83 / 123
第5章崩れゆく世界
82麗しの皇女
しおりを挟む職業【王】でしかダメージを与えられない強敵、リリアン。
スキルを使い攻撃系の能力値を限界まで上げても、攻撃の通じないリリアンを相手に苦戦する蓮であったが、【キング】である氷華が現れた事によって情況が一変する。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ここからが反撃だ――。
俺の力強い声が氷華とリリアンに届いたようだ。氷華の表情は少し明るくなり、リリアンは逆に曇った。
「蓮。なるほどね、こうすればあの化け物相手でも戦えるね」
「うん、氷華。二人で力を合わせれば……」
俺が一呼吸おいて言葉を途切らせると、氷華がともに声を出した。
静かに、そして力強く目を見開いて。
「「戦える」」
俺たちの真っ直ぐな瞳はリリアンを見つめていた。
その瞳に映るリリアンの顔は少し歪んでいる。俺の力と氷華の職業、この二つが重なる脅威を感じているのだろう。
歪んだ口元のまま笑い出したリリアンは、不安を誤魔化すかのように大きな声で威嚇する。
「お前らザコどもが力を合わせても無駄だよ! 大人しく死ね」
この時はまだ、リリアンの足を剣で受け止めている情況だ。
少しずつその足に力を込めてくるのが分かる。
大きな声で吠えた後、リリアンが本気を出したのだ。赤く輝くリリアンの瞳がさらに真っ赤に染まっていく。
まるでルビー、宝石のようだ。
その殺気に触れたのか、氷華が不安な声を出した。
「ちょっと蓮。大丈夫なの?……」
「安心してくれ」
「これからどうするつもり?」
「氷華が剣を自由に動かしてくれ、俺がその度に剣の持ち手に触れて補助する」
「え、そんな無茶苦茶な……」
「大丈夫だ。今の俺には氷華の動きは止まって見えるから、リリアンの動きはギリギリだけどな」
氷華は俺の発言に半信半疑のようだ。
しかし、曇った表情のまま剣の持ち手に力を入れて、リリアンの足を押し出した。
そこに俺の力を加える……。
【ガキィィン!!!】
「なんだと?!」
リリアンの足が足が押し出され、後退せざるを得なくなった。リリアンを後ろに引かせたのはこれが初めてだ。
氷華の表情が明るくなったほどだ。
「蓮。これなら勝てるかもしれないね」
先程までの絶望に満ちた表情とは大違いである。口元が緩んでいる。
しかし、それは長くは続かなかった。
少し距離を取ったリリアンの様子がおかしくなったからだ。
リリアンは先程までに見せた下品な笑いではなく、真顔であった。幼い表情ではなく、どこか大人びた様子で。
「お兄ちゃんとお姉ちゃん。二人の力を合わせるなんてずるいよ」
「何言ってるんだリリアン。お前の能力の方がずるいだろうが! 自衛官もこんなに殺しやがって」
「黙ってよお兄ちゃん。それはおじちゃん達が弱すぎただけでしょ」
「なんだと?……」
「まぁ、いいや。お兄ちゃんとお姉ちゃんが本気を出すなら、私も本気を出そうかな」
真顔のリリアンは少し顔を傾けると、それと同時に自身の身体を両手で抱きしめた。
そして、ニッコリと笑ってこう言ったのだ。
「成人の儀」
そう唱えると、幼い体のリリアンを深淵の闇が包んだ。どうやら魔法のようである。
その闇は徐々に大きくなり、成人女性ほどの身丈に広がるとゆっくりと消えていった。
そして、そこにいたのは成長した姿のリリアンだったのだ。
真っ黒なドレスを纏ったリリアンは丁寧にお辞儀をして、俺たちの方を見て微笑んだ。
0
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~
喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。
庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。
そして18年。
おっさんの実力が白日の下に。
FランクダンジョンはSSSランクだった。
最初のザコ敵はアイアンスライム。
特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。
追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。
そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。
世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる