい事ではない。
 何はともあれ、今日は虐められる事は無さそうだ。ゆっくり授業でも聞こうかな。
 俺は椅子に座ると、頬杖をつきながら先生の方を見る。 
 すると、いつもの様子と違う事に気付いたんだ。


 いつもは急に授業を始める先生が、大人しく教壇の前で一枚の紙を見つめている。
 何が書かれているだろうか?そうやって紙に視線を向けると、赤字で『重要』と記されている文字を確認できた。


 事件でも起きたのかな?俺は不審者情報かと思ったがどうやら違うらしい。
 事件は事件でも、あの出来事についてだったんだ。


〈パンパン!〉
 先生は両手を叩き、他のクラスメイト達の注意を引いてから話し始めた。


「はい注目! みんな聞いて~ 今日のニュースで知ってると思うけど、一人一人にステータスが表示されるようになりました。――政府からその事について話せって言われたから、話すわね」


(うん、知ってる知ってる。確認か?)


「皆さんお気づきかもしれませんが、ステータスとは別に、様々な空間から巨大な塔や大穴が出現しています。政府はこれを『ダンジョン』と名付けました」


(ダンジョン? 確かにニュースで言ってたような気は、するな。自衛隊を派遣したんだっけ?)


「現在、我が国では自衛隊を派遣して内部調査を行なっておりますので、絶対に立ち入らないようにして下さい。――また、未確認のダンジョンも多数あると思われますが、発見次第必ず警察に連絡して、その場からすぐに立ち去って下さい。――との事だ。みんな絶対にダンジョンを見つけても入るなよ」


 先生の目は、いつにも増して真剣なものである。危険だと言うことを強く認識しているのであろう。
 しかし、その後すぐに顔をほころばせ、笑顔で生徒たちに朗報を伝えた。


「あと、みんなにもう一つ報告だ。政府からの要請で今日は帰宅指示が出た。家に帰ってゆっくりしてろ!」



〈ガラララッ……〉
 先生は教室から出て行ってしまった。


「え?……」


 俺は、突然の出来事に動揺して固まってしまったが、徐々に理解する。
 あ、帰っていいのか……と。
 学校は休みって事だよな。やった!今日は、のんびりFPSでもやろうかな。
 と、気持ちよく背伸びをしたその時だ。
 後ろから聞き覚えのある男の声がした。


「おい。蓮……お前の職業なに?」


 ――この声は。


「え! さ……鮫島君……!?」


 勢いよく振り向くと、鮫島がニヤニヤしながらこちらを見つめていた。
 しかも後ろに松尾までいるじゃないか、なんで高校に来ているんだ。
 俺はまるで、狼に囲まれた子羊のように震えながら質問に答えた。
 怖かったけど、答えないと殴ってくるかもしれないし。まぁ……嘘をついたけど。



「お……おれは、『村人(ヴィレジャー)』だったよ」


 鮫島達に本当の事は言えない……バレたら、サンドバッグにされるだろう。
 俺は、殴られる姿を想像して自然に顔がこわばってしまった。


 それを察知されてしまったのだろうか。
 鮫島は顔をニヤつかせながら、俺の額(ひたい)に手を置いてきたんだ。


「本当か? よし、おれが見てやろう」
「見る?見るってどうやって……」


「まぁ、黙ってな。【王の神眼キング・アイ】」


 鮫島がそう呟くと掌の周りが急に青白く輝き出し、クスクスと笑い始めた。
 何をしているのか検討もつかない。
 俺は、彼の顔を見つめる事しか出来なかった。


「え?……え?……」
「…………ッハ。ハハハハハ!!」


 俺が混乱している最中、鮫島は突然大声を張り上げた。
 そして、俺の学校生活を揺るがしかねない……重要な情報をクラス中にバラしたのだ。



「みんな聞けよ! 蓮の職業、『奴隷(スレイヴ)』だぞ!!」
「おいおい、マジかよ」
「奴隷ってwww」


 鮫島はクラス中に聞こえるような大声で、俺が『奴隷(スレイヴ)』だと、みんなにバラしてしまった。
 クラスの人にもちゃんと聞こえていたようで、全体がざわつき始める。


 ……終わった……絶望感で胸がいっぱいだ。
 でも、なんで分かったんだ?
 俺は真顔のまま鮫島に顔を向けた。
 他人のステータスを覗く事なんて出来ないだろ……と言わんばかりの表情で。


「鮫島君、なんで分かったの?……」


 その表情を見て、後ろから松尾が近づいてきた。
 彼女はこちらを見ながら笑っている。
 やはり、職業が『奴隷(スレイヴ)』という事を馬鹿にしているのだろう。
 事あるごとに『奴隷』という単語を会話に混ぜてくるんだ。


「彼が魔法を使ったからよ! 『王(キング)』にしか使えない魔法をね。ちなみに私は『魔道士(メイジ)』、よろしくね奴・隷・君・!」


 彼女の発言に再度教室がざわつき始めた。
 皆んな俺を指差して笑っているし、鮫島を尊敬の眼差しで見つめて畏怖している。
 その光景を見て思ったよ。


 ……最悪だ……世界が変わっても………俺は何も変わらないのか、ってさ。


 俺の目は徐々に生気を失っていく。
 そんな悲壮感漂う人物を、目の当たりにしたからだろうか。
 鮫島がこちらに向かって声をかけてきた。
 励ましのつもりらしいが、俺をバカにしているようにしか聞こえない。


「そう落ち込むな奴隷! 特別に俺のステータスを見せてやる。驚いて死ぬなよ」


 そう言うと鮫島は自身の胸に手を置き、王が王たる所以ゆえんを俺や他のクラスメイトに見せつけた。 
 それを見て思ったんだ。


 ――俺じゃ一生勝てないって。



―――――――――――――――――――――――
 ●基本ステータス
 ・名前…鮫島弘樹
 ・性別…男
 ・年齢…17歳

 ●能力ステータス
 ・Lv.1
 ・職業→『王(キング)』
 ・魔法攻撃→『5650』
 ・物理攻撃→『9800』
 ・魔法防御→『5000』
 ・物理防御→『5000』
 ・知力→『1000』
 ↓↓↓↓↓
―――――――――――――――――――――――



 なんであんな奴が王なんだ。いや、ああいう奴だからこそ、人を馬鹿にするからこそ人の上に立てる。だから王なのか。


 俺は真理に辿り着いた気がした。
 なんで俺が虐められて地位も低いのか。そして、皆んなに馬鹿にされるのかが……そう……。
 ――俺は優しすぎるんだ。



 地べたにうなだれる俺に向かって、鮫島の笑い声が聞こえてくる。
 でもその後(あと)放った言葉は、想定外の言葉だったんだ。
 この後の出来事は忘れる事が出来ない。いや、この言葉自体を忘れられない。
 俺と鮫島の地位を変える……そんな機会を作った、大切な言葉なのだから。


「おい奴隷! 今からダンジョンに行くぞ」
「え……」
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