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第5章崩れゆく世界
87奴隷王VS皇女
しおりを挟むリリアンとダンフォール。
かつて異世界で戦った両者は、現代に移り、再び争うことになる。
◆◇◆◇◆◇◆
「アハハ! どうりでその黒炎、見たことあると思ったのよ」
笑い声が響き渡る構内。
突然笑い出したリリアンに氷華は驚いている様子だ。
「急にどうしたのよ」
「そっちのお嬢さんは理解してないみたいね」
不気味に微笑むリリアンは、体を前のめりにして拳を握りしめる。
これは誰にでも分かる。
攻撃の合図だ――。
(少年よ。変わるぞ)
ダンフォールは急いで俺の体に乗り移ると、すぐにこう唱えた。
「呪怨発動!」
その声と同時に黒い炎が俺の両腕にまとわりつく。
ユラユラと揺らめく炎、俺がそれに見とれているとリリアンが急に目の前に現れた。
「お主、スピードが上がったな?」
「ダンフォール。あなたが衰えただけでしょう」
俺の体に近づいたリリアンは、そう呟くと右拳を俺の体に叩き込む。
それを左手の甲でいなすダンフォール。
しかし、攻撃は止まらない。
左足の蹴り、からの右足の裏蹴りと連撃は続く。
「どうなってるの……」
少し離れた氷華は、俺達の戦いを呆然と眺めている。早すぎて何も見えないのだろう。
しかし、彼女は俺との約束を守ろうとしている。折れた剣の持ち手をしっかりと両手で掴んでいるからだ。
「全く。骨の折れる相手じゃのう」
「アハハ。まさか、また貴方と戦う日がくるなんてねぇ」
一方でリリアンとダンフォール2人は、少し笑みを浮かべて懐かしむかのように戦っている。
リリアンが攻撃するとダンフォールは、黒炎を纏った手で払ったり避けている。
「避けてるだけじゃ勝てないわよ」
「そんな事わかっとるわ」
「ふふ。それにしてもダンフォール。私の攻撃をギリギリでかわしすぎじゃないの。そのうち当たるわよ」
「ハッ。余計なお世話じゃ」
ダンフォールさんはワザとギリギリで避けてるわけじゃない。
俺のレベルが低すぎて、リリアンの攻撃を見る事が出来ないのだろう。今、避けているのは歴戦の経験によるものと言っていいのかもしれない。
しかし、その戦いは凄まじく、檻に囚われた一般人達も歓喜の声を上げている。
「あの男の子は何者だ?」
「さっき、奴隷って聞こえたけど……本当かしら」
口々に俺の職業を疑う一般人達。
死んだ自衛官達も同じだったけど、奴隷がここまで強いなんてありえないからな。
致し方ない事だ。
【ガッ……ガッ……】
リリアンの攻撃をいなすだけでも、響く音は重い。
一つ一つが重い上に連続で攻撃を繰り出してくるので、仮に俺がダンフォールさんに変わっていたら、すぐにやられていただろう。
それに、リリアンはおそらく本気を出していない。
攻撃を行う最中も笑顔なのはリリアンの方だ。
「ダンフォールよ。手を抜かなくてもよいのだぞ?」
「手を抜いているように見えるのかのう」
「アハハ。見えないわよ」
「むしろ、手を抜いているのはお主の方じゃろ」
「そうね。本当は身体能力を強化させる魔法があるのだけどね、それをやるとすぐに終わってしまうから……。本当は瞬殺するつもりだったのだけれど、ダンフォールが相手となれば話は別」
「儂をいたぶり殺すつもりか」
「ふふ。正解」
リリアンの顔つきがニヤリとなる。
異世界でダンフォールに負けたのが余程悔しかったのだろう。舐めきった口調で繰り出す攻撃で、少しずつダンフォールを後退させている。
少しずつ少しずつ。ジリジリと下がるダンフォールになすすべはなく、苦悶の表情を浮かべている、
そんな中で氷華はある時を待っていた。
俺が告げた事を実行に移す為に。
リリアンが油断しているこの状況なら、俺と氷華の作戦で勝負が決まるはずだ。
呪怨を折れた剣に纏わせるという作戦を――。
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