チートスキルと無限HP!〜いじめられっ子は最弱職業だが、実は地上最強〜

ボルメテウス

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第5章崩れゆく世界

90しんがり

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 ザン……。
 蓮と氷華、二人が力を合わせた斬撃は強敵のリリアンを真っ二つに切り裂いた。


 ◆◇◆◇◆◇◆


「やったの?……」


 ガキィンと、剣が床まで達すると氷華は息も絶え絶えに動かなくなったリリアンを見つめた。
 もしかしたらまた動き出すかもしれない。
 そんな風に思わせる程、彼女は強敵だったという事だ。
 だがもう大丈夫。
 リリアンが白く輝きだしたからだ。もうじきに消滅する兆候である。


「たお……せた……」


 蓮は、リリアンが白く輝きだしたところを見ると、ズサリと床に倒れこんだ。
 体力の限界なのだろう。
 大の字に寝そべって深く深呼吸をしている。


(クソ。体が動かねぇ。無茶をしすぎたか)


 倒れた蓮は少し苦い表情をして、ある方向を顔だけ動かして見つめた。
 その視線の先にあるのは一般人である。
 そもそも一般人を助ける為に、蓮達はここにきたのだ。戦


 力的にこれ以上進めない事を考慮すると、彼らを連れて一旦地上に脱出する他ない。
 それに、恐らく奥にいる一般人はもう助からないであろう。
 リリアン級の化け物が複数いては、救助する事は不可能だ。
 蓮は悔しさから唇を噛み締めたが、一般人達の反応は違った。


「俺たち助かるのか?……」
「やった……やったぞ!!!」


 檻に囚われた人々はリリアンが消え去るのを見て、笑顔になっていった。
 抱き合い、手を握り合って、喜びを分かち合っている。
 そんな姿を見ると疲れ果てた蓮の表情も柔らかくなっていった。
 それは氷華も同じようだ。蓮に向かって労いの言葉をかけてきた。


「お疲れ、蓮」
「氷華もな」
「ほんっとうに疲れたわ!」


 氷華もその場で床に崩れ落ちた。こちらは床に大の字で寝そべるのではなく、体育座りをして腰を床に下ろしている状況だ。
 二人して顔を見合わる。


「私たちレベルどれだけ上がったんだろう」
「そうだな。100くらい上がって欲しい……」
「えぇ~。そんなには上がらないでしょ」
「はは。だよな」


 くだらない話で盛り上がる二人。
 しかし、二人にはまだやる事があった。それは……。


「王様! 私達を檻から出してください!」


 檻に囚われた一般人である。
 どうやら彼らは、蓮達の事をキングだと思っているらしい。
 無理もない。この世界で最上級の職業だからな。
 あれだけの強さを見れば、キングだと思う事だろう。


「蓮、いける?」
「無理かな」


  しかし、蓮には体を動かすほどの力は残っていなかった。
 呪怨にチートスキルを限界まで出力を上げて使用したのだから、当然の結果である。
 代わりに氷華が重い腰を上げて、檻の方へと向かっていった。


「私が代わりに行ってくるわね」
「任せた。術者のリリアンが消えたから、檻は脆くなってるはず」
「ありがと。この折れた剣でも何とかなりそうね」


 氷華は、呪怨が消え、折れた状態に戻った剣を見つめるとズサッズサッと重たい足を引きずりながら歩いていった。
 彼女を待つ一般人達の目は輝いている。
 死を覚悟していたのだろう。
 生きて帰れるという希望に沸いているのだ。


「やった! これで帰れるぞぉ!!」


 一人が沸き立つと周りも口々に喜びの声をあげた。


「帰れるのね。私達……」
キングには感謝しないとね」


 皆が口々に喜びを表す中で、ようやく氷華が檻にたどり着いた。
 そして彼女は檻を壊す準備に入るのだ。


「ごめんなさい。檻から少し離れてくれないかしら」


 氷華はそう言って、一般人達を誘導すると剣を上段に構えた。
 鋼鉄の棒で囲われた檻を壊すには、それなりの力がいるものだ。
 たとえリリアンが倒れようとも、強度が高い事に疑いはない。


「ふぅ~……」


 氷華は深く呼吸した後に、カッと目を見開いて勢いよく剣を鋼鉄の棒に叩きつけた。


「はぁ!!!!!!」


【キンッ……】


 折れた剣は残った刃先だけで、鋼鉄の刃を切り裂いたのだ。
 いや、それだけではない。一つの棒が倒されると檻自体が消えたのだ。
 術者であるリリアンが死んだ事で、檻は非常に脆くなっていたのであろう。


 檻が綺麗に消え去ると一般人達はその場に崩れ落ち、氷華と蓮の方向を向いて感謝の意を告げた。


「お二人ともありがとうございます。あなた方は命の恩人だ」


 蓮と氷華はそれを聞いて照れくさそうに笑うと、地上に戻ろうと一般人を誘導しようとした。
 この時には、蓮も何とか立てるようになっていた。


(後は石黒大将を探すだけか)


 蓮が腹部を抑えながら、歩こうとしたその時だった。
「ガルルル……」と獣の呻き声が、地下鉄奥深くから聞こえたのは――。
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