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第3章覚醒の刻
26不屈の感情
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俺の頭に響く優しい声。
そんな温和な老人の声が聞こえだした。いや、俺の頭が可笑しくなったのか。この時点では分からない。
でもそれは確実に勝利へ導く声だったんだ。
俺はその後も自らの精神状態を疑いながら、頭の中に響く声との対話を続けた。
(あの、そういえば名前はなんというんですか?)
(儂の名か? 『ダンフォール』じゃよ)
(ダンフォールさん。俺はどうしたらいいんですか? 攻撃力も『0』だし手の打ち用が)
(……)
俺の問いかけにダンフォールはすぐに答えなかった。というよりも呆(あき)れて声が出ない様子である。
浅い溜息が頭の中で響いた様な気がした。
(お主、スキルを見とらんな)
(はい。見てませんけど。何か問題でもありましたか?…)
(まぁよい。どのみち『神猫』に寄生されとる人間を助けるには、カウンターしかないでな。とりあえず『身を守る』を選択してくれ)
俺が自分の画面を見ると、選択画面の残り時間が少ない事に気づいた。
本当は素早く選択すべきだ。しかし、なかなか『コマンド』を選択できずにいた。
やはり頭に響く声を信じるべきなのか。まだ葛藤中なのだ。
(本当に、声の言う通りにしていいんだろうか?)
葛藤をしていた俺だが、時間がない事もまた事実である。仕方なく『身を守る』を選択した。
――――――――――――――――――――――――――
選択時間:5秒
●物理攻撃
●呪怨(じゅおん) ※残り1回
→●身を守る
●アイテム
――――――――――――――――――――――――――
〈プレイヤー側の選択が終わりましたので、プレイヤーのターンを開始いたします〉
〈プレイヤー『蓮』が『身を守る』を選択致しましたので『物理防御値』を100にupします〉
俺の選んだ『身を守る』は実質無意味な『コマンド』を意味する。これを選ぶという事は、他に何も出来ないと公言しているようなモノだ。
火憐には、絶対に聞かれてはならない事実である。
しかし残念な事にこの機械音は相手側にも聞こえるらしい。
火憐が、こちらを強くと見つめながら、今にも泣きそうな掠(かす)れ声で彼に訴える。
「蓮もういいよ。『呪怨(じゅおん)』を使って早く逃げて」
「そんな事したら、火憐を助けられなくなるだろうが!」
「分かってる。わかってるよ! でも、このまま戦っても埒があかないでしょ?」
「……」
「ほら、だから。強くなってから私を助けに来て。待ってるから」
「……」
俺の瞳に映った彼女は無理やり笑顔を作っているようだった。
しかし、涙は自然に抑える事がないもののだ。不自然な笑顔を浮かべている顔は、涙でぐちゃぐちゃになっている。
そんな彼女の表情を見ても俺は何も応える事が出来なかった。
ただ彼女の不自然な笑顔を見つめて、何も出来ない自分への怒りから拳を握りしめる事しか出来なかったのだ。
この時、もしかしたら俺の悔しさがダンフォールにも伝わったのかもしれない。頭の中でさらに優しい口調で語りかけてきたんだ。
(少年よ安心しろ。お主はただの『奴隷(スレイヴ)』ではない。かつて異世界で『最強』と謳われたこの『ダンフォール』の力を宿しておるのだから)
(……)
(ふっ。そんなに心配か? まぁ良い。神猫のターンが始まれば分かるさ)
老人の優しき言葉は今の俺には響かない。これまで失敗続きだった俺にとっては慰めの言葉など何の意味も持たない。
安心しろ。その言葉の力の無さは俺が1番知っているからだ。
俺と火憐、2人が絶望に飲み込まれている中で機械音が進行を再開した。
そう。『神猫(ゴッド・キティ)』のターンだ。
〈『神猫(ゴッド・キティ)』のターンを開始致します〉
「にゃおおお~ん」
鳴き始める化け猫と無理やり笑顔を作る火憐。
その悲しい彼女の後ろから元気よく飛び出てきたのは化け物。『神猫(ゴッド・キティ)』の口元は赤く輝いていた。
やはり、彼女を少し喰らったのだろう。赤く輝いているモノは恐らく血だ。
自らの口周りを執拗に舐めるその化け物に対して、俺の感情は絶望から憎しみへと変わっていった。
そんな温和な老人の声が聞こえだした。いや、俺の頭が可笑しくなったのか。この時点では分からない。
でもそれは確実に勝利へ導く声だったんだ。
俺はその後も自らの精神状態を疑いながら、頭の中に響く声との対話を続けた。
(あの、そういえば名前はなんというんですか?)
(儂の名か? 『ダンフォール』じゃよ)
(ダンフォールさん。俺はどうしたらいいんですか? 攻撃力も『0』だし手の打ち用が)
(……)
俺の問いかけにダンフォールはすぐに答えなかった。というよりも呆(あき)れて声が出ない様子である。
浅い溜息が頭の中で響いた様な気がした。
(お主、スキルを見とらんな)
(はい。見てませんけど。何か問題でもありましたか?…)
(まぁよい。どのみち『神猫』に寄生されとる人間を助けるには、カウンターしかないでな。とりあえず『身を守る』を選択してくれ)
俺が自分の画面を見ると、選択画面の残り時間が少ない事に気づいた。
本当は素早く選択すべきだ。しかし、なかなか『コマンド』を選択できずにいた。
やはり頭に響く声を信じるべきなのか。まだ葛藤中なのだ。
(本当に、声の言う通りにしていいんだろうか?)
葛藤をしていた俺だが、時間がない事もまた事実である。仕方なく『身を守る』を選択した。
――――――――――――――――――――――――――
選択時間:5秒
●物理攻撃
●呪怨(じゅおん) ※残り1回
→●身を守る
●アイテム
――――――――――――――――――――――――――
〈プレイヤー側の選択が終わりましたので、プレイヤーのターンを開始いたします〉
〈プレイヤー『蓮』が『身を守る』を選択致しましたので『物理防御値』を100にupします〉
俺の選んだ『身を守る』は実質無意味な『コマンド』を意味する。これを選ぶという事は、他に何も出来ないと公言しているようなモノだ。
火憐には、絶対に聞かれてはならない事実である。
しかし残念な事にこの機械音は相手側にも聞こえるらしい。
火憐が、こちらを強くと見つめながら、今にも泣きそうな掠(かす)れ声で彼に訴える。
「蓮もういいよ。『呪怨(じゅおん)』を使って早く逃げて」
「そんな事したら、火憐を助けられなくなるだろうが!」
「分かってる。わかってるよ! でも、このまま戦っても埒があかないでしょ?」
「……」
「ほら、だから。強くなってから私を助けに来て。待ってるから」
「……」
俺の瞳に映った彼女は無理やり笑顔を作っているようだった。
しかし、涙は自然に抑える事がないもののだ。不自然な笑顔を浮かべている顔は、涙でぐちゃぐちゃになっている。
そんな彼女の表情を見ても俺は何も応える事が出来なかった。
ただ彼女の不自然な笑顔を見つめて、何も出来ない自分への怒りから拳を握りしめる事しか出来なかったのだ。
この時、もしかしたら俺の悔しさがダンフォールにも伝わったのかもしれない。頭の中でさらに優しい口調で語りかけてきたんだ。
(少年よ安心しろ。お主はただの『奴隷(スレイヴ)』ではない。かつて異世界で『最強』と謳われたこの『ダンフォール』の力を宿しておるのだから)
(……)
(ふっ。そんなに心配か? まぁ良い。神猫のターンが始まれば分かるさ)
老人の優しき言葉は今の俺には響かない。これまで失敗続きだった俺にとっては慰めの言葉など何の意味も持たない。
安心しろ。その言葉の力の無さは俺が1番知っているからだ。
俺と火憐、2人が絶望に飲み込まれている中で機械音が進行を再開した。
そう。『神猫(ゴッド・キティ)』のターンだ。
〈『神猫(ゴッド・キティ)』のターンを開始致します〉
「にゃおおお~ん」
鳴き始める化け猫と無理やり笑顔を作る火憐。
その悲しい彼女の後ろから元気よく飛び出てきたのは化け物。『神猫(ゴッド・キティ)』の口元は赤く輝いていた。
やはり、彼女を少し喰らったのだろう。赤く輝いているモノは恐らく血だ。
自らの口周りを執拗に舐めるその化け物に対して、俺の感情は絶望から憎しみへと変わっていった。
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